新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



『天気の子』感想ー『天気の子』は『君の名は。』の彗星を主人公にした作品!?

昨日、ちょうどTL上に何度か『天気の子』について流れてきて、そう言えば見に行った感想をまとめていなかったことを思い出しました。

前作『君の名は。』と合わせていろいろ気になるところがあったので、このタイミングでまとめることにしました。

 

何重もの「結び」の構造になっている『君の名は。

天気の子に関しては、主人公たちの周辺にある小物(帆高がカップ麺の重しに使っている「ライ麦畑でつかまえて」とか、陽菜の首元の浮遊石を思わせるネックレスなど)や、何度か登場した天に逆らうモチーフなど、気になる部分はいくつもありましたが、僕が最もきになっているのは、前作『君の名は。』との関連でした。

評論家の岡田斗司夫さんが以前、自身の番組で『君の名は。』をとりあげたとき、『君の名は。』は何重にも「結び」が描かれた作品だと評していました。

確かに、『君の名は。』を表面的に見れば滝と三葉の2人が時空を超えて結ばれるお話みたいに見えますが、細かく見ていくと、その周辺にいくつもの「結び」が描かれています。

その一つが、村人を避難させるために三葉が父を説得する場面。

それまで三葉の声に一切聞く耳を持たなかった父が、「入れ替わり」を告白された瞬間に態度を一変させて、三葉(中身は滝)の行った通りの指示を出します。

この場面はさりげなく展開しているので見落としがちですが、時系列を考えれば、三葉(滝)の入れ替わりを知って話を信じたと考えなければ辻褄が合いません。

展開を時系列に並べて考えれば、父は入れ替わりを知って態度を変えたということになるわけですが、そうすると今度は「なぜ父は入れ替わりなんていう荒唐無稽な話を信じたのか?」という新たな疑問が浮かびます。

この答えのヒントはおばあちゃんが三葉の入れ替わりを見抜いた点にあります。

おばあちゃんは、三葉の中身が入れ替わっていることを見抜いた時、「私も同じ体験をしたことがある」「代々そうした家系」というようなことを言っています。

おばあちゃんの話が正しければ、当然三葉の母親も入れ替わったことがあると考えるのが妥当です。

では、その相手は誰なのでしょうか?

作中には登場しない三葉の母親ですが、その入れ替わりの相手が三葉の父であることは明らかです。

でなければあそこで父親が「入れ替わり」なんて話を信じる理由がなくなってしまうからです。

三葉の父は自分自身も入れ替わったことがあり、そのことを知っていたからこそ、三葉の言葉を信じたのだと思うのです。

とすると、ここに三葉と滝以外に、おばあちゃんとその相手との「結び」、そして直接は表現されていませんが、父と母の「結び」が描かれていることになります。

 

もう一つ、岡田斗司夫さんは『君の名は。』に関して、設定レベルの部分での大きな『結び』を指摘しています。

それは、彗星についての物語です。

設定では、糸守町にある湖は、何千年も前にティアマト彗星が地球に接近した際に分裂して落ちてきた隕石が原因とされています。

そして彗星は何千年という周期で地球に近づいてくる彗星です。

落ちた隕石を「片割れ」と考えると、数千年の周期でやってきたティアマト彗星は、数千年前に別れた片割れに会いに来たと見ることもできます。

つまり、隕石と彗星自体も巨大な「結び」の構造になっているわけです。

ずっと昔に離れ離れになってしまった相手に数千年の時を超えて会いに来た。

でも、その「結び」は人類にとって大きな災害をもたらすものである。

設定自体も巨大な「結び」となっているというのが岡田さんの指摘です。

 

僕はこの岡田さんの解釈を支持するとともに、実は新海監督が描きたかったのは、この彗星の結びの方だったのではないかと考えています。

きちんと売れることを意識したからこそ、中心には三葉と滝の恋愛を据えているけれど、本当に描きたかったのは、「愛するものが自分たちが結ばれることを願えば、それは周囲に多大な迷惑を与える」という部分だったのではないかと思うのです。

そして、それをこっそりとティアマト彗星というモチーフに忍ばせた。

これが僕の考える(あくまで個人的な)『君の名は。』の見方です。

 

『天気の子』はティアマト彗星をそのまま主人公に据えた作品!?

さて、そんな僕の『君の名は。』評ですが、こう考えると、『天気の子』には『君の名は。』と共通のモチーフが描かれていると見ることができます。

天気の子では、帆高と陽菜は東京中が永遠の雨に見舞われる事と引き換えに自分たちが結ばれることを選びます。

そして、そこにたどり着くまで周りの大人の幾重にも重なる大人の障害が立ちはだかる。

それだけでなく、それまで自分たちのことを大切にしてくれた人を何人も犠牲にします。

圭介は暴行で逮捕されたでしょうし、夏美も間違えなく免許剥奪です。

さらに、作中で助けたおばあさんも降り続く雨のせいで亡くなった夫との思い出の家を引っ越さねばなりません。

2人が結ばれるというただそれだけのために、とんでもない量の犠牲が払われるわけです。

それでも2人は、自分たちが結ばれることをえらんだ。

僕にはこれがちょうど、『君の名は。』におけるティアマト彗星で示されたモチーフに思えるのです。

これまでの新海さんの作品では、そのモチーフは怖くて

出会わせなかったり、間接的に災害という形で描いていました。

しかし、『天気の子』になって初めてそれを正面から描いた。

しかもそれをハッピーエンドに持っていた。

これが僕が『天気の子』を見たときの感想でした。

一見するととうやってもバットエンドになりそうなこのモチーフできちんとハッピーエンドに落としたという意味で、僕はこの作品が凄いなあと思っています。

 

時間がなくて中途半端になってしまいましたが、僕の感想はこんな感じ。

アイキャッチは天気の子

 

天気の子

天気の子