この前久しぶりにばあちゃんの家に行った。
ナナおいで!
家に行くと僕は何よりも先にナナを呼ぶ。
ばあちゃんの家にはネコがいる。
爪を切るために病院に行けば自ら手を前に出し、お客さんの腕の中ではいつまでも大人しくしているという事で近所で礼儀がいいと評判のネコだ。
よく僕の家のソラと比較される。
自分で言うのもなんだがソラは行儀が悪い。
人が食事をしているとすぐによこせと言ってくる。
そこで食べ物を渡さないとすぐに噛み付く。
高2の時あまりにも噛み付くので、僕は指先にアロエを塗って待っていた。
案の定ソラはオヤツをあげなかった僕の右手に噛み付いた。
その時のソラの顔は今思い出しても面白い。
有吉並に顔のパーツが近づいていた。
5年間ソラと暮らしていて、僕が勝ち取った唯一の白旗だ。
そんなソラと比べると一層ナナの大人しさが際立つわけだ。
本当にナナは行儀がいい
周りの人びとはナナは一度も怒ったりした事がないと思っている。
しかし僕は一度だけ,本当にその時だけだがあの何をされても怒らないナナが本気で怒ったところをみた事がある
それは夏の暑い日の午後だった
ばあちゃんが廊下で股を広げて寝ていた
その広げた股の間でナナは丸くなっていた
すやすや眠っている。
やがてばあちゃんの頭からすさまじいいびきが聞こえ始めた。
僕と母のいびきのうるささはきっとここから来ているのだろう。
そんないびきに迷惑そうに目を覚ましたナナだったがそのときは怒りもせずそこでじっとしていた。
しばらくして、ばあちゃんの地鳴りこのうないびきは収まった。
それからもうしばらくすると、ふいに
「ぷぅぅぅっ~」
という音がしてきた
今度は頭からでなく尻からだった。
突然、
「ニャッッー!!?」
という叫び声が響いた
股に挟まっていたナナには相当こたえたのだろう,僕が振り向いた時、ナナの牙はばあちゃんの太腿に食い込んでいた。
今度は
「ぎゃっっー!!?」
という悲鳴があがる。
ばあちゃんは痛みで跳び起きた。
その時のばあちゃんは何が起こったのかわからないという表情をしていた。
それ以来ナナの怒った顔は見ていない。
おそらく理由まで含めて怒ったナナを知っているのは僕だけだろう。
ナナを抱きながら僕は思いだし笑いをした。