新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



普通のおにぎりを一万円で売る方法

「おにぎりを1万円で売る方法を答えよ」 採用面接での奇問にどう答えればいい?? | キャリコネニュース
こんな記事を見つけたので、ちょっと真面目に考えてみようかなあと。。
ざっと記事を読んだ中に出てきていたのは、「アイドルに握ってもらう」や「一万円相当のオマケをつける」、それから「一万円出してもおにぎりが欲しいほど食料危機の場所に行く」や「インフレにして一万円の価値を落とす」などでした。
どれも面白いなと思ったのですが、この質問をした試験管の想定の範疇は越えられていないような気がします。
おそらくこれだけ独創的な質問をするからには、単に頭のキレを求めているわけではないはずです。
上に挙げたものはどれも秀逸ですが、予想の範囲内。
先のアイデアは100円程度の価値のおにぎりに付加価値をつけるというアプローチと、おにぎり自体の価値を相対的に上げるアプローチの二つに分けることができます。
アイドルに握ってもらうというのと、オマケをつけるというのは前者の考え型。
AKBやおまけ付きチョコで繰り返されてきた方法です。
飢餓地域に行くのとインフレで一万円の価値を下げるというのも、斬新に見えますが、どちらもマーケティングや経済学の教科書に載っているものがベースになっています。
古典的な知識を応用させて生み出したアイデアということになります。
こういった既存のネタを応用する能力は紛れもなく価値のあるものですが、この出題者の意図はもう少し違うところにあるように思うのです。
具体的には前例のないアプローチを生み出せる人材かどうかというところ。
その観点でいくと、どちらも王道の思考の範囲内であると言えてしまいます。


こんな風に書くほどハードルが上がってしまい、非常に後悔しているのですが、僕なりに頭に浮かんだアイデアを挙げてみたいと思います。
まず前提として、古典的な手法とは違うということから考えました。
僕が考えたのはおにぎりを媒介にして、人の人生に関わるという経験を売るというプロモーションです。

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コンセプトは「おにぎり坊主の冒険譚」
一つ一万円で売っている普通のおにぎり。
しかし、それはただのおにぎりではありません。
そこには1人の男の人生が詰まっています。
出品者はおにぎり頭で田舎育ちの小坊主。
彼は夢を叶えるために一念発起して東京に出てきます。
デザイナーの夢を叶えるため就職活動に勤しむが、初めての都会、厳しい現実。
青年は大きな壁にぶつかっていました。
そんな中出会った企業から出された難題は「おにぎりを一万円」で売れというもの。
上京したばかりの彼には当然頼れるツテなどありません。
そんな彼が苦肉の策で思いついたのが、「自分自身が夢を叶えるまでの軌跡」を商品にするということ。
このおにぎりは正直言えば原価50円としない普通のおにぎりです。
しかしこのただのおにぎりを通して、1人の男の人生を応援する権利が手に入ります。
彼が落ち込んだときはそれとなく励ましてあげて下さい。
彼が弱さに負けそうな時は、時に叱咤激励をあげて下さい。
このおにぎりにはその権利と義務があります。
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もちろんこの文章に登場するのは自分自身です。
おにぎり頭にしてコンセプチュアルにすることで、演出効果が望めます(笑)
このプロモーション案で僕が商品と想定しているのは、ある人間が成長する物語という「経験価値」です。
一万円で「田舎の若者を応援する権利」を購入した人は、ちょっとおにぎり頭の面白い少年からバカ高いおにぎりを買ったという「話のネタ」と、ひとりの若者を助けるという人の役にたつという経験を手に入れる事ができます。
不思議な縁で出会った若者との長い付き合いは、話のネタとしての面白さは十分です。
それだけでなく、一生涯感謝してもらえるという「体験」も得られる。
おにぎりはその体験を買うためのチケットです。
おにぎり一つの値段としては一万円は明らかに手が出ない金額でしょう。
しかしながらひとりの若者の人生に関わる権利としてならば、一万円は急に破格の安さに感じるはず。
おにぎりの一万円は、その人が掛ける若者への期待値。
どうかあなたの期待を、僕に分けてください。

こんな感じでSNSとかを使ってプロモーションしたら、興味を持ってくれる人は何人かいて、その中で一人くらいなら購入してくれると思うんですよね。
そんなんアイドルが握ったとかおまけ付きおにぎりと同じやんけと言われればその通りとしか言えませんが、一つだけ決定的に異なる点があります。
それは購入する側が共犯関係になるということ。
人の人生に関わる権利を買うということは、少なからず相手の人生に影響を与えるということです。
その権利を買うということは、ファンというよりはむしろオーナーに近い立ち位置。
おにぎりを買って終わりでなく、買ってからその成長を見ることで初めての価値が加算されていきます。
これは消費というよりはむしろ投資です。
おにぎりをアンカーにして、人に投資するという権利を売るというのが、僕が思いついたアイデアです。

ここ数年、あらゆる分野で物が売れなくなり、「経験価値」というものが注目されるようになりました。
体系はかなり違いますが、これもある意味で経験価値を提供しているということが出来るでしょう。
僕は、物としてのおにぎりではなく、そこに付随する経験を提供する媒介として売り出すのがいいのではないかと思いました。

勝手に辛口で記事にあがってきたアイデアを切り捨てたクセにお前のアイデアはその程度かという総ツッコミが予想されますが、どうかみなさま優しくして下さい(笑)
あくまで出題者の意図を掘り下げることの大切さを書こうとしただけなのです。
単に商品を「売る」しかけではなく、ストーリーを作る、一連のイベントに仕向ける。
この面接の問題を見た時、そんなアイデアを言えたら面白いんじゃないかと思いました。

アイキャッチは経験価値マーケティング

経験価値マーケティング―消費者が「何か」を感じるプラスαの魅力

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