新・薄口コラム(@Nuts_aki)

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素人がデザインについて文句を垂れることに一定の意義があると思うようになった昨今

「東京ブランド」のロゴ「& TOKYO」公開 五輪エンブレム問題を受けて発表も慎重に (ねとらぼ) - Yahoo!ニュース


東京オリンピックに向けて東京をPRするための宣伝用ロゴが話題になっています。
赤い円に囲まれた「&」の文字の後ろに「TOKYO」と書かれたシンプルなもの。
製作費用は1億3000万円だそう。
個人的にはランサーズやクラウドワークスといった、クラウドソーシングで頼めば、同じようなクオリティのロゴデザインが千円足らずでできてしまうのではと思ったりするのですが、値段に以上にロゴデザインに対する評価が気になっていました。
「&TOKYO」というロゴに関して、案の上パクリ疑惑が浮かんでいます。
ネット上では、楽天のロゴに似ているというコメントや、フランスのめがね店のロゴをパクったのではないかという疑惑が多く流れています。

デザインに抽象性を持たせれば持たせるほど、それが他のデザインと似ている可能性が大きくなることは、ある程度仕方のないことのように思います。
人々に心地よく受け入れられる色の配置や形に一定の法則がある以上、観念的なデザインを作れば、共通性のあるロゴデザインを探しにいけばほとんどのデザインにおいて「パクリ」といわれても仕方のないデザインを見つけることができてしまいます。
加えて、デザイナーを初め、何かを創作する職業の人たちは、絶えず自分の分野の様々な作品を研究しています。
デザイナーであれば、流行のデザイン、最新の配色、前衛的な仕事を見て情報を集めることが不可欠です。
これはパクるためではなく、むしろ業界に関する勉強です。
そういった絶え間ない勉強と知識の集積の中から生み出されるものが、新たなデザインであるので、無意識のうちに印象に残ってしまったデザインに引きずられてしまうことはある程度仕方ないことだとも言えます。

僕はデザインに対してこうした考えを持っているため、素人である僕達が、東京五輪のデザインのように、手当たり次第にパクリだと非難することには否定的でした。
どういう過程を経てそのデザインになったのかという背景に目も向けず、表面的に非難することが、非常に不毛な各同に思えたからです。
ところが、今回の「&TOKYO」のロゴデザインに対する批判をみて、僕の考え方は少し変わりました。
素人の僕らがパクリだとわーわー騒ぐことには全く価値が無いという考えは相変わらずなのですが、創作者側にとって、「完成したデザインが素人によってチェックされる」という圧力は、長期的にみてプラスに働くのではないかと思うのです。
オリンピックのデザインにしろ、今回の「&TOKYO」にしろ、確かにパクリと言われても仕方がないかなというくらいに似ていました。
しかしそれは、(僕はパクったワケではないように思いますが)パクったことが問題なのではなく、作成後に似たロゴが既に商業利用されていないかのチェックをしなかったことが問題であるように思います。

「最低限のチェックをしなかったために、素人連中から思いもよらぬ批判が巻き起こった。」
「こうした事態を避けるために、今後は類似のデザインが無いか、或いは似ていたとしても作成にいたる思想が全く違うものであることをアピールしよう。」
常に批判されるリスクにさらされることで、こうしたチェックに対する意識は確実に向上します。
デザイナーの創作活動の足を引っ張るという意味で、半ばアラ探しのようなデザインに対する誹謗中傷はもちろんなくなるべきですが、半面で完成したデザインのチェックを怠ったたり、そのデザインに込められた意味や観念をしっかりと説明しなければ時として批判の対象になるリスクがあるのだというアラートとしては、一定の効果があるように思うのです。
立て続けのパクリ疑惑をみて、こうした作成者側の意識を高めることに繋がるという観点で、誹謗中傷にも一定の意義があるのかもしれないと、僕の考えが変わりました。


アイキャッチ宣伝会議10月号

宣伝会議2015年10月号

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