新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



ゼロ年代後半のドラマ~ヒット法則とそれに基づく物語

家政婦のミタあまちゃん半沢直樹などヒット作が出るとこぞってそのヒットの要因分析がなされますが、基本的にそれらは意味がないと思っています。
それらは振り返って特徴を抽出しただけで、それが含まれていたからヒットしたという因果関係を持ったものではないからです。
だから、いくら半沢直樹のヒットを分析して作ったルーズヴェルトゲームのようなドラマでも、同じようなヒットとはなりません。
大前提として僕はこのように考えていますが、そのうえでここ数年のヒットドラマに関して共通項があるように感じたので、自分なりのヒットの法則と、ヒットしそうなドラマのプロットを考えてみたいと思います。

00年代後半に放映されたヒットドラマの共通項は、「わかりやすいプロット」×「家族の暖かさ」であるように思います。
わかりやすいプロットというのは、「普通の人が悪者に立ち向かう」とか「若い女の子が夢に向かって努力する」とか、あるいは「普通の大人が過去のトラウマを乗り越える」みたいなものです。
ポイントは、「普通の主人公」というところ。
才能に恵まれたわけでも、特別落ちこぼれでもない普通の人物が主人公になって、わかりやすい文脈の成長ストーリーを登っていくというのが必須です。
少し前までだとGTOやHEROみたいな凄い主人公にあこがれる、あるいは子供や不幸な主人公に同情するという作品がヒットしていました。
ドラマの登場人物に対して尊敬や憧れ、あるいは同情のようなもので視聴者はテレビを見ていたといえます。
2000年後半くらいからは、視聴者のドラマの楽しみ方が「憧れ」「同情」という消費型から、自分たちが登場人物に気持ちを重ねるシンクロ型に変わってきたという印象です。
主人公が絶世の美女であったり、特別な才能を持っていたりするよりも「普通」であるほうが、視聴者の気持ちが乗りやすい。
半沢直樹あまちゃんなんかがその典型です。
「普通である」ことによって多くの人が主人公にライド(気持ちを乗せる)ことができるのです。

ひとつ個人的に重要だと思うのが「家族」の存在です。
前に挙げたことに関しては何度か批評記事で見たことがあるのですが、個人的にはこの「家族」感の方がヒットに欠かせないような気がします。
倒れそうなときに支えてくれる妻や子供や悩んだときに包み込んでくれる「おばあちゃん」のような存在が登場する。
こうした「家庭の暖かさ」にも、いくつかのシンクロ効果があると思います。
実際の家族につかれた世代や一人暮らしのたとえば疲れた時に支えてくれる家族というところに「理想家族像」を見る。
あるいは、もう少し上の世代ならばそこに「家族に頼られる」という必要とされる気持ちがライドする。
現代の日本において、「家族団らんの絵」は気持ちをライドさせるうえで、非常に多くの要素を持ち合わせているといえます。
「家庭」のシーンが毎回出てくることによって、それぞれの世代ごとに自分の気持ちをドラマに乗せることができる。
また、勧善懲悪や夢を追いかけるみたいなある意味「非日常的」な成功物語に家族のシーンが挟まることで、急に視聴者にとって身近なものになるという効果もあると思います。

こうした二つの要素をしっかりと抑えたうえで、毎回Twitterとかで「これから山場だ」と拡散されるようなわかりやすい見せ場を入れていく。
歌舞伎の見得のような働きをするわかりやすい盛り上がりどころが毎回あれば、瞬く間にSNSを通じて拡散します。
誰もがスマホを片手にテレビを「ながら見」するようになった現在では、「これから見せ場だ」というCM前の演出が、そのまま広告として絶大な効果を発揮するはずです。
っというのが僕の考えるヒットするドラマの条件です。
これを踏まえて僕が考えるヒットドラマのストーリーを描く前に、アイドルを起用したドラマが低迷を続ける理由についてひとこと添えておきます。
アイドルを使ってもヒットしない決定的な理由も、上の二つで説明できます。
一つが「ライド」できないということ。
そしてもう一つ決定的なのが「家族観」が出せないということです。
アイドルという言葉の原義が「偶像」であることからもわかるとおり、本質的に「日常的」な空気と相いれません。
そのため、アイドルを主人公に使った瞬間、それはライドできない作品になってしまいます。
もしジャニーズのアイドルを使うなら、主人公で登場させるのではなく、さえない主人公の女の子が追いかける手の届かないヒーローみたいな立ち位置にした方が、ずっと視聴者がひきつけられるように思います。
ここを掘り下げると文章がとんでもない長さになってしまうので、話を戻します。。


以上が僕が考える(あまり意味がないことはわかっていますが)ヒットドラマの共通項です。
これを踏まえて、売れそうなドラマのあらすじを作ってみたいと思います。
まずはわかりやすい王道プロット。
勧善懲悪や夢を追いかけるもの、コンプレックスの克服系は半沢直樹あまちゃん家政婦のミタですでに行われているので別の王道を考えます。
これ以外の王道で残っているものと言ったらなんといっても純愛ものでしょう(笑)
スクールカーストで言うところの、トップ層ではない高校生の女の子が主人公の純愛ものの設定ということにします。
そして、大切なのはライド感。
ここで女の子にスポットをあてたストーリー構成にしてしまうと登場人物に気持ちをライドさせられる人が限られてきてしまうので、全体的にお母さん目線をかぶせます。
具体的にはお母さんが「自分の娘にこんな恋愛・学校生活をして欲しい」と思わせる要素を盛り込む。
お母さんの気持ちに立って、自分の娘にどんな青春を送ってもらいたいか考えたら、少女マンガの主人公のような素敵な出会いを望む一方で、学校でいじめられない安全な生活をできることではないかなと思います。
こうしたシチュエーションを担保するために、幼馴染としてちょっとギャルっぽい女の子(スクールカースト上位の友達)とひとつ先輩で面倒見がいいイケメン優等生(含むスポーツ)を用意する。
完璧に「ハチミツとクローバー」の羽海野チカ先生や「君に届け」の椎名軽穂先生の世界ですね(笑)
で、好きになる男の子は何かに熱中している純粋な子として登場。
野球やサッカーではありきたりすぎますし、剣道やバスケじゃ汗臭さ(スポ魂要素)が強すぎる。
かといってバンドでは純愛っぽさがない上にライドしづらい。。
ピアノか油画あたりで芸術系の大学を目指す男の子にしておきます。
その男の子に理不尽な試練が幾度と降りかかり、それを乗り越える男の子に少しずつ主人公が近づき、最後に結ばれるというストーリー。
悩みを幼馴染の二人に相談して、ときどきお母さんやおばあちゃんがやさしく包み込む。
毎回お父さんが妻と娘のガールズトークの横で微笑んでみているような暖かい家族団らんシーンを1カットだけ入れて、男の子側に毎回理不尽に降りかかる困難をスカッとする切り口で話の後半に解決する。
話のダレどころの5~7話くらいのところで山田玲司先生ばりの主人公とその相手の男の子を好きになる恋敵を投入(笑)

幼馴染の二人に流行りのアイドルを入れたら広告効果もいいので、いいバランスのドラマになるような気がします。
っと、頭で考えたようなストーリーじゃヒットなんてでないんだろうなぁ。。


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