新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



テスト前日に確認したい「北の貧困/南の貧困」③「貨幣への阻害」はリア充に誘われたオタクを考えると分かり易い!?

「現代文の論説文って結局何なん?」

僕はこのように聞かれた時、「『それって本当に良かったの?』を問いかける学問だ」という話をよくします。

もちろん現代文を教えている同業者の方からすれば、「そんないい加減な...」と非難される(というか半ば呆れられる)こともある程度覚悟して、その上で直感的に子どもたちに伝えらるなら何と表すのだろうと考えた言葉が上記のものです。

近代に様々な進歩があり、私たちの生活は目に見えて豊かになりました。

だからこそ、その進歩が100%正しいと思っている。

でも、もしかしたらそれは先進国のごく一部の人にのみ当てはまるお話しで、場所が違ったら違う解釈が出てくるかもしれない。

場合によっては恩恵を受けていると思っている我々の生活にも、実は「歪み」が生じているんじゃないか。

そんな、「当たり前」に対する問いかけが、現代文で扱う文章が、読み手の僕たちに伝えようとしていることではないかと思うのです。

 

『南の貧困/北の貧困』で見田宗介さんが指摘しているのはまさにこの部分。

[1日1ドル以下の生活をしている人=貧困]という定義は、僕たちのように何を手に入れるにしてもお金で解決する生活をする人にとっては当然の考え方なのかもしれないけれど、「お金=生活手段」っていう全体がそもそも間違えじゃないの?という投げかけをしているのが、アメリカの先住民の話から始まる段落だと思うのです。

見田宗介さんはアメリカの先住民を例にとって、「彼らが住み、あるいは自由に移動していた自然の空間から切り離され、共同体を解体された時に、彼らは新しく不幸となり、貧困になった。」「貧困は、金銭を持たないことにあるのではない。金銭を必要とする生活の形式の中で、金銭を持たないことにある。」と述べています。

これをすごーく悪意のある例えにするなら以下の感じ。

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あるクラスではオタク気質の男の子が隅に集まって、アニメ談義に花を咲かせていた。

ある日、クラス皆んな仲良くしてほしいと本気で願う委員長がやってきて、「さあ、みんなで遊ぼう!」と男女入り混じるリア充の会話に彼らを招いてあげた。

当然オタク気質の男の子たちは会話に馴染めずモジモジしているだけ。

クラスの隅で仲間どうし慎ましくアニメ談義をしているときは幸せだったのに、リア充の中に入ったせいで、かえって息苦しさを感じるようになってしまった。

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この例えが適切だとは思っていませんが、「貨幣への阻害」を直感的に知ってもらうのなら、これが最も近いのではないでしょうか(笑)

「北」の人たちの価値尺度で「貧困」を決めつけ、そのに根付いた「南」の人たちの生活や地域性を無視した政策を押し付けてしまえば、良かれと思って行った政策も、彼らの立場からすればかえって生きづらくなる場合もあるよね。

これが、アメリカの先住民の例で述べられていることのように思います。

5段落目の「貨幣を媒介としてしか豊かさを手に入れることのできない生活の形式の中に人々が投げ込まれる時、つまり人々の生がその中に根を下ろしてきた自然を解体し、共同体を解体し、あるいは自然から引き離され、共同体から引き離される時、貨幣が人々と自然の果実や他者の仕事の成果とを媒介する唯一の方法となり、所得が人々の豊かさと貧困、幸福と不幸の尺度として立ち現れる。」という言葉は、おそらく前半部分で最も理解しづらい部分ではないかと思うのですが、上に挙げたオタクの例を踏まえて読んでいただけると、ほんの少しだけ理解しやすくなるのかなあと思います。

教室の隅でアニメ談義に花を咲かせている人たちにとって、リア充の人たちにとって「かわいそう」に見えるその行為も、実は充実していたりするんですよね。

それを自分たちの基準による「幸せ」を彼らにも与えようとするから、等の本人たちにとってはかえって苦しくなってしまう。

そんな可能性って考えたことがありますか?という強烈な批判が、5段落の言葉に現れています。

続く段落で見田宗介さんは、「ある人の幸せを全く違う人の幸せで測るのが間違えということは皆分かっているのに、ついついやってるよね」と言います。

そして、無意識に「やってしまっている」優しさに気づかないから政策として「方向を過つもの」になってしまう。

そんな、ある種痛一番突かれたくない部分を指摘して、次の段落に続きます。

 

本当は倍くらいまとめるつもりだったのですが、久しぶりすぎて長くなってしまいました。

続きは近日中に書きたいと思います。

 

アイキャッチリア充という「貨幣への阻害」に葛藤するイケメンオタクを描いた山田玲司先生の『Bバージン