新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



あらゆる物が無料になった世界はユートピアでなくデストピアだと思う

春風亭小朝さんがさんまさんに「シンギングボール」という物を紹介している動画を見つけました。
シンギングボールとは、チベットの僧が作る鐘のようなもの。
お寺にある鐘を想像してもらえたらいいと思います。
フチを何周も擦っていると、少しずつ「ぽわーん」って不思議な音がなる代物。
リラックス効果があると言っていたので、YouTubeで探してBGMに流して寝ることにしました。
小朝さんが言っていたとおり、非常に心地よい音色。
独特の音色を聞きながら眠りに落ちて行きました。
心地よい眠りに浸っていたのも束の間、少し経つと僕はとんでもない冷や汗をかいて飛び起きます。
火あぶりにされた夢をみました。
ふとYouTubeを見ると、先ほどまでチベットの坊さんがすり鉢状の鐘のフチをひたすら擦って心地の良い音を奏でていた動画だったのに、目が覚めると大量の坊さんが登場してお経を唱えていました。
多分チベット語で。
シンギングボールの音色をBGMに寝ていたつもりが、気がつくと大量のお経に包まれて寝ていたみたいです。
で、夢に出てきたのが火あぶり。
リラックスする予定だったのに、今年で一番悪い寝覚めでした。


リラックスするはずが火あぶりにされて飛び起きた事はともかく、動画を見たいと思ったとき、その瞬間にアクセスできるというのは、改めて考えると凄い進歩であるように思います。
それも無料で。
ここ数年で無料のモノが本当に増えているように思います。
YouTubeで探せば大抵の音楽はアクセスできてしまうし、青空文庫で昔の小説は読むことができる。
英語が読めればGoogleスカラーで最先端の論文にもアクセスできて、違法アップロードではあるけれどfc2やDaily motion、Youkuで検索すれば映画やテレビ番組、そしてアダルトビデオまでアクセスができてしまいます。
様々なアプリが無料で入手できて、パズドラやモンストといった、かなりクオリティの高いゲームまで無料でできます。
仕事に関してもEvernoteGmailといったかなり便利なツールが無料で使える。
あらゆるものが無料で使用できるようになってきています。
無料であるものの多くが、フリーミアムモデルによって成り立ちます。
無料でも機能を使えるが有料登録することでさらに高機能なサービスを享受できたり、広告などを外したりできるのがこのモデル。

僕は今後、このフリーミアムモデルがもっと多領域に広がるのではないかと思っています。
極端な話をすれば、あらゆる日用品にまで広がる可能性だってあると思うのです。
たとえばGoogleのような超巨大企業が登録者に毎日「日用品セット」みたいなものを届けるようなサービスを作ります。
登録者のもとには、その日に使用する分の石鹸や歯磨き粉、食器洗剤に選択石鹸、レトルト食品などが入ったパックが届く。
それらは一回分の試供品のようなものです。
自社製品を売り込みたい企業が広告として試供品を提供しています。
その延長で、企業が売り込みたい商品の詰め合わせみたいなのが毎日届く。
その代わりユーザーはそれらの最低限の生活品は無料で手に入れることができるという未来。

或いは新聞や雑誌が毎日無料で届くサービス。
登録者の元には毎日もしくは定期的に無料で新聞や雑誌が届きます。
その中身は出版社に企業がお金を払って書きてもらった記事が多く載っている。
もちろんユーザーはそれを承知しています。
自分から好みの情報にアクセスしたい場合は有料みたいなモデルも考えられます。

さらに極端な事を言えば、技術が進歩していき、生産コストがますます下がれば無料の車や無料の家だってあり得るかもしれません。
車を無料でもらえる代わりにボディには企業広告がついているとか、ひとつきあたり月100kmまでは無料だけれどそれ以上は有料で専用のスタンドからしか給油できない車とか。
家の場合は賃料がタダの代わりに、不動産屋が契約している労働者を集めたい企業で働くというのが条件みたいな感じでしょうか。
建てすぎて今後空き家だらけになるであろうマンションを買いたたけば、あながち不可能ではない気がします。


こんな風に書くと、僕はフリーミアムモデルについて期待をしているように思うかもしれませんが、実は興味があるのは反対の側面です。
あらゆる分野において「無料」が限界まで溢れるようになると、無料で商品を受け取るのが当たり前の人と有料で欲しいものを手に入れる人の間に決定的なキャズムが生まれるようになります。
無料が当たり前の人は、企業側の意図に乗って消費行動を起こすようになり、有料で欲しいものを手に入れる人は、自分の嗜好に正直に消費行動をする。
こうした2つの消費行動が定着して、2者の間に決定的な隔たりができるようになる気がするのです。
フリーを好む大勢の「消費者階層」と有料の世界を生きる一部の「選択消費階層」。
ちょうどフリーミアムモデルにおける無料会員とプレミアム会員の比率くらいで分布するようになるんじゃないかと思います。
あらゆるものがフリーになった世界で待っているのは、豊かな暮らしではなく、どちらかというとかつての共産主義の世界の生活世界のような、或いはジョージオーウェルの描いたデストピアのような、そんな世界に近いイメージに行き着くような気がします。



余談ですが、昨日の僕は窓を開けっ放しで寝ていました。
YouTubeの音量も大きくないとはいえ、静まった深夜に耳を澄ませばお隣さんに聞こえるレベル。
深夜3時に隣から聞こえてくるお経。
それもチベット語で。
多分1番焦ったのはお隣さんだったんじゃないかなと思います。
・・・今度会ったら謝っておこう。。

アイキャッチフリーミアムモデルについて書かれたクリス・アンダーソンの「FREE」

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