新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



進次郎文法とことばの妙

「今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思います。」

このフレーズを始め、「中身の無い」と批判されがちな小泉進次郎さん。

もちろん人の評価はそれぞれだと思いますし、実際に中身の無い発言も少なからずあるようには思いますが、一方で、彼の話す言葉の妙な説得力や、切り返しのうまさは凄いなあと思う事も多々あります。

今回のお話とは関係ありませんが、こちらの小泉進次郎さんのグロービスの「話し方」に関するスピーチは見事だと思います。

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そんな「進次郎文法」好きの僕のお気に入りは、先日国会で発言した「育休は休みではない」というもの。

前後の様々な文脈と合わせて、非常にいいなあと思いました。

そもそも僕は、小泉進次郎さんが育休を取得したことに大賛成です。

「中身がない」「客寄せパンダ(池上彰さんが選挙番組でこう表現)」なんて言われがちな小泉進次郎さんですが、裏を返せばそれだけの知名度があるということ。

そんな小泉さんが育休を取得するという行為は、自分の知名度を自覚しているからこそできる極めて優秀なイメージ戦略だと思いました。

 

僕はお金をかけたり法律を変えたりという「手間のかかる」やり方ではなく、既存のリソースを用いることで物事をうまく動かすみたいなやり方が好きだったりします。

例えば、2005年に小池都知事(当時の環境大臣)が提案したクールビズもそう。

暑がりの僕としてはなぜ28度なの?という不満もありました(実際にその温度に根拠はないそう...)が、クールビズという「名付け」一つで、お金をかけるでも法律を変えるでもなく環境への働きかけをしたという点では、非常に上手いやり方だったのではないかと思っています。

何よりネクタイ嫌いの僕としては、「ネクタイはいらない」という風潮を広めてくれたのが、非常にありがたいです(笑)

 

さて、そんな小泉さんの育休取得。

その効果についてタラタラ語るのは、僕の薄口コラムの本意ではありません。

僕が注目したいのは、「育休は休みではない」というこの言葉の部分。

僕は個人的に、「AはA'ではない」という進次郎さんのこの発言は、自身のそれまでの迷言への批判を踏まえた言い回しとしてあえて言ったものだろうと考えています。

これまで、何かを言っているようで実は何も言っていないという進次郎文法を度々指摘されてきた進次郎さん。

だからこそ、これまでの迷言を前フリに、今回の発言をしたのではないかというのが僕の読みだったりします。

こういう機転の利かせ方が、「育休は休みではない」発言に興味を持った大きな理由の一つです。

 

もう一つ、僕がこの発言が面白いと思ったのは、安倍さんの発言との関係です。

同時期に安倍さんは、「桜を見る会」の質問に対する返答で「募ってはいたが募集ではなかった」と発言しています。

こちらは進次郎さんの育休の名言とは違い、野党の追及を逃れるためのいわば迷言です(笑)

「育休は休みではない」

「募ってはいたが募集ではなかった」

構造的には非常に近いこの2つの発言が同時期に、真逆の印象を与えるものとして、同じ「国会」という場で発せられたことが、個人的に非常に面白さを感じたのです。

前者は言葉のあやを使って巧みに意図を伝える小洒落た言葉の使い方。

対して後者は言葉をぼかして自分の意図を誤魔化そうとする姑息な言葉の使い方。

これを以って安倍さんがどうという話をするつもりはありません。

ただ、言葉に対する向き合い方という点においてのみの僕の感想として、進次郎さんは言葉に対して紳士的なのに対して安倍さんは言葉に対して不誠実だなと印象を受けました。

(繰り返しますが、「国民に対して」ではありません。)

そんな比較も見られたという意味で個人的に胸アツだった小泉進次郎さんの今回の「育休は休みではない」発言。

思わぬところで出会った言葉の面白さでした。

 

微妙な意味の違いに関する面白さという点では、平手友梨奈さんの脱退について欅坂46のキャプテンの坂菅井友香さんが記者から「『卒業』と『脱退』の違いは何ですか?」と聞かれて困った表情を見せたときに、たまたま舞台で共演していたノンスタイル石田明さんが「辞書で調べたら出てくるんじゃないですか?」とボケで質問を晒していた所が印象的でした。

粋な言葉の使い方に関しては、辞書を引かず、相手の意図を汲んで楽しむのがいいのだろうなと思う反面、野暮な言葉の使い方は、辞書でキチッと定義づけするのが大事なんだろうなと思いました。

 

アイキャッチ中村雄二郎さんの「術語集」。

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