新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



ざっくり西洋美術史

中学校の副教科のテストで非常に苦戦するのが「歴史」だと思います。
音楽ならば音楽史、美術ならば美術史です。
何年にどんな人が活躍しただとか、ある人の代表作は○○だとか、知識としては教えられるけれど、それがどんな人であったかということや、全体としてどんな変遷をしてきたのかということはあまり教えられません。
点としての知識しか教えてもらえないから、頭に入ってこないし、何より美術や音楽が嫌いになってしまうように思います。
以前、子供達に聞かれたのがきっかけで音楽史に関してざっくりまとめたエントリは書いたことがありました。
(こちら→中学音楽に出てくる音楽史をざっくりまとめてみた - 新・薄口コラム)
美術史バージョンを書いていなかったので、まとめてみようと思います。


クラシックの歴史同様に、細かく分けていけばキリのない西洋美術史
しかし、細部まで書いてしまうと複雑になってしまうので、ここでは本当にざっくりした、写実主義以前の絵画、写実主義印象派象徴主義、そして抽象絵画のカテゴリに分けてまとめたいと思います。
写実主義の画家たちが出てくるまでの絵画の多くは、宗教絵画や伝説、言い伝えをモチーフにしたものでした。
キリストの逸話を絵にしたものや天国を描いたもの。
写実主義の画家が登場するまで、絵画は神や天使といった信仰の対象を描くことが中心となっていたのです。


18世紀、ある画家の登場で、絵画の世界は大きな転機を迎えます。
写実主義を代表する画家のひとり、画壇の異端児ギュスターヴ・クールベが登場します。
彼は、それまでの主流であった宗教絵画に対して、「俺は目に見えないものは描かない」言い放ち、天使や天国といった目に見えない世界ではなく、自画像や波といった実在するものをモチーフに作品を描き始めます。
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クールベ「波」(Wikipediaより)

その中には「葬式の最中に笑っている人」や「水浴びする女たち」というような挑発的な作品も存在します。
キリストの教えで「神のご加護を」と言っている横で「でも実際には葬式に来ている人の中には悲しみより退屈が上回っている人がいるでしょ」ということを描いた作品や、それまでは裸の女を書く時は天使の姿を借りて神聖なものとして描いてきた中にいきなり生身の女性の裸を描いて出展された時の、人々の衝撃は想像に難くありません。
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クールベ「世界の起源」(Wikipediaより)

写実主義を実践した代表的な画家には、クールベのほかにミレーなどが存在します。
写実主義とは写真の様に精密な絵という意味ではなく、「目に写るものしか描かない」と言った画家たちのこと。
彼らは天使や楽園といった見えない世界ではなく、現実世界に確かに存在する美しいものをキャンバスに描こうとしました。


写実主義の後に登場するのが印象派と呼ばれる人々です。
写実主義の人たちが現実に存在する美しいものをありのままに描こうとしたのに対して、印象派の人々は美しいものを見たとき、そこから感じるものを大切にしました。
山の温かさや日の光といった、それまでには描けなかった肌感覚のようなものを絵の中に閉じ込めようとしたのがこの人たち。
代表的な画家にマネ、モネ、ピサロルノワールなどがいます。
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モネ「印象・日の出」(Wikipediaより)

印象派の絵画は絵としての正確さではなく、その風景を見て作者が感じた良さが描き出されています。
例えばモネの積み藁という作品の場合、積まれた藁を描きたかったのではなく、積み藁に当たる光の美しさを描こうとしています。
このように、モチーフそのものではなく、その風景全体が持つ美しさを描こうとしたのが印象派と言えるでしょう。
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モネ「積み藁」(Wikipediaより)

印象派写実主義に対抗するように象徴主義と呼ばれる画家たちも登場します。
目に写るものを描こうとした写実主義に対して、現実世界に存在しないからこそ描く価値があるのだと言って、頭の中の世界や人間の心理などを表そうとしたのが象徴主義の人たち。
象徴主義の中で最も有名な画家といえばムンクでしょう。
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ムンク「叫び」(Wikipediaより)

誰もが一度は学校の授業中に落書きした覚えのあるこの絵は、不意に聞こえてきた叫びにも似た幻聴に対して耳を塞ぐ男の姿が描かれています。
ムンクの他に代表代表的な象徴主義の作家といえばオディロン・ルドンゴーギャンなどがいます。
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ルドン「森の精神」(Wikipediaより)

内面や頭の中の世界を絵にした象徴主義
一見すると印象派に近いようにも感じますが、現実世界から得られるイメージを大切にした印象派と自分の内面から溢れるイメージを大切にし象徴主義では、インスピレーションの起源という点で真逆であるように思います。

その後出てくるのが抽象絵画です。
絵とは何なのかを問いかけた作品が数多く登場します。
シュールレアリスムやフォービズム、キュビズムなど、様々な絵の可能性が模索されました。
木の手前に三日月が配置されているマグリットの「9月16日」、強烈な原色を用いて描かれたフォービズムの作品、モチーフをバラバラに分解して多視点で組み直したピカソの作品など、様々なアプローチが取られました。
中にはカンディンスキーのように、絵とは何かを問うような作品を描いた画家もいます。
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カンディンスキーコンポジション」(http://art.pro.tok2.com/K/Kandinsky/Kandinsky.htmより)


ざっくりと絵画の歴史をまとめると、絵画は目に見えない世界を描く宗教絵画から写実主義の人々によって、現実世界の美しさを描くようになり、印象派により光や空気感といったそこにある感覚が描かれた。
反対に象徴主義の人々により内面の不安や頭の中の非現実なイメージが描かれ、それらの後に絵とは何かを模索するシュールレアリスムやフォービズム、キュビズムの画家たちが出てきたと言えると思います。

今回はあくまで全体の流れを書きたかったのでとんでもなくざっくりとした説明になってしまいましたが、ひとりひとりの画家がどうしてその絵を描いたのかということも勉強していくと非常に面白いように思います。
ただ「こんな凄い作品があるんだ」と言われても興味をもてるはずもありません。
どうやってその絵が生まれたのか、なぜこんなチンチクリンの絵が評価されているのか?(笑)
そういったことも、興味を持ったところから調べていくと自分なりに納得できるような気がします。
あまり役に立たない仕上がりになってしまったような気がしますが、美術史で焦っている人たちの助けになったら幸いです。

p.s まさかのセザンヌ書き忘れ(笑)

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中学音楽に出てくる音楽史をざっくりまとめてみた - 新・薄口コラム