僕の中では、彼らは一括りの同じカテゴリのタレントさんです。
時系列でみたとき、彼らは明らかにゼロ年代後半に生まれてきたタレントなんですよね。
よく、有吉さんとヒロミさんを復活した芸人という枠で捉える人がいますが、彼らの人気の秘訣は、そこにあるわけではありません。
またアウトデラックスで注目したように、彼らは「特異」であるから人気な訳でもないと思うのです。
僕は、彼らがお茶の間に受け入れられた最大の要因は「身内芸」を許さない芸風にあると思っています。
彼らはなあなあで「空気を読む」ような雰囲気になっても、基本的にそこに与しません。
一緒によく出演している仲のいい芸人の中だけで話題が盛り上がり、視聴者が置いてけぼりを食らっているような時に「つまらない」とピシャリと言ったり、アイドルが仲間同士で褒めあっている空気をバッサリ切ったり。
そういった、「身内芸」に切り込む力を持っているというのが、彼らのタレントとしての売りであるように思います。
2000年後半からのテレビ番組は、出演タレントたちの「内輪感」が過度に出てきていたように思います。
漫才の大会からは視聴者投票が消え、芸人が芸人を評価するようになりました。
また芸人の番組で、プロの芸人が作る笑いをプロが評価するというものが増えていたのもこの時期。
ipponグランプリやすべらない話などは、まさにこの系譜です。
お笑い芸人さんが主導権を、持つ番組では、排他的な印象が強まりました。
引退する直前までの島田紳助さんの番組のように、出演タレントのファミリー感が露骨に出ている番組も目立っていました。
ファミリー感の系譜にあるのが、ネプリーグや007をはじめとする中堅芸人さんのレギュラー番組と、特定のアイドルがレギュラーを務める番組です。
その画面からは、「馴れ合い」のような空気がどこか滲んでいました。
アッコにお任せなんかもここのカテゴリーです。
人気アイドルを無理やりたくさん詰め込んだようなテレビドラマも増えていました。
特定の番組がどうというわけではありません。
実際にどの番組も偶然やっていたら見るし、見ればどの番組も面白いと感じます。
ただ、一つ一つの番組というミクロな視点ではなく、全体としてそういう番組ばかりになった時、視聴者としてはどのチャンネルを回しても「内輪芸」ばかりで、漠然とテレビを点けるという行動に対するモチベーションは下がっていたのは確かでしょう。
個別の番組に対して嫌気が指していたというのではなく、マクロな視点で内輪感・身内芸に辟易していた。
視聴者の気持ちの中で、そうした予定調和なものを崩してくれるような存在に対する需要が増していたのだと思います。
先に挙げた身内芸を嫌うタレントの中で初めに注目されたのが、有吉さんやマツコさんでした。
マツコさんはその背景から、有吉さんは長い間テレビの世界から離れていたことで、テレビの中で強い内輪感を持つ特定のグループに属していませんでした。
だから、彼らが画面にいると、急に内輪の空気が薄くなります。
また、本人たちもかなり自覚的に予定調和を崩そうとしていたように感じました。
マツコさんの女子アナいじりや、有吉さんのあだ名というのは、内輪感を壊すのに非常に便利な「飛び道具」です。
彼らが出演する番組では、なあなあな空気になりそうな時や、アイドルたちが身内だけで盛り上がるようなネタをした時に、ピシャっとツッコミが入ります。
視聴者が辟易している内輪感を切り捨ててくれるところにこそ、彼らがお茶の間に受ける最大の秘訣があるのです。
10年代になって、視聴者の脱・身内芸の風潮は加速しています。
みのさんやタモリさんの帯番組が終了したことが象徴的です。
明らかにここ数年で、なあなあな番組や内輪芸・身内感に対する視聴者の需要は減ってきています。
というよりも、ごく少数の「今まで以上に濃い内輪感を欲する視聴者」と大多数の「内輪感を嫌う視聴者」に二分したというのが僕の印象です。
そんな視聴者の気持ちをガッと掴んだのが、上に挙げたタレントさんたちだと思うのです。
彼らは単体で数値を持っているというわけではありません。
あくまで予定調和なスタジオの空気感の中やありきたりなVTRへのコメントを求められることで才能が発揮される。
一時期のマツコさんが主役を張った番組や、坂上忍さんを司会者に持ってくるというのは、本当は当人の才能が生きる起用ではないように思います。
まあどちらも器用にこなしていましたが(笑)
脱・予定調和のタレントさんに対する視聴者の需要は、まだまだ多いはず。
そうしたタレントさんの発掘と、身内芸がうまく抑えられた番組を意図的に作り出せたら、かなり視聴者を惹きつけるものになるような気がします。
アイキャッチは加持倫三さん「たくらむ技術」
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