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新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



2017年京都産業大学一般入試「今昔物語集」現代語訳

赤本古文を訳してみた、

今年度入試で出題された、古文の現代語訳速報です。
仕事の合間に急いで訳しているので、細かな違い(時に大きな読み間違えがあるかもしれません..)はご了承下さい。
また、あくまで話の筋を追うことを第一に訳しています。
そのため、文法事項や敬語はあえて無視しているところがあります。
随時アップしていく予定ですので、よかったらご参照下さい。
問.次の文章は『今昔物語集』に収められている話である。中将は清水寺で、若く美しい女性と出会う。いかにも身分の高い良家の娘がお忍びで来ている風なので、従者に後を付けさせると、家は市中ではなく山里にあった。訪れてみると、堅固な土塁と堀がめぐらされていたが、室内の調度は由緒ありげで、清らかに住みなしている。中将は女にひかれ、やがて二人は恋仲になり末永い愛を誓い合う。読んで、後の問いに答えよ。


そうしている間に、中将はここ数日抱いていた気持ちをこめて、末永い愛を誓って寝ていると、この女はたいそう思い悩んだ様子で、こっそりと泣いているように見えた。中将は不審に思って、「どうしてそのように思い悩んだ様子でいるのか」と尋ねた。女は、「ただしみじみとしているだけでございます。」と返したが、中将はその言葉をいっそうあやしく感じた。「今はお互いこのような関係になったのだから、今更何事も隠す必要はありません。何を思っておられるのですか。これほどまでに尋常ではない悩みようではないですか…」と無理に中将が聞いたところ、女は答えた。「私もあなたに言いたくないわけではないのですが、あなたに言うのがとてもつらいことですので。」泣きながらこう答えた女に中将は「とにかくお言いなさい。それを聞くことで私が死ななければならないとでもいうのでしょうか。」と言うと、女は「本当にあなたに隠していいことではありません。」「私は京都にある何々という人の娘です。両親が死んでしまったので、一人で暮らしていたのを、私が今住んでいるこの家の主は、乞食からたいそう裕福になって、ここに長年住んでいるようなのですが、私が京都にいたのをさらってきてここで育てたのです。時々私を着飾らせて清水に参拝をさせるのでございます。そうして同じく参拝に来ていた男が私に声をかけて来ると、あなたがここにいらっしゃったのと同じように、ここにおびき寄せろというのです。そして、寝ている隙に天上から矛を下ろしてくるので、それを私がおびき寄せた男の胸に刺して殺させて、その着物を剥ぎ取り、さらにはお供の人びとを堀の外にある家でみな殺しにして、その着物を剥ぎ、乗り物まで奪わせます。私は今までにもう、このようなことを二回も行ってきました。これから先も、主人の命令に従って、このようなことをさせられ続けるのでしょう。こうした事情があるからこそ、今回は私があなたの代わりに矛にさされて死のうと思っていたのです。どうかあなたはすぐにお逃げ下さい。お供の人はもうすでに殺されていることでしょう。ただただ、あなたにもう会えないことだけが悲しいのです。」と言い、流した涙は留まることがなかった。
中将はこれを聞くと、何も考えられなくなってしまった。なんとか気持ちを抑えて「本当に驚いたことだなあ。あなたが私に代わって死のうという気持ちは、めったに無いほどにうれしいものなのですが、そんなあなたを見捨てて一人逃げるなどというのは悲しいことです。それならば一緒に逃げましょう。」と言う。女はこれを聞いて「何度もそのことは考えましたが、矛に手ごたえがなければ、きっと急いで天井裏から降りてきて、二人がいないことを確認したら、必ず追いかけてきて二人とも殺そうとするでしょう。ただあなた一人で生き延びて、私が死んだ後の弔いをして下さい。これよりあとも、どうして私は罪を重ねていいことがありましょうか。」と言った。中将が「あなたが私に代わって死んだとなれば、どうして功徳を積んで恩に報いないことなどございましょう。それにしても、どうやって逃げればよいだろう。」と女に返すと、女は「堀の橋はあなたが先ほど渡ってきた後、すぐに引き上げられてしまっていることでしょう。だから、向こうにある遣戸から出て、堀のむこうにある狭い岸を渡って下さい。そこの築垣(塀)に小さな水門があります。そこからなんとか這い出して出て行ってください。すでにその時刻に近づきました。矛が下りてきたら、私が自らの胸にさして、刺されて死のうと思います。」と言った。そう言っているうちに、奥のほうから人が来る音がしたので、恐ろしいというのさえ言葉に足りないほどだ。
中将は泣く泣く立って、衣ひとつだけを着て、女が密かに教えてくれた遣戸を出て、岸を渡り、水門から命からがら這い出した。

 

 

今昔物語集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)

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