情報がタダなのは一時的な現象ではないか
もちろん僕は産業革命の只中を生きたわけではないので完全に想像でしかないのですが、蒸気機関が発明され大量生産が可能になったその瞬間は、商品の値段が一旦タダ同然になったのではないかと思っています。
生産の方は工場をこしらえて人を雇えば一気に大量に作ることが可能です。
それに対して需要の方は人に認知してもらい、欲しいと思ってもらう。
さらにそこから定期的に買い換えたいというマインドセットが根付くところまで持っていかなければなりません。
そうなるとまず先に消費者に便利さを享受してもらって、そこから需要を創出するというフェーズがあったと思うのです。
爆発的に商品が増えたその瞬間は、物が溢れるために需要供給曲線のバランスが崩れて、物の値段がタダ同然になる。
そしてその後、便利さを認知した消費者によって需要が拡大し、供給量に追いつき価格が安定する。
僕は産業革命の時の世界はそんな経過を辿ったのではないかと思っています。
全く新しい技術が生まれると、それにより大量の物が溢れ、一時的にその価値はゼロになる。
もし産業革命の時代にこういうことが起こっていたとしたら、今の時代で当時の商品に該当するのは、「情報」でしょう。
IT革命により大量の情報が溢れるようになって、その結果一時的に情報の価値がタダになっている。
爆発的に商品が増えたその瞬間は、大量の物に溢れていますが、そこには安かろう悪かろうの品も大量に紛れています。
初めはそれで満足しているけれど、使っている中で、人々はよりよい商品を求めるようになる。
たとえそれが多少値がはるとしてもです。
タダだけど2度も拭けば皮が真っ赤になってしまうようなトイレットペーパーと、200円くらいするけれど使い心地のいいトイレットペーパーがあるとしたら、僕たちは後者を選びます。
そんな感じで、大量に溢れたタダ同然の商品の中から、自分の眼鏡に叶う商品をお金を払って買う。
これが僕の考える、大量生産が始まってから値段が安定するまでに起こった消費活動のプロセスです。
僕は情報の分野でも、こんな流れが起こっているのではないかと思えて仕方がないのです。
IT技術により、誰もが情報発信をできるようになりました。
実際にネット上をちょっと追いかけるだけで、膨大な数のメディアに出会います。
また、企業だけでなく個人もブログにfacebook、twitterといったツールで情報発信ができるようになりました。
その結果、とんでもない量の情報がウェブ空間に溢れるようになり、僕たちは情報の価値がタダになったかのように錯覚しています。
しかし、当然タダに同然で巷に溢れる情報のほとんどは役に立たないものや、個人が妄想で書いたデマのようなものばかり。
まさに安かろう悪かろうのコンテンツです。
そんな中にも一定の価値を帯びた情報っていうのは存在していて、それはお金を払わなければ手に入らない。
情報感度の高い人から順番に、お金はかかるけれどきちんとした価値があるという情報を仕入れにいくようになる。
そうするとやがてきちんと情報には一定の価値が認められ、(それがお金とは限りませんが)人々が情報に対して適切な対価を払うようになる。
ニコニコ動画のブロマガやメールマガジン、有料サロンなどのビジネスモデルが出てきたことや、ニューズピックスが月額会員の有料記事というモデルを少しずつ手がけていることからも、徐々にそっち方面にシフトしつつあるように思います。
今はネットで検索すればマンガのプロットだけ全てネタバレしているサイトがあって情報は得られますが、僕たちはやっぱりマンガを買うし、エロ動画だって無料で断片的なものは見ることができても、有料できちんとしたものを全く買わないようにはなりません(笑)
たぶん、IT革命と言われて以降今まで情報に対して僕たちがお金を払わなかったのは、情報に価値を見出していないからではなく、コンテンツを配布するチャンネルの進化のスピードに、お金を支払うシステムの進化が追いついていなかったからだと思うのです。
クレジットカードを登録しておけばワンクリックで買い物ができる、スマホの料金支払いと一緒に購入した代金が支払える、コンビニに行けばいつでもウェブで使うお金をチャージできる。
そういう設備が、この数年で急激に整ってきました。
たぶんビットコインもその延長になるのかなあと思います。
(ビットコインの場合はリアルからウェブへではなく、ウェブからリアルへの方が課題ですが)
コンテンツを届けるチャンネルの進化に完全に支払いのシステムが追いついたら、僕たちは本当に価値を認めるコンテンツは当たり前のようにお金を払うようになると思います。
今情報がタダ同然で溢れているのは、その過渡期にいるからなんじゃないかというのが僕の見立てです。
あくまで何の根拠もないことをグタグタ並べただけですので、細かなツッコミはしないで下さい、、
だって「薄口」コラムですから(笑)
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