新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



ミスチル「未来」考察~ヒッチハイクする車のメタファーを探る~

ミスチルの桜井さんの書く歌詞について、その韻の踏み方の凄さに注目して語られる記事をよく見かけます。
「ダーリン ダーリン」「半信半疑」「カレンダーに」(しるし)、「最高のGIFTを」「渡すとき時ふと」「胸に聞くと」(GIFT)をはじめ、確かに面白いなという言い回しがたくさんあり、実際に僕も旋律と意味と文字面の3方向からしっくりくる歌詞だと思いますが、そういったテクニック以上にメッセージ性が凄いと思うことが多くあります。
特に『未来』という曲では、この事を強く感じました。

僕は最初に買ったCDはポルノグラフィティの『ハネウマライダー』でした。
中学3年生のときにTVのライブを見て、カッコいいと思ったのがきっかけで、そこから音楽を聴くようになりました。
当時は単純にカッコいいと思っていた『ハネウマライダー』ですが、20代後半に差し掛かったあたりで聞きなおして、改めて歌詞の内容に気付いてすきになるという経験をしました。
こんな風に、歌の意味が理解できるようになって改めて曲が好きになったという経験は誰にでもあるように思います。
僕にとってミスチルの『未来』も同じ感覚でした。

僕はこの『未来』という曲を昔は単純に女の人と出会って分かれるという曲だと思っていました。
しかし、改めて聴いてみると、この曲は桜井さんが自分の人生を振り返った歌、というかアーティストを目指す男の足跡を綴ったものではないかと思うようになったのです。
ということで、「夢を追いかける男の気持ちを描いた曲」という視点から、『未来』について考察していきたいと思います(※あくまで僕の「読み方」なので、これが正しいと思っているわけでは御座いません)

この曲を聴くと、どうしても2番の「女」が印象に残りすぎて恋愛の曲のように思ってしまうのですが、改めて歌詞をみてみると、驚くほど「恋愛」的な描写が少ないことに気がつきます。
この歌を、整合性をもって理解しようとすると、「夢を持った男の生き様」として捉えたほうがいいと思うのです。
〈名前もない路上でヒッチハイクしている 膝を抱えて待ってる〉から始まるAメロには、当時ミュージシャンになろうと思った少年の桜井さんが投影されています。
〈名前もない路上〉というのは成功モデルが分からない夢のメタファー。
例えば学校の先生であったら大学に行って教員免許をとってといったようにはっきりとした成り方=道がありますが、ミュージシャンにはそんなものはありません。
そしてこの歌の主人公はそんな「路上」でヒッチハイクしながら車を待っているわけです。
車はそのまま「チャンス」のメタファーと考えるのが妥当です。

Aメロの冒頭で主人公の状態が述べられたあと、状況の説明が続きます。
主人公が〈ヒッチハイク〉している場所は〈荒れ果てて〉いて、〈誰も通らない〉ところだそう。
2番目のAメロに入ると今度の内面に目が向かいます。

〈進入禁止だってあらゆるもの拒絶して追い払ったのは僕だから 誰も迎えにこないちゃんと分かってるって だけどもう少し待っていたい〉
〈進入禁止〉といって主人公が〈追い払った〉のは周囲の「こうした方がいい」というアドバイスかと思います。
周囲の人がいろいろなアドバイスをくれたけれど自分を曲げたくないからそれらを拒んだ。
当然周りの人がもたらしてくれたかもしれないチャンスを自ら手放したわけなので、そんな所に〈車(チャンス)〉が来ないことなんて本人は十分に分かっているのですが、それでも自分の才能を信じたい。
〈だけどもう少し待っていたい〉にはそんな心情が投影されているように思います。

Bメロの〈生きてる理由なんて~〉と始まる部分には、自分のやり方を貫こうとしたけれど上手くいかない時に感じた心情が描かれています。
このままやったって結果が出ないのなら生きている意味がない。
そう思って漠然と毎日を過ごしているというのがここの場面でしょう。
そしてサビに入ります。

〈生まれたての僕らの前にはただ 果てしない未来があって〉
ここに描かれているのは夢をもって憧れていた幼少期の主人公の気持ちだと思います。
音楽の道を目指した時には絶対になってやると思っていた。
そんな夢に向かってひたむきに頑張っていたころを回想していると考えられます。
これに続くサビの歌詞では現在の自分の気持ちが描かれます。
〈そして今僕の目の前に横たわる先の知れた未来を信じたくなくて ~〉
絶対にミュージシャンになってやると思ってその道に入って、周りの助言も跳ね除けて自分のやり方を信じてきたのだけれど、その結果行き詰まりを感じて、それを受け入れたくて〈目を閉じて過ごしている〉というのがここの場面です。
2番になるとこんな主人公の下に「女」が現れます。
主人公が待っている「車」を「成功」のメタファーであるとすると、主人公を拾うこの「女」はチャンスを自分の前にもたらす「女神」の比喩のようなものになるのですが、どう考えても文字数が多くなりそうなので、後半は後日まとめようと思います。