新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



2009年京都産業大学一般前期「大和物語」現代語訳

赤本に全訳が載っていないので、全訳を作ってみました。
内容の背景を捉えることを第一目標としているので、直訳とは若干異なるところがありますが、ご了承下さい。
(とくに敬語に関しては、話の筋を理解しやすくするためにあえて無視している箇所が多くあります)
順次赤本に全訳が載っていない古典の文章の訳をアップしていこうと思います。

好きな文章なので、若干意訳がきつくなってしまっていますが、その点はご了承下さい。

 

 むかし、奈良の帝にお仕えする采女がいた。顔立ちが非常に清らかで、人びとは求婚し、中には殿上人までもが求婚をしたのだけれど、この采女は結婚することはなかった。采女が誰とも結婚するそぶりを見せないのは、帝を何よりも愛し、素晴らしいものであると思っているからであった。あるとき帝が、この采女を召した。しかしながら、その後は再び召されることもなくなってしまったため、この采女はとてもつらさを感じていた。昼も夜も帝のことばかりが心にかかって、恋しく、だからこそ一層つらく思っていた。一方で帝は、一度は召し迎えたものの、そのときに采女のことを特に何とも思ってはいらっしゃらなかった。(一度呼ばれたのにその後声をかけてもらえもせずいた采女は気まずさを感じつつも、仕事で帝に仕えているという立場上)そうとはいえ日頃から帝にお会いしなければならなかった。采女は(帝に選ばれなかった身でにもかかわらず、帝の前に姿を見せるなんて)やはりこのまま生きていることはできまいと思い、夜、密かに屋敷を出て、猿沢の池で身投げしてしまった。このように身投げをしたことも、帝はお知りになることがなかった。ある者が帝への用事のついでに、この采女が亡くなったことを伝えると、帝はたいそう気の毒に思いなさって、この池の辺りに大所帯でやって来て、采女を供養すべく、人びとに歌を詠ませなさった。
その時、柿本人麻呂
猿沢の池に漂う玉藻を見ると愛するあなたの寝くたれ髪に想いが重なり悲しさばかりが募ります。
と詠んだ時に、帝は
猿沢の池もなんと冷たい(冷淡)なものだ。私の愛する者が水中を漂う玉藻のように水の中に身を投げたのならば、池の水を干からびさせてくれればよかったのに。そうすれば彼女が水に溺れて死んでしまうことも無かったのだから。
とお詠みになった。さて、その後帝はこの池に墓を立てさせなさって、お帰りになったのです。

 

 

伊勢物語・大和物語 (新明解古典シリーズ (3))

伊勢物語・大和物語 (新明解古典シリーズ (3))