新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



「眼鏡越しの空」考察

-大嫌いだったメガネはずせないこの何日も "気を隠す"にも"ちゃんと見る"にも都合がいい-
 
ただの「嫌い」ではなく「大嫌いだった」という言葉から、主人公にとってメガネをかけているというのが、大きなコンプレックスであったという事が分かります。
嫌で嫌で仕方がないのだけど、外せない。
その理由は"気を隠す"ためとあなたを"ちゃんと見る"ため。
ここをだけとると、好きになったから眼鏡で照れ隠しをしつつそれでも相手を目で追ってしまう主人公が頭に浮かびます。
でも、多分美和さんは恥ずかしがりな主人公の恋の瞬間だけを描きたかったわけじゃないと思うんです。
「"気を隠す"にも"ちゃんと見る"」にも「都合がいい」って言ってます。
相手を見たいからとか、気持ちを隠したいから、眼鏡をかけてる訳じゃないんです。
好きではないけど「都合がいい」から眼鏡をかけているのです。
あとで出てきますが、この主人公は「"気を隠す"にも」と言いつつ、一度も正面を見ていません。
一貫して好きな相手をみているのは「背中」ばかり。
つまり「 "気を隠す"にも"ちゃんと見る"にも都合がいい」というのは自分に向けた言い訳で、本当は好きな人にアプローチをかけたくて内気な自分を直したいけれど、勇気が持てない主人公の気持ちが書かれているのです。
 
 
-あなたの夢を見た朝 何故か 少し泣けた さえない私を思ったら 少し泣けた-
 
前の詩で描かれた「勇気が出ずに眼鏡を言い訳にしている自分」に対する悔しさが描かれます。
「あなたの夢を見」て思わず泣いてしまうのは、好きなのに一歩踏み出せない自分が悔しいから。
自分から声をかけようと思ってるのに、その勇気が持てない。
そんな自分にヤキモキしてるからこそ、「少し泣けた」となるんだと思います。
 
 
-短い髪しゃんとした後ろ姿思い出す度あなたのようになれたらと憧れる-
 
最初に少し触れましたが、この主人公は好きになった相手を正面からしっかり見ることができません。
だからこそ、髪の毛や後ろ姿しか何度も「思い出す」ことができないわけです。
私に背中を見せる好きな相手というのは、逆に言えば「前を向いている」ということです。
「あなたのようになれたらと憧れる」とは、主人公が前を向いて(恥ずかしがらずに)気持ちを伝えたいという心情を描いているんだと思います。
 
 
-図書館で借りた空の写真集 カードに強くてきれいなあなたの名前がある-
 
おそらく、この主人公は学生ですよね。
「何日も眼鏡を外せない」ってことは、好きな人を毎日見てるということ。
同じ場所で生活しているからこそ起こることです。
したがって、学校の図書室と考えるのが正しいかなぁと思います。
そして、図書館でこの主人公が「空の写真集」を借りたのは偶然ではなく、好きな相手がその本を借りたのをみていたから。
好きな人に直接声をかけられないからその人の借りた本が気になって借りたのだと思います。
つまり気になって仕方がなく、背中を思わず追っかけてしまっているということ。
そのくらい主人公は相手の事が好きになってしまっているのです。
 
 
-大嫌いなのは眼鏡じゃなくこんな自分 ガラスの奥で叫んでいても誰も気づかない-
 
ここで自分の本音がでてきます。
「眼鏡」が嫌いだけど「都合がよくて」かけていたのではなく、本当は勇気が持てない自分をごまかすためにかけていたのだと言っているます。
「ガラスの奥で叫んでいても誰も気づかない」事は主人公もわかっているんです。
それでも「都合がいいから」といって眼鏡をかけている。
余談ですが、この「誰も」ってのは好きな相手のことですよね。
自分から言わなければ気持ちが伝わらないのは分かっているけれど、やっぱりまだ行動にする勇気がない。
だから「叫んで」いるんです。
たぶん、叫んでしまうくらい好きになっているのだと思います。
 
 
-防御壁の役ばかりでごめん やってみるね 私をきちんと見せてくれるレンズにかえる-
 
1番と同様に自分自身と向き合います。
「防御壁の役ばかりでごめん」、つまり言い訳にしてたことを認めます。
その後相手にアプローチをかけることを決心します。
 
 
 
-背表紙の三日月だけがそんな私知ってる-
 
サビの前半は1番と同じなので省略します。
「そんな私」とは、2番の歌詞で決心した私のことです。
 「背表紙の三日月だけが」そんな私の決心を知ってるというように、好きな相手の背中と重ねるように「背表紙」という表現が登場します。
ここには、相手にはまだ気持ちを伝えられていないが、それを決心したという事を込めたかったのだと思います。
まだ伝えられていないけど、自分は変わった、変わろうと決めたという気持ちの変化を、借りてきた本を見つめながら決心した。
そんな心情を描いたのだと思います。
 
 
残りはリフレインなので省略。
物語のストーリーをざっとまとめると「内気な主人公が勇気を出す話」の一言です。
でも、よく追っていくと、その心情の変化がむちゃくちゃ細かく描かれている。
しかも眼鏡という比喩を通じて。。
この歌詞のすごいと思うところはさっと聞き流してもなんとなく心情が伝わってしまう点にあると思います。
 
「好き」っていう言葉を一度も使わずに、好きで仕方がないというのを聞き手に自然に伝えてしまう所が、やっぱりドリカムの凄いところだと思います。
 
 
 
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作詞作曲 吉田美和