新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



ネットにおける「入場料」というビジネスモデルの可能性

例えばモーツァルトが生きた時代、音楽家は貴族に雇われて曲を書き、パーティで演奏するといった、特定の個人のお抱えの才能でした。
それがベートーヴェンショパンの時代になって自らのコンサートを開き、客を集めるようになる。
絵画で言えば、はじめは教会や地元の有力者に頼まれて書いていたものが、サロンのようなところで展示されるようになり、ギュスターヴ・クールベによって初めて個展が開催されます。
あるいは料理の世界も同じです。
それまでは貴族のために作っていた素晴らしい料理の数々を、庶民にも味わってほしいとできたのがレストランです。

これらの事例は、権力者からの注文を受けて作る職人仕事であったものから人々を集めて自分の商品を見せるという形になったという点で共通しています。
コンサートや個展を開いて、その入場料(もちろんそこでのお土産や絵が売れるというのも含め)で生計を立てるというのが、これらの分野のスタイル。
(絵画の個展の場合、入場料を取らない場合が多いかもしれませんが、あくまでマネタイズの可能性があるという意味で)
コンサートにしろ絵画にしろレストランにしろ、誰かに依頼されて作るのと1番の違いは、1度作品を作ってしまえば、それが何度でもお金を生み出すという点です。
もちろん定期的に新作を披露するわけですが、コンサートであれば行くたびに聞きたい代表曲があるだろうし、モネの睡蓮のように、ある人の作品展を見に行けば必ず見ておきたいと思えるような名作があります。
レストランも、毎回料理を作らなければなりませんが、そのレシピは1度作って仕舞えば半永久的に使えます。
誰かのお抱えになるスタイルから人を集めるスタイルに移行することで、それまでは相手に渡すその一回しか価値を生み出すことのなかった作品が、繰り返しお金を生み出す資産になります。

僕の定義では1度しかお金を生み出さないものを商品、何度もお金を生み出すものを資産としています。
SNSが普及して、これだけ人を集めやすくなった現在、ネット上にコンサートや個展やレストランに相当する「会場」を持つビジネスモデルを作るのもありなんじゃないかと思います。
もちろん、今でもお金を払ってコンテンツを閲覧する機能は多々あります。
しかしそれらは基本的にある一つの商品を購入することが想定されています。
noteのような文章にしてもアダルト動画にしてもそう。
或いはニコ動や新聞社のデジタル版のように、月額定額制のサービスも多く存在しています。
こちらは毎月お金を払い続けることでそこにあるコンテンツが見放題というサービス。
ユニバーサルスタジオジャパンの年間フリーパスみたいな感じです。

ネット上に単品購入スタイルと年間フリーパススタイルのビジネスモデルがあるのなら、入場料スタイルのビジネスモデルもあっていいのではないかと思うのです。
例えばある漫画家さんがウェブページを開いていて、そこに行けば一回500円の入場料でその作家の全ての作品が閲覧できる。
そのページから離れて別日にまた見たくなったら改めて入場料を払わなければいけない。
作品は定期的に更新されていて、入場料を払った日はどの作品をどれだけ読んでもいい。
こんなスタイルにしておけば、それまでの作品が購入されて終わりではなく、何度も人を集めるもの(=資産)になります。
もちろんマンガだけでなく、作家さんやミュージシャン、デジタルアーティストなんかもこのスタイルに相性がいいでしょう。
あまりに新作を更新する頻度が高すぎては何度も支払わなければならず、それなら月額課金でということになってしまいますし、逆に頻度が少な過ぎれば単品購入に流れてしまいます。
半年〜1年くらいでコンテンツを製作するような分野に関しては、このやり方が有効です。
予備校の夏期講習や冬期講習の授業なんて、まさにこのスパンにちょうどいいかもしれません。
単品購入でも月額課金でもない、入場料というコンテンツを提供する方式。
個人のマネタイズの仕方として、今後アリなんじゃないかなと思います。

アイキャッチはあらゆる商品がタダになるという主張をしたクリスアンダーソンの「フリー」

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