新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



ことば遊びを並べるだけで

「凄いねえ、将棋とラブが同んなじなんだと」
そう言って立川談志さんが落語の中で紹介したのはこの文句

将棋指す手をつくづく見れば
やっぱり恋路が同じこと
この手で利くのか利かぬのか
飛車を使って呼び出だす
角の次第と駒々に
語れど先が歩に墜ちず
とんだ桂馬に跳ねられて
無駄に使った金銀は
詰まらないではないかいな。
立川談志源平盛衰記」より>

五七調で恋愛について語られる上の言葉には、「角」「飛車」「歩」「金」「銀」「桂馬」「詰む」と、将棋を示す言葉が巧みに織り込まれています。
こういう言葉遊びを節々に散りばめるのが、僕にとって談志落語の魅了の一つでもあります。
談志さんが見つけてきた面白い言葉遊びをもうひとつ。

乗せたから 先はあわずか ただの駕籠 ひら石山や 走(はせ)らしてみゐ 

江戸時代の天才狂歌師、蜀山人を題材に作られた落語の中で紹介される狂歌のひとつです。
蜀山人が滋賀を訪れた際、籠に乗ろうとして持ち手に「近江八景を全て読み込んだら籠代はタダでいい」と言われて読んだ狂歌だそう。
近江八景とは、石山の秋月、瀬田の唐橋 粟津の晴嵐、矢橋の帰帆 、三井の晩鐘 、唐崎の夜雨、堅田落雁、そして比良こ暮雪を指します。
この歌を分解するとこうなります。

のせた(瀬田)から さき(唐崎)はあわず(粟津:あはづ)か たた(堅田)のかご ひら(比良)いしやま(石山)や はせ(矢橋)らしてみゐ(三井)

将棋を恋愛に掛けた言葉遊びに劣らない技巧を凝らした言葉遊びだと思います。

朝起きて、不意にバクマンを読んでいて言葉遊びについてまとめたくなりました。
バクマンとは、デスノートの作者たちが描いたマンガ家を目指す少年たちのお話。
第一話と最終話の見開きページが、僕にとって非常に衝撃的で、定期的に読み返しています。
一話で主人公はずっと好きだったヒロインに「その夢が叶ったら結婚してください」と言います。
そして、最終話では「その夢が叶ったらから結婚してください」で閉じる。
あざといと感じる人もいたかもしれませんが、僕は20巻かけて作った壮大な前フリに素直に感動しました。
一文字加えることで物語のきっかけとまとめを作ってしまう。
逆に、文字を取ることで自体が悪化するなんて例を読んだ事があります。
まだ出版物に検閲があった時代のこと。
小説の中に「奥さん、接吻させて下さい。」という一文があったのだそう。
「接吻」という言葉が公共風俗に反するということで出版にあたり、この言葉が削除されました。
で、結局出版されたときの文は「奥さん、させて下さい。」
かえって過激になってしまったという笑い話。

一文字増えて大慌てという例もあります。
数年前の山形新聞のコラムに載っていたお話です。
パソコンで「30022(千円)」と打つべきところを「300222(千円)」。「2」が一つ余計だった。これを基に算定されたから大変。村はもらい過ぎた分が交付税から減額される2年後に備え、一時積み立てることに。
(山形新聞「談話室」2016年9月28日)

ことば遊びをし始めると楽しくなって、どんどん話題が転がっていってしまうので、この辺でやめておきます。。。


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