見せ方による価値の作り方の類型とその事例10選
価値の生み出し方には色々ありますが、僕は最近「見せ方」による価値の創出に注目しています。
希少性が高いから価値になる、ニーズがあるから価値になる、手間がかかっているから価値があるetc...
こういった価値と同時に、「見せ方が上手いから価値になる」というのがあると思うのです。
この話をする時、僕がいつも具体例として書くのがみうらじゅんさんの「地獄表」です。
こんな感じで1日のバスの本数があまりに少ないバスの時刻表のことを、バスを逃すと地獄をみるというところから「地獄表」と名付けて集めて(確か)本にしました。
もともと、「極端に本数の少ないバスの時刻表」には何の価値もありません。
しかし、「地獄表」というなるほどと思う名前をつけて、それに該当するものを集めることで、多くの人が興味を持つ(=価値のある)コンテンツにしてしまっているのです。
これが見せ方による価値の創出です。
価値の作り方①名付け型
見せ方による価値の創出には、大きく分けると①名付け型と②因数分解型と③再解釈型の3パターンがあります。
一つ目の名付け型は上に上げたみうらじゅんさんの「地獄表」のパターン。
もともとは何の価値も無いものなのに、名付けをすることによって魅力的なものとなります。
小池百合子さんが作ったクールビズという言葉もここに該当します。
それまでは「ネクタイをつけない」だけだった(だらしないとも思われる)見た目に、「クールビズ」と名付けることで、ポジティブなものとして社会に定着させました。
或いはハイボールもそうだと思います。
ウィスキーだと頼むのにハードルが高い人にも、ハイボールなら全く違う、気軽なイメージを与え、頼みやすくなっています。
こういうタイプが名付け型に該当します。
価値の作り方②因数分解型
二つ目の因数分解型は、既にある物を自分なりの味方で繋ぎ合わせることで新しいジャンルを作り出す方法です。
例えば、社会にab、bc、caという3つのコンテンツが存在していたとして、今の社会ではbに注目してカテゴリ化されている(上の例なら[abとbc]とcaというイメージ)ものを、bやcに注目して集めてみては?と提案することで新しいジャンルを生み出します。
これが因数分解型。
ここに該当する例としてはコンビニアイス評論家のアイスマン福留さんが分かりやすいと思います。
アイスマン福留さんはコンビニアイスを徹底的に食べ尽くし、コンビニアイス評論家というカテゴリにしました。
コンビニアイスという要素で社会を区切り、それを集めることで「コンビニアイス評論」というジャンルを作っているわけです。
こんな風に一つの要素(因数)に注目して数を集めることでジャンルとして確立するのがこの因数分解型です。
例えば、唐揚げアイドルの有野いくさん(「唐揚げ」というジャンルを作ろうとしている人としてしか知らないのでもしかしたらアイドルじゃないかもしれません)やモノマネメイクのざわちんさんなんかもここに該当します。
あとはTwitter界隈だと、日本にある面白い地名をつぶやくおもしろ地理さんやプラレールで本物の駅を再現した画像をアップしているプラレール宿の松岡さんなんかもそう。
こういう、要素を決めてひたすら集めている人がここに該当します。
価値の作り方③再解釈型
最後の再解釈型とは、既にあるものに違う意味性を与えることで価値にするパターンです。
このパターンでは、刻み海苔はさみのエピソードが有名です。
この刻み海苔はさみは、もともと少量の個人情報を含む文書を安全に捨てるための「手動シュレッダー」として売り出されていたのだそう。
しかし全く売れませんでした。
それを、細かく裁断できるという部分に注目して、今度は全く同じ商品を「刻み海苔専用はさみ」として売りだしました。
そうすると急に売れるようになったのです。
コンテンツそのものは全く変わっていないのに、用途(=解釈)が変わったことで全く違う商品として受け入れられています。
このように、消費者に対して違う解釈を見せるのがここに該当する価値のつけ方です。
最近だと前田裕二さんが代表を務めるShow roomというサービスがここに該当します。
Show roomのサービス自体は投げ銭型の動画視聴サービスで、それほど新しいものではありません。
しかし、前田さんは投げ銭サービスを「路上ライブでお金を渡す感覚をウェブ空間で再現した」と表現することで、
ややもすると配信者が視聴者にお金欲しさに媚を売るような印象を与えかねないサービスを、「路上ライブ」と表現することで、あくまで視聴者と演者の立ち位置が(イメージの上では)逆転してしまわないようになっています。
昔の例を挙げるならエジソンの蓄音機もそうです。
エジソンは元々蓄音機を「遺言を音声で残す装置」として発明しました。
優秀な広告のコピーなどもここに含まれます。
しかし全く売れず、後の人がこれを「音楽鑑賞器」として売り出すことで爆発的に広がったのだそう。
これが再解釈による価値のつけ方です。
今の社会で求められるのは見せ方で価値を生み出せる人
商品も情報も溢れている現代において、上に挙げたような言葉の力で価値を生み出せる能力に対する需要は絶対的に上がってくるのではないか。
数年前にそんなことを思って興味本位でストックしていたものが大分溜まってきたので、1度まとめてみました。
まだまだサンプル数も少なければ、体系化も不十分なので、今後も定期的にまとめてみたいと思います。
アイキャッチは僕が尊敬する前田裕二さんの「人生の勝算」