新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



「コンセプトの作り方」の身につけ方

ここ最近、僕の個人的な仕事でも、周りの人と話す中でも、「コンセプト」について考える機会が多くありました。

コンセプトを掘り下げる力ってどうやって身につけるのだろう?

そんなことを考えている中で、1つの切り口が見つかったきがするので、備忘録がてらまとめておきたいと思います。

 

コンセプトの探し方が分からない理由と「探し方」の身につけ方

僕はどんなことでも、何かを学ぶ際には、帰納的なアプローチと演繹的なアプローチの両方が大事だと思っています。

膨大な経験値からなんとなくこうやっねやればいいのかな?と正解を導いていくのが帰納的なアプローチ、こういう風にやればいいんだよという知識を教わって現実で試して見るのが演繹的なアプローチです。

もちろん人には向き不向きがあり、ごく稀に帰納的なアプローチが圧倒的に強い人や、演繹的なアプローチがやたら上手い人とかもいるのですが、基本的には殆どの人には帰納的なアプローチと演繹的なアプローチの行き来が非常に重要であると考えています。

コンセプトの見つけ方に関しても全く同じことが言えて、本来なら帰納と演繹を行き来することが身につける近道なのですが、そもそも「コンセプトを洗い出す」という行為そのものが目に見えないものであるが故に、それができる人たちは、ついつい演繹的なアプローチの説明ばかりになってしまう気がするのです。

だから教えられた側は、「なるほど!」と納得できるのだけれど、いざ自分でやろうと思っても上手くいかない...

こんな風になってしまう人が多いと思うのです。

ということで、今回のこのエントリでは、帰納的なコンセプトの学び方について考えてみたいと思います。

 

コンセプトづくりは他人のコンセプト収集から!

上にも書きましたが、帰納的な学びとは多くの具体例に触れる中で、一定の方向を学び取るというものです。

ある意味で具体例のコレクションをする行為と言えます。

自分がすごいなと思うコンセプトを集めて、「何がすごいと思ったのか?」を言語化しておく。

そういう知識をいくつも貯めることで、コンセプトの掘り出し方を探していくのが帰納的な学び方です。

具体例には何をすればいいのか?

まずは、徹底的に「これはすごい!」と思うコンセプトを集めてください。

 

コンセプトを集めるなんて難しいと思うかもしれませんが、世の中にはコンセプトがガンガンに表出した物事で溢れています。

広告コピーや映画の見出し、マンガの帯やテレビの告知なんてその典型。

そういったあらゆるコンテンツから、いいなと思うコンセプトを探していきます。

ここで重要なポイントは、ジャンルを絞らないことです。

(理由は後述)

帰納的な学習をといっておきながら説明が演繹というのも滑稽なので、今回は僕が実際に面白いなあと思ってメモにしていたもののコンセプトをいくつか紹介したいと思います。

 

5つの具体例からコンセプト「感」を掴む

【ケース1 パンテーン「世界一きれいな状態で花嫁になる」】

コンセプトの話になるときに、僕が真っ先に思い出すのがこの、パンテーンの広告です。

これはゼロ年代パンテーンが打ち出した広告のコンセプトです。

「女性にとって人生でもっとも特別な一日である結婚式に、最も美しい自分でありたい」というメッセージを元に打ち出されたのが、「14日間チャレンジ」というCMです。

パンテーンの強みは使うほどに髪に輝きが出てくること(らしいです)。

それを使って、結婚式のその日に1番美しい自分でありたいという風に打ち出したメッセージは本当に見事だと思います。

コンセプトは「一番大事な日に最も美しい自分でありたい」

コンテンツは「14日間チャレンジ」

 

【ケース2 AKBグループ「会いに行けるアイドル」】

中森明菜さん松田聖子さん篠原涼子さんetc...

それまで、アイドルというと手の届かない、文字通り「偶像」のような存在でした。

一方でファンの人たちは、アイドルに少しでも近づきたいというように思っています。

そんな所に秋元康さんが打ち出したのが、「会いに行けるアイドル」というコンセプトでした。

少しでも近づきたいというファンの気持ちにドンピシャで答えるこのコンセプトは(故に様々な問題も生じていますが)非常に分かりやすく、かつ強力なものであったように思います。

コンセプトは「会いに行けるアイドル」

コンテンツは「毎日上演する劇場&握手会や選挙等のファンとのインタラクティブ性」

 

【ケース3 立川談志「落語とは人間の業の肯定である」】

僕が尊敬する立川談志さんは、落語のことを「落語とは人間の業の肯定である」と言っていました。

生前のインタビューの中で、談志さんは「赤穂浪士がお国のために命をかける姿を描くのが歌舞伎や小説だとしたら、落語はそうはいっても家族や子供の事が頭に浮かんでビビって途中で投げ出した奴らが主人公の芸術だ」といったような事を言っています。

これって、ある意味のコンセプトだと思うのです。

実際に談志さんの落語はこの言葉に基づいて、主人公の弱さやダメさ加減を笑いにしながらも、「それでも生きられる世界」を演目を通して僕たちに伝えてくれます。

これも立派なコンセプトです。

コンセプトは「落語とは人間の業の肯定である」

コンテンツは「古典落語(はじめ談志さん及び談志一門の演目)」

 

【ケース4 暗殺教室「生徒は教師を殺して大人になる」】

ケース1〜3であげてきたように、コンセプトがわかりやすいものもありますが、作品になってくると少しこちらから掘り下げなければならないものも出てきます。

例えば、富野由悠季さんの『海のトリトン』なら「少年は挫折を知って大人になる」とか、高畑勲さんの『かぐや姫の物語』なら「姫の犯した罪と罰」とか。

この辺は岡田斗司夫さんが昔説明していたのでそちらを見てもらった方がいいと思うので、僕はもう少し分かりやすい『暗殺教室』を例にしたいと思います。

一見すると『暗殺教室』に描かれるのは子供達の成長する姿なのですが、もう少し引いてみると、そこには「師を超えるエピソード」が散りばめられています。

そこに登場する大人も子供も、時に悪役までもが、師を追い抜くエピソードを持っているのです(逆に悪役で負けていく者たちは、大体師に焦がれるが故に道を外したみたいなものが多いです)。

こうしたエピソードをまとめることができる言葉が、「師を超える物語」というもので、こういう全てに共通することがコンセプトだと思うのです。

作品や人の人生からコンセプトを抽出する場合は、その共通項や違和感を糸口にするのが有効です。

コンセプトは「生徒は師を超える」

コンテンツは「生徒たちやイリーナ先生、烏丸先生はじめ多くの大人たちの成長物語」

 

 

【ケース5 映画蝉しぐれ「待つことも恋でした」】

具体例なんて出したらキリがないのでこれを最後にしたいと思います。

最後は映画から。

映画はその性質上コンセプトが非常につかみやすかったりします。

その上、広報用のコピーが付いていることもあるので、その辺も手がかりに。

もちろんコンセプトの説明という観点から例示したい作品を出せと言われれば『フォレストガンプ』『ファイトクラブ』『ミュウツーの逆襲』『スラムドッグミリオネア』『きっと、上手くいく』etc...とキリがありません。

(映画系のコンセプトの抽出は、マンガ家の山田玲司先生のニコ生が群を抜いて上手いのでその辺を見ていただけたら...)

その中で一作品だけ紹介するならということで、藤沢周平原作の『蟬しぐれ』をあげました。

蟬しぐれは、お互いを好きていた幼馴染の2人が、周囲の環境のおかげでどんどん遠ざかり、苦労しつつも別々の「幸せ」を掴み取ってしまうという展開のお話。

そんな2人が数十年越しに、一夜だけ一緒になる機会があります。

2人は身分が違う上にそれぞれの立場もり、その後に結ばれることがないことも分かっている。

そういって諸々を全て承知した上で、一夜だけ共にします。

そして2人の人生がその後再び交わることは決してない。

すごーーーくざっくりいえば、そんな切ない物語なのですが、主題歌を歌った一青窈さんは、そんな2人の事をテーマに描いた「かざぐるま」という曲の中で「待つことも恋でした くるり かざぐるま」と歌いあげます。

僕はこの映画をこれ以上端的に表したものはないと思っています。

言われてみれば一言で全体が伝わる。

これがコンセプトだと思うのです。

コンセプトは「待つことも恋でした」

コンテンツは「映画そのもの」

 

コンセプト収集で感度を高めてテクニックにつながる

巷に溢れるテクニック本の多くでコンセプトを決めることが大切だと言われているのに、いざ決めようとしてもなかなかできない。

そんな風な人が増えてしまうのは、一言で言えば「その技を使う筋肉が備わっていない」からだと言うのがぼくの持論です。

バスケの初心者がいきなりダンクの技を教えてもらったところで真似できないし、幼少期のルフィが仮にギア3rdを覚えたとしても使うことはできません。

それと同じで、いくら頭で分かっていても、「そういうことか!」という経験値が無ければ、コンセプトの立て方という手法を使いこなすことはできないと思うのです。

僕はコンセプトの見つけ方という武器を使うには、ある程度こちら側にストックが必要だと思っています。

そのための方法が「他の人のコンセプト集め」で、その具体例は上に示した通りです。

僕がコンセプトを的確に掘り下げることができるかと言えば、決して上手い方ではありませんが(だからこそリアルタイムでコンセプトの発見に悩む仕事に追われているわけですが 笑)、少なくともそういう経験と、そのために集めているストック量には少しだけ自信があったりします。

自分のコンセプトを掘り下げる場合はそこまでいりませんが、他人のコンセプトを見つけるのには絶対的に脳内のサンプルが必要です。

コンセプトづくりに悩む人は是非試して見てほしいなと思います。

 

アイキャッチは僕が目標にしている鈴木敏夫さん。

こんな本を出すって知らなかった...

出た日に「読まねば」笑

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