新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



「名付け」で読み解くゼロ年代〜世界にひとつだけの花から始まるオンリーワンを探す人たち〜

久しぶりにツイッターでブログを書いてみようと思います。
使う媒体によって紡ぐ文体が変わるのではないかというのが兼ねてからの僕の持論です。
例えばパソコンで書く文章とスマホで書く文章とでは、見える範囲と読むのに快適な文章量も異なります。
であれば、同じ人間でも生み出す文は違うはず。

同様に、様々な制約の下で文章を書けば否応無しに自分の思考や表現は、そのツールの制約を受けます。
例えばTwitterであれば、最大で140字前後の思考になる。
こういう制約の下で何かを生み出そうとすることで、普段とは違うニュアンスが生まれるのではないかと思うのです。

 

さて、前置きは早々にエントリの本題に入ろうと思います。
僕にとってゼロ年代分析が1つのテーマなのですが、その中でも時代を象徴しているなと思うものがあります。
それは、03年に発売された大ヒットソング「世界にひとつだけの花」です。
「No.1にならなくてもいい元々特別なオンリー1」

僕はこの歌詞が時代を象徴していると思っています。
オンリー1とは、「自分らしさ」を認めて欲しいという潜在意識の表れのように思うのです。
社会を構成する「人」としてではなく、固有名詞としての「僕」を社会を社会に受け入れて欲しい。
そんな競争に疲れた現代人の心境がここには表れます。

こうした「世界でただ1つの自分」問題は、漫画の世界でも多く扱われていました。
とりわけ僕が面白いなと思ったのは、ジャンプ漫画において「名付け」をテーマにしたエピソードが数多く登場したことです。
世間に除け者にされてきた存在が名前を得る。
そんなテーマがヒット作に多く見られます。

 

例えばワンピースのチョッパーのエピソード。
青鼻ということで除け者にされてきたチョッパーは、ヒトヒトの実を食べることで人間に近づき、それ故にトナカイの群れからは完全に孤立し、人には怪物扱いをされるというように、完全に孤立した存在でした。

そんなチョッパーを救ったのが、1人の医者。
Dr.ヒルルクという存在です。
彼は、怪我をしたチョッパーを家に連れて帰り、1つの確かな存在として接します。
そして、ちょっとしたケンカの仲直りの印に、トレードマークの帽子を渡すのと同時に「チョッパー」という「名」を授けます。

トニートニー・チョッパーという名前をもらうことで、チョッパーとヒルルクの絆は決定的なものになりました。
ここには名前をもらうことで存在を他者に認められるということが描かれています。
同じモチーフが同時期に人気を博したナルトでも見られます。

 

漫画「NARUTO」の主人公であるうずまきナルトには、かつて里を崩壊させかけた魔獣、九尾が封印されていました。
そのためナルトは、里の者たちから「九尾のガキ」として冷たい視線にさらされる幼少期を送りました。
そんなナルトに転機が訪れます。
そのきっかけが忍術学校の教師イルカ先生。

当時ナルトの先生であったイルカは、ナルトのことを「九尾のガキ」ではなくナルトという1人の忍びとして初めて認めてくれた人でした。
イルカ先生に認められることでナルトは忍びになり、やがて世界を救う主人公へと成長していきます。
ナルトという存在を認めるイルカの存在が、主人公ナルトを作ったと言えます。

 

ハンターハンターでも似たテーマが登場します。
レイザーとナニカというキャラクターの存在です。
不遇な星の元に生まれたレイザーは、「ソレ」や「おまえ」と呼ばれて育ってきました。
そんなレイザーを初めて名前で呼んだ、つまり1人の人として接したのが主人公ゴンの父であるジンでした。

レイザーは自分の名前を呼んでくれる存在に出会えたことで、初めて自分の居場所をみつけることができました。
また、ナニカというキャラクターも、家族には煙たがられる中で、兄のキルアだけが「ナニカ」と名付けて存在を認めることで、結果的に居場所を手に入れます。
以上がゼロ年代のマンガです。

 

名前を得ることで自分を見つける。
先にあげた作品に感じるのはこうしたメッセージです。
ここには有名どころを3つあげましたが、総じて名前をテーマにした作品が多かった気がします。

暗殺教室の作者松井優征先生の前作「脳噛ネウロ」に出てくる強盗Xi(サイ)は自らが何かを探し、武装錬金の中にでてきたパピヨンだって、自分とは何か、自分の名前を呼んでくれる人を探していました。
少し経路が違いますが、デスノートも、相手の「名前」を知ろうとする話。

僕はゼロ年代後半〜10年代前半の作品の特徴として、「壁の外の世界」があると思っているのですが、その前の時代の特徴がまさに、「名前を求める」というテーマであるように思います。
成長が停滞してオンリーワンの自分を探すようになった。
そんな人々の願いが「名付け」ではないかと思うのです。

 

アイキャッチデスノート

 

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