かしこいデモとストライキ〜仕組みを押さえ方とサードドアという考え方〜
連休中に何気なくSNSを見ていたら、安倍さん、麻生さんの家の近くでデモをしたというニュースが流れてきました。
僕はこれを見たとき、これを考えた人頭いいなと思いました。
いうまでもないかもしれませんが、ここで僕が感心したのはデモの内容や行動に起こしたという、政治的な部分ではありません。
僕が興味を持ったのは、あくまで戦略の部分。
「安倍さんや麻生さんの家の付近(閑静な高級住宅街)でデモをする」という、伝えたい相手が最も痛いであろう方法を考案し、ルールに則り実装したところが面白いなと思ったのです。
普通政治的なデモといえば、国会議事堂だったり、人目につくところであったりを狙います。
でも、正直な話、そこでデモをやられたとしても、受け手の側にそれほどダメージはありません。
しかし、自宅付近でやられれば別です。
当然政治家の人にも家族がいますし、まして安倍さんや麻生さんの家の近くは高級住宅街で、そんな所で大声を出されたら、周囲に住む人は迷惑に感じることでしょう。
確かに、国会議事堂の前でデモをすれば話題になりますが、家の近くでデモをした方が与える実害は比較になりません。
もちろんデモは事前にコースを警察に届けているはずなので合法。
合法的に最もプレッシャーをかける方法として、①高級住宅街にある、②対象者のプライベート空間でデモをするという方法は、何かを訴える手段として大変優れているように思ったわけです。
(繰り返しますがあくまで戦略に対する感想で、事象の是非は述べていません)
こういった、戦略的な上手さを感じる例はいくつもあります。
僕が好きなのは岡山県のバス会社が行った、「賃金を受け取らない」というストライキです。
普通ストライキといえば、主張を通すために労働者たちが団結して、仕事を休むなどの行動をすることで雇用主と交渉を行うというイメージです。
しかし、岡山県のバス会社であったこのストライキはバス自体は通常運転をして、料金はいただかないというものでした。
普通、ストライキといえば雇用主の懐を痛めるために、雇用主の売り上げの源泉である労働部分を断つという形で行います。
そのため、多くの場合消費者もその影響を被るわけです。
しかし、「バスの運賃をタダにする」というストライキは違います。
これにより雇用主がダメージを受けるのはその通りですが、消費者の側はむしろ得をします。
そのため話題性があるのはもちろん、消費者を味方につけることもできるわけです。
僕はこのふたつの例に同じ賢さを感じています。
「デモをするから国会前に行く」ではなく、「プライベート空間に影響を及ぼす」という対象者にとって最も痛い部分はどこかを考える。
「ストライキだからバスの運行を取りやめる」ではなく、「運賃を無料にすることで消費者を味方につける」という対象者だけを敵にする構造を作る。
もちろんどちらもキチンと与えられた権利にのっとって行われているので問題はありません。
デモやストライキの例なので自分の主張を押し通すためには手段を選ぶなみたいな話に聞こえるかもしれませんが、ポジティブな分野でもこうしたことは多分にあります。
例えばスピルバーグが映画監督になるきっかけになった方法や、ビルゲイツがマイクロソフトを作った秘話にも、似たような構造が見て取れます。
(詳しくは『サードドア』という本を読んでください)
彼らは真正面から戦うのではなく、少し斜めな方法で、でも理をつめていくと合理的な方法で成功への一歩を踏み出しています。
これは仕組みを押さえて相手に主張を伝えようとしたデモとストライキも同じです。
達成したい目標に対して、真正面から挑むのではなく、角度を変えて戦略を考えてみる。
こうした姿勢は、何かを達成したいときには少なからず必要だと思うのです。
『サードドア』という本では、真正面から多くの人たちと競い合って目的にたどり着く方法をファーストドア、人脈やコネを使って目的に裏道からたどり着くのがセカンドドア、そして思わぬ抜け道を探すのがサードドアといっています。
デモの話はまさにこのサードドアのやり方です。
物事を達成する手段としてのサードドア。
こうした視点を知っていることは非常に便利な気がしています。
アイキャッチはサードドア