新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



2017年佛教大学一般入試A日程2/2「大和物語」現代語訳

今年度入試で出題された、古文の現代語訳速報です。
仕事の合間に急いで訳しているので、細かな違い(時に大きな読み間違えがあるかもしれません..)はご了承下さい。
また、あくまで話の筋を追うことを第一に訳しています。
そのため、文法事項や敬語はあえて無視しているところがあります。
随時アップしていく予定ですので、よかったらご参照下さい。

問.次の文章を読んで、後の問に答えよ。

貞峯の少将は旅の道中で、五条あたりについたとき、ひどい雨に見舞われたため、近くにある荒れた門のところに立ち隠れて、中を覗いたところ、五間ばかりの檜の皮で覆われた屋根の下に、土蔵はあるけれど、特別に人などがいる様子ではなかった。中に入ってみると、階段を覆う屋根の間に、たいそう趣深い梅が咲いていた。鶯も鳴いている。不意に、人がいるとも思えないような御簾の内側から、薄色の衣の上に濃い衣を着て、背丈・風貌などが非常に良い人で、髪の毛の長さが背丈ほどになるかと見える人が、
よもぎ生いて荒れたる宿をうぐひすの人来と鳴くやたれとか待たむ
(蓬の葉が咲くくらいに荒れている宿に「人が来る」と鳴いているなあ。しかし誰が来るのを期待して待っていればよいのでしょう。)
などと独り言のように言った。少将はこれを聞いて、
 来たれどもいひしなれねばうぐひすの君に告げよと教へてぞ鳴く
 (私はここに来たのだけれど、あいにく女性に声を掛けなれていないので、鶯は私に向かって、主人にやってきたことを告げなさいと鳴いてくれているのです。)
などと趣深い声で言った。女はこれに驚いて、「人がいないと思っていたのに、恥ずかしい姿を見られてしまったことだ」と思って、何も言わず黙ってしまった。男は縁に登って座った。「どうして何も言ってくれないのですか。雨が降ってきてしまったので、止むまでこうしていようかと思います。」と男が言えば、「雨漏りのせいで、大路よりも濡れてしまうかもしれません。ここは却って…」と女が答えた。時は一月の十日ほどのことだった。女は、御簾の内側から、男に向かって敷物を渡した。男はそれを引き寄せて座る。簾もこうもりに所々食われ、なくなってしまった箇所もあった。部屋の中の様子をみると、昔の様子が忍ばれるように、畳などはよかったのだけれど、みすぼらしくなってしまっていた。日もだんだんと暮れてきたので、男はそっと部屋に上がって、女が奥に入ってしまわないように引き止めた。女は悔しいと思ったけれど、それを制する術もなく、どうしようもなかった。雨は一晩中降り続き、翌朝になると少し空は晴れていた。男は女が室内に入っていこうとするのを、「ただ、このままで」と言って入れさせない。日が高くなると、この女の親は、少将たちにご馳走を用意する手段も持ち合わせていなかったため、少将の付き添いの小舎人童には塩を肴に酒を飲ませ、少将には広い庭に生えている菜を摘んで、蒸し物にして茶碗に盛って、端には梅の花の多く咲いた枝を折って添えて、その花びらにたいそうかわいらしい女の筆跡で、こう書いたそうだ。
君がため衣のすそをぬらしつつ春の野にいでつめる若菜ぞ
(あなたのために服の裾を濡らしながら、春の野に出て摘んできた若菜でございます)

 

 

大和物語(上) (講談社学術文庫)

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