38.一生ものと一過性
あいつの人生が終わり、僕たちの長い旅が始まった。
重松清氏の小説に描かれたセリフだ。
「彼ら」はまさにこんな心境なのだろう。
大津市のイジメ問題を受けて、警察が生徒約300人に事情聴取を行うそうだ。
15やそこらの少年・少女には少し酷な気もする。
しかし無くなった少年のためにも、事実を、明確にしてあげて欲しい。
事情聴取や社会の視線…
それらは彼らの背中に重くのしかかってくるだろう。
その重さに押しつぶされぬ様、周りは配慮しなければならない。
これから事実と向き合う事になるご両親は子供たち以上に重く辛い荷を背負う事になるのだろう。
小説にはこう書いてあった。
「親は、学校で起きた事をこの目で見るわけにはいかないんだよ。だから信じるしかないんだ。ウチの子は元気でやってる、毎日を幸せにすごしてる……。」
まさに少年の親御さんはそう願っていたに違いない。
子供達から伝わるリアルな現実は、もしかしたら耳を塞ぎたくなる物かもしれない。
その全てを知り、自責の念で押しつぶされないで欲しい。
重松氏の小説のタイトルは「十字架」。
各々で形は違えど、生徒たちもご両親も一生背負う事になる。
当事者たちが一生背負う覚悟を強いられる出来事に対し、なんの痛みも伴わない我々が一過性の熱で余分な十字架を背負わせる事だけはあってはならない。
ネットに溢れる顔の無い言葉たちを見るたびに胸が締め付けられる