新・薄口コラム(@Nuts_aki)

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Mr.Children「しるし」考察〜とんでもなく深い!桜井さんが込めた冒頭2行のインパクト

志田未来さんが主人公だったドラマ「14歳の母」の主題歌であったMr.Childrenの「しるし」という曲。

当時ボーカルの桜井さんが、「失恋の曲とも初恋の曲ともとれるような、色んな見え方のする曲にしました。」とインタビューで答えていたのを覚えています。
出た時からいい曲だなあと思っていたのですが、この前久しぶりに歌詞をみた時、改めていい曲と思ったので、紹介させて下さい。
 

しるし

1番のAメロの歌詞を見た瞬間、グッと引き込まれました。
-最初からこうなることが決まっていたみたいに 違うテンポで刻む鼓動を互いが聞いてる-
お互いの鼓動が聞こえる距離、つまり2人で肩をくっつけて座っている(或いは寝ている)くらいの近さです。
この辺は桜井さんの言うように、聞く側の「色んな捉え方」次第なのかなと思います。
青春ぽく捉えたいのなら、家の床に2人で肩をくっつけてテレビでも見てる情景を思い浮かべるだろうし、少しエッチに捉えたければベッドで添い寝してる情景を想像することもできます。
どういう状況かは聞き手しだいだけれど、そんな2人は「互いの鼓動を聞いてる」、つまりそれくらい静寂な時間で、何も会話を交わさなくても相手の事を考えている訳です。
とくに何をするわけでもなく、一緒にいて相手の事を考えているだけで幸せ。
そんな心情がここには描かれているように思います。
 
-どんな言葉を選んでもどこか嘘っぽいんだ 左脳に書いた手紙ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる-
歌詞はこう続きます。
前の歌詞を受けて、主人公の気持ちは「一緒にいるだけで幸せ」、そんな何とも形容し難い気持ちを相手に伝えたいという気持ちが描かれます。
直感や感情を司る右脳に対して、論理や理性を司るのが左脳。
そんな「左脳に書いた手紙」は、いろいろ理屈で気持ちを伝える言葉を考えたということ。
そしてそれを「ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる」わけです。
自分の気持ちをなんとか理屈の通った言葉で示そうとしたけれど、やっぱりどれもしっくりこない。
だからあれこれ考えて選んだ言葉も、ぐちゃぐちゃに丸めて捨ててしまうのです。
横に置くでも、考えたものをリセットするでもなく、「ぐちゃぐちゃに丸めて捨てる」という行為を選びます。
理屈や理性であれこれ考えるのはいいから、言葉を交わさずとも一緒にいるだけで心音が聞こえるほど心理的にも近づいた相手と、ただその状態を共有しておきたきというような主人公の気持ちが表されているように思います。
 
Mr.Childrenの「しるし」という曲は、とにかく終始こんな調子で続きます。
あえて抽象的に語られることで、聞き手がこの曲の歌詞にそった自分の経験を補完しながら頭の中に物語が構築されていく。
だからこそ、多くの人が共感できると言うのだろうと思います。
 
 
内容だけでなく、歌詞の構成もかなり桜井さん「らしさ」が出ているように思います。
昔テレビで桜井さんが対談した作詞家の人が「僕ら作詞を仕事にする人間なら、サビの初めのダーリンダーリンという言葉を思いついたらそれを繰り返して印象を強める。桜井さんはそこを<半信半疑>や<カレンダーに>といろいろな言葉に置き換えていて、それが印象的だ」というようなことを言っていました。
確かに、音の響きを揃えるのなら「ダーリンダーリン」と繰り返す方が手っ取り早いはず。
でもそこを「半信半疑」「カレンダーに」と違う言葉を選んできます。
しかもどちらもしっかりと韻を踏んでいる。
 
 
歌詞を書いたことのある人はみんな感じることだと思うのですが、普通こんな言葉選びできません。
歌詞として意味を通して、その上韻を踏む。
それを外来語→四字熟語→名詞+助詞っていう、全然畑の違うところから言葉を引っ張ってきて軽々とやってのけてしまう。
この辺に桜井さんの凄さを感じます。
そして、1番のAメロで左脳に書いた手紙をぐちゃぐちゃに丸めて捨てると言っているのに、しっかりと「左脳で書いた歌詞」で曲のサビを組み立ててるというシャレたところ。
「しるし」は、こういう細部まで面白いと思わせてくれる曲だと思います。
 
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しるし

しるし