新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



ことばへの感度を磨くということ

検閲が厳しかった明治期のエピソードである。ある演劇のセリフに「奥さん、一度だけ接吻させてください」というのがあった。検閲のため政府に提出したら接吻が社会に悪い影響を与えるということで削除された。
困るのはここからだ。昔から役所の仕事はルーズでいけない。接吻の部分だけが削除されていて、前後の文脈が無視されていたのだ。結果帰ってきたセリフは「奥さん、一度だけさせて下さい。」
杓子定規も考えものだ      (竹内政明「名文どろぼう」)

ついつい日常に起こる出来事を、何でもかんでも自分の仕事と関連付けて考えてしまう、「職業病」なんてことばがあります。
多分に漏れず、僕もその重症患者で、普段本を読んでいても、道を歩いていても、「これは国語的に面白いかも!」なんて思うと、ついついメモに控えておいたりします。
昔、付き合っていた彼女の言い間違えを「授業に使える!」と言いながら喜々とメモを取っていて大きく起源を損ねるなんてこともありました(笑)
そんな調子で使えそうなものは何でもかんでも「ネタ帳」に書き留めておくのですが、もちろんその中の大半が授業で使える代物ではありません。
冒頭に引用したのもその一つ。
さすがに繰り返す下ネタなんて、授業の中にはいれられません。
(美意識的にもそうですし、それ以前に僕の授業に馴染まない)
そういえば、知人と福井旅行をしていたとき、「パチンコBIG」という看板から「パ」を取るのでなくよりにもよって一つ加えた「パパチンコBIG」なんてのもありました(笑)
(こちらは一文字加えてとんでもないことになった例)
理由は多岐に渡りますが、僕のメモ帳には「面白いけど授業で使うものじゃない」というネタが、いくつも転がっています。
仕事では使えないけれど、日の目を見ないままなのも勿体無いというものばかりだったので、今回のタイミングでまとめて紹介してみようかと思います。

お笑いのネタ編

漫才師に落語家さんに劇作家さんetc…
僕はこの辺りの人たちを、「言葉選びのプロ」として定期的に追いかけています。
そんな中で出てきた国語のネタで使えそうで使えなかったものをいくつか紹介します。

1.「月とすっぽんぽん」(銀シャリさん)
銀シャリさんがM-1で優勝したときにも披露した、ことわざネタに登場したのがこちら。
ボケの鰻さんがことわざを覚えてきたといい、どんどん微妙に間違えていることわざを披露していきます。
この「月とすっぽんぽん」は一つ目の言い間違い。
「パチンコBIG」に「パ」の字を加えたのと同じように、事故が起こっています。
ちなみにムーディ勝山さんは、「パチンコのパの字をとってみたい」という「奥さん、させてください」みたいなネタをしていました。

2.「お前の炊いた豆」(銀シャリさん)
二つ目も銀シャリさんのネタから。
こちらは「料理のさしすせそ」のネタででてきたオチの手前のセリフです。
本来なら「お前のまいた種」のところを「ま」と「た」を入れ替えて、「お前の炊いた豆」としてしまうこのネタ。
健全な上に凝っているので使い勝手は良いと思っていたのですが、ついぞ使う機会はありませんでした(笑)
サンドウィッチマンさんの「コインケスギ」や、マンガ『銀魂』に出てきた「松平健の名字と名前を入れ替えると『けつだいらまん』になるアルよ」というヤツもここに該当します。

3.「エッチ、エロという番組がありまして」(ナイツさん)
こちらはナイツさんのキムタクが出てくる『HERO』というドラマを紹介する際に出てきたボケです。
『HERO』というタイトルを「H/ERO」と区切るというネタで、文節や単語の説明にいいかなと思う反面、やはり若干の下ネタなのでボツに。
同じパターンのネタとして、トロサーモンさんの『桃太郎』に出てくる「イヌサ、ルキジ」(「犬、猿、キジ」の読み間違え)などがあります。

4.「ビッグバーガーを1000個で」(サンドウィッチマンさん)
5.「シーチキン、歯肉炎、資産運用、死後硬直、宍戸錠」(トータルテンボスさん)
これらは単純に面白いけれど引用する場所が無かったネタです。
一つ目は「ビックバーガーをセットで」というのを店員さんが聞き間違えたというネタで登場したもの。
語感の近さに感動したことを覚えています。
そして5の方はトータルテンボスさんの『あるあるネタ』に出てきた掛け算九九4の段の読み間違えです。
本来は「四一が四、四二が八…」といくところを、「シーチキン、歯肉炎…」と言い間違えて続いていくこのネタ。
聞き間違え、言い間違えは使い勝手がいいのかと思っていたのですが、意外と使う引用の機会がありませんでした(笑)

6.「関口ギター教室」(ロバートさん)
次はロバートさんのネタからの引用です。
これは山本さん扮するギター少年が「関口、ギター教室」に来たつもりが実は「関、口ギター(くちギター)教室」だったという設定のネタです。
これは、「ここで、はきものを脱いでください。」と「ここでは、きものを脱いでください。」という読点の位置で脱ぐのが「着物」か「履物」かが変わるという話と同じパターンです。
これは良い引用として使えると思ったのですが、マニアックなためのボツに(笑)

本当はこの先に、コピーライターさんや作家さん、翻訳家さんの言葉の中から、メモしていたものを紹介しようと思っていたのですが、既に2000字を超えてしまったので、今回はここでおしまいにします。
(続きは機会があればまた書きたいと思います。)
書く事がないのでメモ帳を振り返っていたのに、思った以上に長くなってしまった…

 

アイキャッチは昨日に引き続き、竹内政明さんの本から。

 

夜更けにコラムを―「経済大乱」見聞記

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