新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



クラウドファンディングにおける出資の集まるリターンを考える

最近僕の中で、クラウドファンディングがアツイです。

資金集めをしている案件を見ていると、なるほどというアイデアがゴロゴロしているからです。
しかし、そこに出ている案件以上に僕が面白いと思うのは、資金の集め方です。
クラウドファンディングが始まったばかりのころは、何かを作りたいという人がいて、その見返りはできたサービスの一部みたいな物が多かったのですが、最近になって、その「お返し」のあり方が多様化してきました。
僕がうまいなあと思った案件の一つが、女性用下着の開発資金の調達です。
こちらは、女性用の下着やボディアクセサリーを販売する会社の立ち上げ資金を募る案件でした。
で、そのパトロンになった人への報酬が秀逸です。
もちろん、実際にブランドを立ち上げて、その商品をお礼にプレゼントというものもあったのですが、それよりも目を引いたのは、できたブランドの下着を着たモデルの宣材用イメージ画像をROMに焼いたものがお礼の品としてあった点です。
下着ブランドのお礼の品がそこの商品であるだけでは、お金を出してくれるのはそのブランドに興味のある女性だけになってしまいます。
しかし、その下着をつけたモデルの画像をお礼の品にした瞬間、そのROM目当ての男性からの出資も見込めるようになる。
このブランドの下着は、ボンテージ調でそこそこ過激なものが多数あります。
それをネットで有名なモデルが着用したイメージ画像ならば、少し高くても欲しいという男性は多いはずです。
通常であれば、ここのブランドの商品が欲しい人からお金が集まり、それを元にブランドを立ち上げます。
しかしこの事例では、ブランドの商品には興味がないけれど、モデルのROMが欲しい人からお金を集め、女性向けブランドを立ち上げるという形になっています。
つまり、企業のサービスの受益者と、パトロンが全く被っていないわけです。
受益者とパトロンが被っていなくても良いという視点で行ったこの事例は、本当に面白いと思います。
 
 
従来のクラウドファンディングでは、受益者と出資者が重なっていることがほとんどでした。
その典型がNPOやボランティア。
その活動に共感した人が出資して、活動を応援する。
受益者はNPOやボランティア活動の対象になっている人に思うかもしれませんが、こうした活動に出資する人は、これらの活動を「応援する」という商品に出資していると僕は考えます。
あくまで、活動に対して賛同しているから行う出資なわけです。
これは新製品の開発のような案件に関しても同じです。
そこで提示されているサービスがいいなと思うから出資につながる。
資金を募る側の活動に共感したから出資するという形の案件を、出資者と企画者のベクトルが同じ方向を向いているという意味で、このパターンを仮にI型案件と呼ぶことにします。
 
これに対して先ほど紹介した下着ブランドの案件は、明らかに出資者の目的と企画者の目的が異なります。
出資者のうち、ROMを目当てに出資した人は、基本的にそこでできた下着やボディアクセサリーに興味はありません。
あくまで、モデルのイメージ画像に価値を見出して、その額を出資している。
それに対して企画者の目的はあくまでイメージ画像制作ではなく、ブランドの立ち上げです。
出資者と企画者の目的が同じものをI型案件と呼ぶのであれば、出資者と企画者の目的が異なるこのパターンの案件は、L型案件ということができるでしょう。
 
現在のクラウドファンディングの案件をI型、L型の2分類で見てみると、ほとんどがI型です。
特に、NPOやボランティアの活動なんかはそう。
もちろん共感を呼びやすい案件が多いとは思うので、I型で出資を募るのも有効な戦略だとは思うのですが、同時に、L型のアプローチも十分に可能性があるように思うのです。
例えばアフリカの子供達の教育支援をするNPOで、その渡航費を集めたいという場合に、現地での活動報告やお礼のメッセージなどがリターンとして設定するのがI型です。
でもこのお礼の部分を、出資者が単純に欲しいと思うものにしたらどうでしょう。
アフリカに行くなんて経験は、大抵の人がしたこともないと思います。
一方で、そこで支援をしようとしている人たちならば、渡航経験も豊富で、現地にも詳しいと思います。
そして、そうであるならば、免税店で売っているようなお土産ではなく、現地でしか手に入らないとっておきの品物を見つけることも不可能ではないはずです。
例えば僕は、中国人の友達が帰省する度に火鍋という辛い鍋の素を買って来てもらうのですが、これは彼の地元のお店の商品で、絶対に日本では手に入らない味付けです。
こういう現地でしか手に入らないものをリターンとして設定する。
現地に行き慣れているからこそ知っているとっておきの逸品を出資のリターンにすれば、それを目当てで(もちろんついでに活動も応援できるという気持ちも含めて)出資することもできるようになります。
これが僕の考える、出資者と企画者の目的が異なるL型のクラウドファンディング
 
もちろんNPOやボランティアの活動に限らず、L型クラウドファンディングはいくらでも可能性があると思います。
むしろビジネスの方があるかもしれません。
ゴーグルをかけると立体的に映像が映るVRのゲーム機開発への出資のリターンをグラビアアイドルを使ったVRのイメージ映像のサンプルにするとか。
僕が考えるとそっち方向しかアイデアが出てこないのが恐縮ですが、しっかり考えればアイデアはいくらでも出てくると思います。
 
という感じで、いろいろアイデアが膨らむため非常に面白く観察しているクラウドファンディング
L型案件の事例をもっと集めて、いずれ傾向なんかもまとめていきたいと思います。
 

 

入門クラウドファンディング スタートアップ、新規プロジェクト実現のための資金調達法

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