メロスはどんな性格?学校の授業とは少し違う観点からメロスの人柄に探りを入れる!
国語の授業をしていると、時々学校の課題の相談をしてくる生徒さんがいます。
ディベートの仕方や作文の書き方などなど。
もちろんそういった質問は大歓迎ですし、何なら僕自身も考えることが好きななので、どんどん持ってきてほしいくらいなのですが、その中でもたまに、さすがにそれは難しいだろうという「難題」を見かけることがあります。
例えば小説を読んだ直後の授業で批評文について学び、その授業の課題で、「それでは前の授業でやった小説の批評文を書いてきて下さい」みたいなもの。
もちろん説明がされていればいいのですが、教科書に載っている「批評文の書き方」をノートに箇条書きしただけのものを以って実際にやってみようはさすがに可哀想だと思うんですよね(笑)
という訳でそういう課題が出た子には、実際に僕がその課題を解いてみて、どんな風にやればいいか伝えたりします。
最近そんな流れで、子供たちと「走れメロス」について話す機会がありました。
テーマは「メロスの性格はどんなものなのか、文章中の表現を根拠に考えよう」というもの。
自分で言うのも何ですが、非常に優秀な子たちなので、文中の表現から自分なりに性格を推測することはできていました。
ただ、それだけでは面白くないなと思い、メロスの走っていた体感速度と、実際の時速を比較してメロスの性格を考えるというちょっとシニカルな性格分析をしたら、意外とウケがよかったのでまとめておこうと思います。
少し前に、一般財団法人理数教育研究所が開催する「算数・数学の自由研究」作品コンクールに『メロスの全力を検証』という文章が出展されました。
その中で文中の表現から距離と時間を推定して、メロスの実際の速度を求めると言うことがされています。
(写真はねとらぼさんの記事http://nlab.itmedia.co.jp/nl/spv/1402/06/news071.htmlから引用しました)
これによると、メロスの最後の追い込み(一度挫折しそうになった後、自分を奮い立たせて頑張って走るシーン)のペースは時速5.3キロ。
グーグルマップの徒歩が約5キロ、マラソン選手の平均速度が約9キロである事を踏まえれば、最後のスパートですら全然「走って」いないんですよね(笑)
次に、メロスの心境的にはどれ位の速度で走っているつもりであったのかを、文中の表現から考えていきます。
後半の全力で走っているメロスを表す描写として「少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。」というものがあります。
地球の自転速度は赤道上で1674kmなので、太陽の速度もこれと同じと考えられます。
また、メロスの舞台はヨーロッパなので赤道よりも日が沈む速度は速いはず。
だから、少なくとも時速1674kmと仮定します。
そして、メロスはそれの10倍の速さで走ったと「感じて」いるわけです。
つまりメロスの心境的には時速16740kmで走っているつもりなわけです。
さて、数字が出揃ったのでここからメロスの性格を考えてみたいと思います。
メロスは王に向かって散々な啖呵をきった上で、最後は気力を振り絞って頑張ったかのように言っていますが、実際の速度は5キロちょい。
それを心境的には3000倍近くのものであると感じているわけです。
このことを踏まえれば、メロスは極端に自己肯定感が高い割に、パフォーマンスが低い男ということになってしまいます(笑)
だってほぼ「徒歩」を、「太陽よりも速い」と言っているわけですから。
また、文章の始めの方で「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。」と王に向かって言っているのに、途中山賊に襲われたとき、「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」と王の心をがっつり疑ってしまっています。
この辺も合わせて、メロスは「他人に厳しく、自分には甘い、底パフォーマンスの男」という判断をされても仕方がないのかなあと思ったりしてしまうわけです。
もちろん、小説の枝葉末節をついて屁理屈を言うのが無粋なことは百も承知です。
でも、「文中の表現からメロスの人柄を考えろ」というのなら、こういう意見が出てくることだって想定しなければならないと思うのです。
少なくとも、全員が全員、メロスを読んで「人を信じることが大切」だとか「最後まで諦めないことが大切だと思った」みたいな感想を持つ必要はありません。
1人くらい、「カッコつけてる割に全然速くないから、メロスは口だけの男だと思う」みたいな感想を持ったっていいと思うのです(笑)
というわけで、わざと皮肉めいた見方をしたメロスの性格についての考えてみました。