あらかじめ断っておきます。
その上で、誰が見ても死刑にならなければ国民感情が収まらないような凶悪犯罪者、具体的にはテロリストが現れた場合、死刑廃止がテロ対策の足かせになる場合があり、その問題について蓋をするのはよくないと思ったので、少し考えてみました。
専門家の中には、主犯格の男に対して、捕まらずに殺害されたのではなく、「捕まえずに殺害した」と考える人も少なくありません。
本来であれば、テロの重要参考人です。
現代の技術を総動員すればかなりのテロに関する情報を引き出すことができるわけです。
つまり殺してしまうより、捕まえて供述させた方が今後のテロ防止に役に立つ。
テロの重要参考人を追っていて、その結果犯人を殺してしまったというのは、この観点から言えば、任務として決して成功したとはいえません。
むしろ、ワーストではないけれど、作戦がうまくいかなかったともいえる。
にも関わらず、テロの主犯格を殺したことは、大成功(人を殺している以上言葉は悪いですが)のように報道されました。
これを、、死刑がない国で国民感情を納得させるために、、その場で殺害するという、「事実上の死刑」を選択したという見方もできます。
死刑制度がない国では、どんな凶悪犯罪を起こした人間も終身刑になる。
全く罪のない自国民をテロで何百人も殺されて、その殺人犯は生きているという状況で、国民感情が納得させられるか。
また仮に終身刑になったとして、完全な独房で一生を過ごさせるということはできない以上、刑務所内で他の受刑者と接点ができる。
そしてそこがテロ組織の勧誘の場になる危険性がある。
死刑制度がないことによって、こうした問題が生じます。
こうした問題を避けるために、国が超法規的な対応で、テロリストを殺してしまう。
死刑制度がないことにより、こうした対応をとる可能性が指摘されています。
ここ数年で、テロリストの活動は明らかに活発化しています。
おそらく、死刑制度を廃止しようという動きが起こった時には、近年起こっているような規模のテロ主犯格の人間を自国の法律で裁くことは想定されていなかったと思うのです。
テロ組織の活性化によって、明らかに死刑制度の周辺の事情が変わってきました。
誤解を恐れずに書くとすれば、少なくとも僕の目には死刑制度がないことにより、テロリストを捕まえ情報を引き出すという選択肢が、現状では取ることができなくなってしまっているように感じます。
だからといって、死刑制度廃止に反対と言いたいのではありません。
そもそもそこに関して賛成も反対も思っていないので。
そこは改めて断っておきたいところです。
そうではなくて、死刑制度廃止という活動が起こった時と事情が変わりつつある、そして現状のテロリストに向き合う姿勢として捕まえずに殺すという選択肢が何度かとられた。
それに対して当然のことと済ませるのではなく、僕たち自身が「なぜ?」と問題意識を持って報道に接することが大切だと思うのです。
ちきりんさん流に言うのなら「自分のアタマで考えよう!」ですし、岡田斗司夫さん流に言うのなら「この場は僕が賛成反対という意見を言うのではなく、こういう見方もあるよという思考の切り口を紹介している」だけです。
僕はブログを書く上で、触れた内容は自分主張とは切り離した「こう見える」という切り口のみにするということを心がけています。
自分の主張は一切書かない。
だから薄口コラムという名前なのです(笑)
誰の目に見ても正論である事象に触れた内容だったので、必要以上に自分のスタンスを強調したものになってしまいましたが悪しからず。。
アイキャッチは「テロリストの息子」

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