新・薄口コラム(@Nuts_aki)

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マンガ読解法1みどりのマキバオー〜構造転換で動物を描く〜

つの丸先生の代表作みどりのマキバオー
僕の大好きなマンガのひとつだったりします。
競馬をモチーフにしたこのマンガですが、個人的に凄く特殊なマンガだと思ったのでエントリにしてみました。

僕の中でのマキバオーのイメージをひと言で表すと「動物版スポ根マンガ」です。
競馬を走る競走馬達が主役となり、その馬たちの成長が描かれています。

ぶっちゃいくなキャラクターのみてくれとは裏腹に、心情描写が細やかに描かれており、知らぬ間に感動させられてしまうような作品です(笑)

みどりのマキバオーで僕が一番面白いなって思うポイントは、競馬場にいる人間の描き方です。
馬券を振り回し主人公たちの走る姿を見守る観客全員が同じ顔で、しかも全員全裸で描かれているんですよね。
これ、BSマンガ夜話って番組で指摘されていたのを聞いてなるほどって思ったのですが、確かによくよく考えると凄く不自然。


普通だったら、馬が裸で人間が服を着ているのに、このマンガは真逆なんですよね、、
あの不自然な描き方、つの丸さんはかなり意識してやっているのではないかなって僕は思いました。

普通なら裸の馬に髪型や服装で差をつけ、反対に服を着て一人ひとり表情が違うはずの人間を裸で同じ顔に描くことで、人間と動物の世界観を逆転させている。
人間に注目するでもなく、馬だけにスポットを当てるわけでもなく、両者の前提を入れ替えるという演出によって、競走馬達のヒューマンドラマを読者に違和感なく伝えてられるという効果を出しているような気がします。


だからこそ、マキバオーとその仲間のやりとりに僕たちは引き込まれるし、競馬っていう一見すると少年誌向けで無いテーマでも楽しむことができるのだと思います。
この辺の設定が凄く上手い。


ストーリー自体は「うんこたれぞう」って呼ばれていた、身体も小さく弱気の主人公マキバオーが、自身の騎手となる勘助やネズミのチュウべえ親分、エリート競走馬のカスケードや地方の期待を背負って出てきたサトミアマゾンなどの様々な仲間に支えられ成長していくという、友情・努力・勝利の3点がしっかり揃った王道ジャンプマンガ。

とんでとないルックスの主人公に登場人物のほとんどか馬とおっさんという、どう考えても流行る要素の無い設定で、あそこまで話を膨らませた点が凄いと思います。


もうひとつ完全に脱線ですが、みどりのマキバオーって、女の子がほぼ出てこないんですよね。
一回だけ裸の女の子が出てきますが、それマキバオーのお母さん(=馬)ですからね(笑)
ヒロインがいないマンガなんて、前代未聞です。
パッと思いつく限り、ヒロインのいないマンガなんてほとんど存在しません。
完全に売れるマンガの文法から逸脱したあのマンガを人気マンガにしてしまったつの丸さんの漫画家としての才能って凄いと思います。



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