新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



手品で論理的思考力を身につける①

真ん中に入れたカードが指を鳴らすと一番上に上がってくる。
カードが身体の周りをクルクルと飛び回る。

一見あり得ないような現象を作り出すのがマジックです。
だから、ネタを作ろうとすると、突飛な発想や思いも寄らない技術が必要なように思うかもしれません。
しかし、実際のところは真逆の力が必要になってきます。
マジックのネタを作ろうとする時に一番必要な能力は、論理的思考力です。
「あり得ない現象を、どうすれば起こせるか?」これを筋道立てて考えて行くのです。
どうすれば思いついた現象を起こせるのかをアレコレと考えるのが、マジックの作り方です。

一つのマジックを例にします。
「少し離れた所にある缶に手をかざすと、その缶が掌に向かって吸い寄せられる」
こういうマジックを作る場合を考えます。
さて、どうやって作ればいいのでしょうか?
まず起こしたい現象を決めたら、その次にそれが起こりうるあらゆる方法を考えます。
今回の肝は「離れた所にある缶が動き出す」というところ。
それが実行可能か否かはひとまずおいておき、離れた所の物体を動かす方法を、思いつく限りに列挙していきます。
どんな方法が思いつくでしょうか?
多分ほとんどの人が思いつくのは「磁石」と「見えない糸」とかなんじゃないかなって思います。
もちろんどちらでも現象を生み出す事は十分に可能だと思います。
でも、出てきたアイデアが2つだけだと、ちょっと心配です。
パッと頭に思いつくって事は、他の人の頭の中にもおそらく用意に想像できるって事だからです。
誰でも想像がつくタネは、それだけ見破られ易いということ。
現象を起こす方法を考えるうえで、より多くの方法を考えることが、見破られないマジックを作るためには非常に大切になってくるのです。
では、他には離れた所にある物体を動かすにはどんな方法があるか?
書きながら、下の様な方法を思いつきました。
・缶の底にモーターをつける
・風の力でおす
・缶が置いてあるテーブル自体をスライドさせて、缶が動いた様にみせる
・手とカメラを同時に動かし、缶に近づく
・傾斜を作り缶を滑らせる
・CG合成
実現可能性が低いものばかりと思われるかもしれませんが、それでいいんです。
まだアイデアを挙げる段階なので、、、
ここで「どうせこんなやり方実現できないし」とか思うと、いいネタは生まれません。
実現不可能そうなアイデアに見えても、否定せず候補としてあげておくことが大切です。


アイデアがある程度揃ったら、次にシチュエーションを決定します。
同じ現象を起こすにしても、みせる状況によって、使える手順が異なってくるからです。
大きくシチュエーションを分けると、以下の3つ位でしょうか。
・全方位囲まれたステージ上で見せる
・数人の前で行うテーブルマジック
・動画などに撮ってみせる
シチュエーションによって、利点と欠点があるので、それも同時に考えていきます。

まずステージの場合を考えます。
ステージでマジックを行う場合、全方位自由に見えてしまいます。
そのため、見られる角度が限られる様な仕掛けは使えません。
一方で、お客様との距離が離れているという事が大きな利点となります。
近くでみたらバレバレの方法でも、離れているならば結構わかりません。

次はテーブルの前で見せる場合
テーブルマジックの利点は見られる角度が限られる事です。
基本的に向かって180°しか、お客様には見えません。
従って、テーブル自体に仕掛けを作ったり、マジシャン側にタネを仕込む事が可能になります。
一方で欠点はお客様との距離が近いこと。
音がする方法や、目を凝らせばわかるような方法は使えません。

最後は動画に撮る場合
利点は音が入らないようにできる事と、フレームが決まっている事。
とくにフレームが決まっているという事で、その外で大掛かりな装置を仕込む事が可能になります。
欠点はスロー再生や繰り返し、逆再生ができること。
他のシチュエーションに比べ、圧倒的に分析され易いので、不自然さがない方法を選ばなければいけません。


こんなふうにシチュエーションごとの利点と欠点を挙げたら、それぞれに適した仕掛けを考えます。
僕なら、ステージは「見えない糸」「缶の底にモーター」、テーブルは「磁石」、動画なら「風の力で動かす」「テーブル自体をコッソリスライド」位が妥当かなって考えます。

それぞれの見せ方を踏まえて、どのシチュエーションにするかも決まったら、いよいよネタを組み立てていきます。
今回は動画というシチュエーションを選んだとします。
ゴールの設定は「画面に映ったコーヒー缶に掌をかざすと動き出す」です。
仕掛けは風のチカラで押すというものにします。
ゴールと仕掛けが決まっているので、次にどうやったら一番不思議に見えるのか、効果的な見せ方を考えます。
今回の場合、動画なので缶がいきなり動画に映っていて、それが動いたとしても、缶にタネが仕込んであるのではないかとか、色んな事を勘ぐられてしまうでしょう。
そのため、自動販売機で缶を買う所からマジックをスタートさせることにします。
次に、テーブルなどにも仕掛けがないとわかるよう、ショッピングモールなどの休憩場を缶が動くマジックをする場にします。

ストーリーとしては以下の通り。
ぶらりと寄ったショッピングモールで缶コーヒーを買う

何気なく買ったコーヒーを飲みながら休憩所のテーブルに座る

缶コーヒーを飲み干して(or少し残った状態)でテーブルの少し離れた所に缶を置く

不意に手をかざすと、その手に向かって缶が引き寄せられる

手元にきた缶を掴んで終了

ざっとこんな感じになります。
画面に映らない所で風を起こせば十分に可能です。
(昔実際に作った事があるので(笑))


意外と論理的に組み立てられてませんか?