分からない人の9割がそもそも前提を理解していない
塾のコラムのために書いた文章ですが、やや厳しい言い方になってしまったので、自分のブログのエントリにしました。
数学の質問を受けていると、そもそも前提を理解できているのかな?と思うときがあります。
今回のテスト範囲で特にそれを感じるのが、高校1年生の「絶対値」の範囲です。
たとえば[|x+1|<4]とか[|x+2|>5]といった問題です。
僕はこのタイプの問題を持って来られたとき、必ず「絶対値」という言葉と「大なり/小なり」という言葉を使わずにこの式の意味を説明してくれといいます。
で、これがスムーズに説明できる人はちょっとした思い違いをしているだけ。
一方で、全く説明ができない場合は、この問題が分からないのではなく、絶対値が理解できていないことに原因がある事を伝えます。
そもそも絶対値とは何かといえば、直線上のある点から原点までの距離のこと。
つまり、上の[|x+1|<4]という問題を言葉で表すと、「(x+1)という値が、原点からの距離4以上離れていない範囲」ということになるのです。
原点からの距離が4以上離れていないとは即ち、-4から4までの間に収まるということです。
だから[|x+1|<4]は[-4<x+1<4]となるのです。
もちろん式を見た瞬間に、原点から4だけ離れた2点-4と4が浮かび、それよりも距離が近い範囲を頭の中で捉えられている人もいるかもしれません。
(それが無意識にできている人は恐らく理系が得意なはず!)
僕の経験則ですが、数学が得意な人はどんな内容に関わらず、言葉で理解するか図を頭に思い描くかのいずれかの方法で問題を理解しているように思います。
そして、言語で理解している人を文型脳、図や記号で理解している人のことを理系脳と呼ぶのだと思っています。
決して「数学ができる」から理系脳、「数学ができない」から文系脳ではないのです。
僕は文系理系の判別に関して、「数学ができるから理系、数学ができないから文系」という判断基準に、ずっと疑問を持っていました。
数学ができるか否かは、理系脳か文系脳かではなく、論理的思考ができるか否かの問題だと思っているからです。
論理的思考は文系脳、理系脳とはそもそも違う価値尺度です。
横軸に言語で物事を考える文系脳と図や記号で物事を考える理系脳があり、縦軸には論理的思考力の有無があるというのが僕の文系理系特性に関する考え方です。
これに従えば、①論理的な理系脳、②論理的な文系脳、③非論理的な文系脳、④非論理的な理系脳がいて、数学が得意なのは①か②の人だと思うのです。
ここを理解しないで、本当は理系脳(で論理的思考力がない)のが原因で数学が苦手なのに、それを「数学ができないから文系だ」なんて進路選択をすると、大きなミスになります。
そもそも論理的思考力がないのが原因で結果が出ていないのに、それを「自分には理系が向いていないのだ」なんて思って文系にいくと、今度は論理的思考力ばかりか、適正までない場所に飛び込むことになってしまうからです。
これはあくまで個人的な感想なのですが、私立文系のコースにいった人の中には、案外このパターンが多いように思います。
現象と原因の考察が一致していない。
まず自分が文系脳か理系脳か(言語で物事を考えるのが得意なのか図や記号で物事を考えるのが得意なのか)を知っておき、その上で自分の論理的思考力がどの程度のものかを知り、伸ばそうと努力することが大切であるように思います。