新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



観察者としての作者の作家性が滲み出た作品〜海月姫のバランス感と作者の「孤立」感〜

正直なところ目には付いても内容を知ろうとは思ってもらえない気がするんですよね、海月姫って(笑)
本当に面白いマンガなのに。
僕も東村アキコ先生を知るまで名前は聞いても、正直興味は持っていませんでした。
あまりにもタイトルや表紙絵だけでは内容が想像できなさすぎるので。
まさかあの表紙とタイトルからファッションデザインで成功していく温かい物語が展開するとは思えません(笑)
僕も漫画を手にとってびっくりするくらい印象が変わりました。


話のプロットだけ大きくかいつまめば、くらげおたくの主人公の女の子がひょんな事からリア充イケメンの男の娘(ここ重要!)と出会い、少しずつ自分の才能を開花させていくという王道物語です。
ここだけとれば、君に届け野ブタをブロデュースなんかと同じように感じます。
海月姫は、非常に楽しみやすいストーリー線の上に、東村先生ならではの装飾をしたというのが特徴。
なんというか、どこまでも少女漫画的(それも純粋)な世界観の上に、青年漫画的な社会性が展開されているみたいな感じです。
主人公はいわゆる腐女子と呼ばれる友達と共同生活をする、典型的なコミュニケーションが苦手系女の子。
しかし、そこに登場する日常にはどこまでも「漢らしさ」みたいなものはありません。
主人公が変わっていくきっかけは趣味で作ったクラゲのマスコット人形の「くらら」、主人公が才能を発揮し始めるのはファッション。
そして何より可愛い洋服に憧れる女の子や、キレイになりたいという女の子の気持ちが描かれるなど、どこまでも超ベタな少女漫画の装置が機能しています。

装置として超ベタな少女漫画らしさが機能している反面で、その展開や設定には青年マンガのような現実感・社会性みたいなものが前面に反映されているように感じました。
僕が海月姫を読んでいて1番印象に残っているのが不意に訪れる主人公たちの、いわゆるリア充女子たちとの接触です。
話の多くは仲間内のグッと狭いコミュニティで展開されるのに、不意にビジネスの世界で生きる人やリア充女子が関わってきて、急に現実感が流れ込んでくる。
これって、どれだけ主人公の所属するコミュニティに感情移入させるかが大事な少女漫画の中では、極めて異質なものに感じました。
すごく少女漫画的な閉鎖性・ファンタジー性があるのに、青年漫画のような現実味が同居している。
この辺が東村アキコ先生のバランス感覚の面白さでもあるのかなあと思っています。


絶妙なバランス感と共に、どこかうっすらとした「孤立感」みたいなものも感じました。
これは東村先生の他の作品や、あとは山田玲司先生の作品にも共通して感じることなのですが、海月姫では、キーパーソンがどことなくどのコミュニティにも根っこの所では交われない孤立感みたいなものを持っているような気がします。
具体的に海月姫ならば蔵ノ介です。
彼は、遊び呆ける世界にいる一方で主人公達のおたく世界に入っていき、尚且つ家庭では政治という大人の世界の理論を見ている環境にいます。
心の奥底で、そのどこにも100%は交われない自分の孤立感みたいなものが、節々に滲むように思うのです。
これは、作者自身がそのキャラクターに乗っかっているのだろうと感じました。
この前ある番組に出演している東村先生をみた印象は、「ヤンキーになるには知的すぎるけれど、おたくと呼ぶにはコミュニケーションがうますぎる」というようなものでした。
多分、若いころ、どちらにも本当の意味での居場所が見つからなかったんだろうなと勝手ながら思っていました。
それが作品のバランス感覚の良さに繋がっているのだと思います。


いい意味でタイトルからは全く予想のできない海月姫というマンガ。
マンガであれば媒体紙があることもあり読者の流入経路は一定数確保できますが、映画になるとちょっとキツイんじゃないかなあというのが正直な印象。
でも、アレは内容を知ったら、絶対に見に行きたい人が増えると思います。
特に、不意に連れて行かれて「思っていたのと全然違った」となる人は多いんじゃないでしょうか。
その意味で、人を誘うのにいい映画であるような気がします。

海月姫、オススメのマンガです!

海月姫(1)

海月姫(1)