新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



日本企業は「革命」にめっぽう弱い

非常にざっくりとしたものですが、僕は革命という言葉を「新しいルールが始まること」と定義して使っています。
フランス革命やイギリスの名誉革命などは、王族が国民を支配するというルールから、市民の代表者が国を動かすというルールへの変更ですし、農業革命だったらそれまでは狩の獲物に合わせて移動していくという生活のルールが、定住して作物を育てるという生活のルールに変わるということなわけです。
トランプの大富豪の革命だって、数字が上がるほど強いというルールから、数字が小さくなるほど強いというルールへの変更です。
ここでは細かなことは抜きにして、「ルールの変更」という意味で革命という言葉を使っていきます。

革命が起こって新たなルールが動き始めると、それまでのストックはいったんゼロになります。
ここで言うストックとは、前のルールの中で使えた種々の戦略や経験値。
ルールが全く変わってしまうわけなので、それまでのルールで蓄えた戦略と経験値は意味を成しません。
革命が起こって新たなルールが動き始めたときに重要なのは、そのルールを正しく理解することと、新たなルールの中で経験値を早急に蓄えることです。

この前、シャープの買収のニュースを読んでいてふと、日本企業は構造的に革命に弱いのではないかということが浮かびました。
僕は、年功序列や終身雇用という制度はかなりよくできた仕組みだと思っています。
ただしそれは産業革命によってもたらされたルールの中においてです。
産業革命によってもたらされたルールの中での有効な戦略は分業と合理化です。
何かを生産する上で、労働力以外のエネルギーが使えるようになったことで、細かな作業毎に分業されていきます。
そして、労働力もある作業に特化することが求められるようになります。
そして上流から下流までを囲い込むことで、非常に生産性が高くなります。
こうした戦略が有効なルールの中では、終身雇用や年功序列という制度は非常に優秀な戦略なわけです。

最後まで雇用してくれると分かっていれば、手に職をつけなければと思うことも少なくなります。
部署の移動はあるものの、基本的に分業で会社のシステムは回ります。
そして、最後までその会社にいるわけなので、年齢を重ねるほどにその会社に「最適化」した労働力になっていく。
一度非常に優秀な戦略を確立してしまえば、そのルールが続く限りは優位な位置で戦うことができます。
日本企業はとんでもなく優秀な戦略を持っていたため、次の革命が起こるまでは非常に有利に物事を運ぶことができたわけです。


あるルールの中で有効な戦略を持っていたとしても、革命によってそのルールそのものが変わってしまえば、その戦略は全く役に立たなくなります。
むしろ、以前のルールの中で有利な戦略に特化しすぎている分、新しいルールに適応することは難しいことさえあるわけです。
ちょうど、大富豪で強いカードばかりを残しておいて、いざ攻めようと思ったときに革命を起こされた感じ。
前のルールのパターンを捨てられない分、革命後のルールでは遅れを取ることになります。

パソコンが普及したことによって、僕たちの社会はIT革命という現象に立ち会うことになりました。
 真っ只中にいる僕たちはその変化を当たり前のように受け入れていますが、引いた視点で見れば、これは紛れもなく「革命」と呼べるでしょう。
すなわち、ルールが大きく変わる瞬間です。
ある日目が覚めたらルールが変わっているなんてことはないので、気づきづらいですが、十年スパンで見れば、確実に社会のルールは変わってきています。
ルールが変わる中で1番やってはいけないことが、前の戦略にすがること。

チームラボの猪子寿之さんが昔、農業革命前後の世代間ギャップを「俺らは稲作ちょーやばいって思ってるのに、上の世代は『そんなことより(狩りのために)肩の筋肉つけろ』とか言ってくる」と表現していました。
新しいルールに変わって、瞬発的にそれまでのルールで有効であった戦略をすてられるか否かに、年齢は関係ありませんが、前のルールの中で特化して、かつその戦略が有利にゲームを進められていたのならその分だけ、それを捨てることに対する抵抗は大きくなるはずです。
日本の企業はまさにここで悩んでいるというのが僕の見方。
よくできた戦略であった分、その戦略を捨てることができない。
しかも日本の場合、社会システム単位で前のルールに特化した戦略を構築してしまったため(だからこそ、戦後のめざましい発展があったわけですが)、それを崩して新たな戦略にシフトするのは容易ではないはずです。

革命が起こってルールが変わりつつあるのに、前のルールの中で非常に優秀な戦略を持っていたが故に新たなルールの中で戦うための戦略に切り替えることができない。
経済のニュースを見て、名だたる日本の大企業の経営不振の記事が目に入る度に、そんな風に思います。

アイキャッチ川上量生さんがジブリ鈴木敏夫さんに教えるという想定で書いた本