僕は5年くらい前から、Twitterスラム論というのを持論として言っていました。
現実社会でのコミュニケーションには基本的にその人の信用が紐付いているため、社会的信用にあまりに開きがあるもの同士では、そもそも基本的にコミュニケーションは生まれない。
それに対してウェブの世界ではそうした信用を超えて(一方的に)どんな人物にもアクションをかけることができる。
また、ウェブ上のやりとりに関しては時間が多い方が圧倒的に優位であり、現実社会で信用が多い人ほど空き時間は少なく、社会的信用が低い人ほど空き時間は多い。
とすれば、ウェブ上におけるやりとりは社会的信用の少ない人にほど有利である。
僕はこれをもってネットが荒れると言いたいのではありません。
むしろこれ自体はネットの性質として面白い部分だというのが僕の意見です。
問題はこの先にあって、社会的に信用度が高い人間が、時間のある人ほど優位なシステムの中で、わざわざ対等に時間をとってくれるのかという部分です。
今のまま、社会的にそれほど信用が高くない人々が信用が高い人を批判し続けていれば、やがて彼らにとって利益よりも損害の方が大きくなり、そうなったときにそもそもウェブ上のコミュニケーションの場からいなくなってしまうのではないか。
そして、彼らは有料なり一定の社会的に信用が担保された人しか利用できないSNSのようなものを生み出し、自由闊達なやりとりはそこで行い、Twitterのような場には「宣伝」としての一方的な情報しか落とさなくなるだろう。
これが僕の考えるTwitterスラム論。
ここ数年で、サロンというサービスや、フェイスブックの友達しかコメントできないような機能が、出てきて、こちらにシフトしつつあるなあと思っていました。
しかし、ここ最近Twitterに新たな機能が追加されて、ちょっと違う方向に行くのではないかと思い始めています。
それが、不適切なつぶやきを報告できる機能です。
自分に対する不適切なつぶやき、あるいは他人に対する不適切なつぶやきを発見したら、それを運営側に報告して、ひどい場合にはアカウントを凍結できるという機能です。
詳しい仕組みは分かりませんが、どうやら多くの人から悪質と言われるつぶやきを連続する人や、悪質なコメントを連投する人に対してはたとえ1人からのクレームであっても場合によっては凍結される場合もあるのだそう。
僕はこの装置が非常に面白いなと思いました。
僕はこのサービスを、それまでは(少なくともTwitterには)存在しなかった、信用という尺度を導入したものと見ています。
たとえば、仮にひどい悪口を有名人に浴びせる人がいたとして、その有名人にフォロワーが大勢いれば、一斉に「不適切」と報告することができます。
フォロワーという信用力が、自分の自衛装置になる例です。
また或いは、たとえ自分にフォロワーがいなかったとしても、誹謗中傷をしてきた相手が日常的にそういった攻撃的なつぶやきをしていたとしたら、一発でブロックされるというのは、「信用力の低さ」が評価に反映されているという例でしょう。
新しく実装されたこの機能は、信用力が高い(=フォロワーが多い)人に武器を与え、信用力が低い(日頃から信用を失墜させるような発言が目立つ)人にはペナルティーが与えられるという点で、Twitterにそれまではなかった自浄作用を備えさせるように思います。
しかも、できたばかりのアカウントからのマンションは非表示にするという機能もあるので、これらを使えば凍結→新規アカウントの作成→嫌がらせということもできません。
もちろん、こうした機能のせいで、様々な立場を超えてコミュニケーションができると思っていた人にとっては、その魅力が失われたように見えるかもしれません。
実際に今回の追加機能は、信用力が大きい人に有利になるもので、「全てが平等である」ことをネット空間の良いところと考えていた人からすれば、納得のいかない制約かもしれません。
しかし、そうした自由な空間の行き着く先は閉鎖コミュニティとスラムという完全に断絶されたものだと思っていた僕にとっては、たとえある程度の制約があっても、部をわきまえた上でならリアルな空間とは違う人間関係を結べる可能性のあるネット空間の方が少なくとも僕はいいなと思います。
そんなわけで僕が言い続けてきたTwitterスラム論に関しては、意味がなくなったということで、Twitterが今後どういう方向に進んで行くのが、楽しみに見ていきたいと思います。
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