もうすぐ待ちに待ったHUNTER×HUNTERの連載再開ということで、ここまでの展開を思い出すために単行本を読み返していました。
38巻にある旅団結成秘話の書き足しシーンでパクノダが自分の能力について制約と誓約を決める際に「この先ずっと一番大切な人に触れない」と決めるシーンで、漫画のページを透かして見ると裏面にあるクロロの後ろ姿がちょうどそのセリフの場面が完成するように仕掛けられているのを見た瞬間に僕はもう魅了されました。
そんなことから始まり、改めて読み返して今後の展開で気になっていたことをいくつか思い出したので、気になった点と今後の展開についての僕の予想を備忘録がてらまとめて行きたいと思います。
○王位継承編で気になっていること
ただでさえ難しい作品の中で過去一の人数が登場してとんでもないことになっている王位継承編ですが、細部まで作りこまれていてすごい読み応えです。
まず王位継承編で僕が気になっているのはマフィアの人たちが「均衡」を大事にしているという描写です。
誓約と制約だったり、欲望と共依存の等価交換だったり、「我々は何も拒まないだから奪うな」という流星街のメッセージだったり、何かとバランスに対する言及がよくあるこの作品。
個人的には冨樫さんという作家がそういう部分の整合性にすごくこだわる人であるように思っています。
そんなわけで「均衡」という言葉が出てきた時から気になっていました。
マフィアの言う「均衡」の中には念というものの存在を無用に広めないというものが含まれています。
幻影旅団はその念の存在を隠す=均衡を保つ気がないから危険だという描写も。
僕はこの「念の存在を広めて均衡を崩す」という描写を見た瞬間にクラピカの存在を思い出しました。
下の階層で念の存在を隠そうともしない幻影旅団のメンバーですが、同じく王位継承戦が繰り広げられる第一層で防衛のために念を教えるクラピカも同じく「均衡を崩す存在」と言えそうです。
何かと対比して描かれることの多い幻影旅団(というかクロロ)とクラピカ。
ここでの対比は非常に気になりました。
○壺中卵の儀と蠱毒
次に気になっているのが壺中卵の儀です。
カキン王国の王位継承戦で行われる儀式で、各王子は壺の中に血を落とすことで守護霊獣を手に入れるわけですが、説明では初代国王が蠱毒から着想を得たという描写がされています。
蠱毒とは中国の呪術の一種でざまざまな虫や爬虫類などを壺に閉じ込め戦わせ、残った一匹を蟲として取り出すというもの(呪術廻戦の夏油の極ノ番やワンピースの黒髭がインペルダウンで仲間を選ぶ際にやったことが同じモチーフでしょう)なのですが、この壺中卵の儀はそのまま王位継承戦のモチーフとなっているのでは無いかと思っています。
王位継承戦で敗れたものの亡骸は安置所のようなところのカプセルに入れられるように描かれていましたが、それらは円盤上に配置されており、中心にある物体と繋がっている描写がされていました。
これがちょうど蠱毒のモチーフなのかなと言うのが僕の見立て。
作中では守護霊獣はそれぞれの王子の欲望を忠実に再現した形で描かれていました。(ちょうどキリスト教の七つの大罪と四終みたいなデザインに感じました)
とすれば、残った一人にそれらの欲望が集約されるみたいな設定なのかなあと。
また、もう一つ視点を広げるとブラックホエール号自体が蠱毒のようにも感じられます。
ブラックホエール号に乗っている人たちはカキン帝国の国王の呼びかけで集まったものたちですが、彼らの命そのものも儀式の何らかの糧になるのかなというのが僕の予想。
作中でも稀に見る人数を描いたこの場面ですが、キメラアント編、会長選挙編あたりから能力のインフレがしすぎたようにも思います。(というかキャラ同士の力のバランスに矛盾がありそう)
ブラックホエール号は、本番の暗黒大陸に入る前にそうした実力や能力のバランスが崩れたキャラクターたちを一掃する装置としての役割も担っているんじゃ無いかなと(もちろんビスケを始め人気キャラの全員が死ぬわけでは無いと思いますが...)
〇蠱毒と孤独
もう一つ「蠱毒」というモチーフから個人的にあるんじゃ無いかと思っているのは「孤独」というテーマだったりします。
制約と誓約のように蠱毒と同音異義語になる孤独という言葉。
僕は以前から二人の死はクロロとクラピカの対称性×孤独という掛け算に落ち着くのでは無いかと思っていました。
クラピカの場合は一族を殺されていることで孤独からスタートしています。
一方クロロは終始仲間がいる状態で、作中にも非常に仲間を大切にしているさまが描かれてきました。
僕はこの二人がそれぞれクロロの場合は仲間を全て失うという形で、クラピカの場合は心から信頼できる仲間という意識を得た瞬間、「孤独」に陥ることで死んでいくのではないかと思うのです。
〇旅団とクルタ族
旅団とクルタ族に関しても前回の連載で様々なことが明らかになりました。
この場面の中でも僕が特に気になったのは、殺されたサラサの場面に出てきた二つのメッセージと目が隠されていたことでした。
袋に入ったサラサの顔にはメッセージが貼ってあったのと、エンバーミングされた死体の目が閉じていたことでサラサの目は見えないようにされていました。
劇場版特典で配布された第0巻のキーパーソンとなってクルタ族の村の近くにいたシーラが、復讐を決意したクロロを残し意味ありげな顔で仲間の元を離れる場面も描かれていたので、サラサはクルタ族との関連があるのではというのが僕の見立て。
加えてサラサが吹き替えを担当するカタヅケンジャーの担当はクリンオレンジ。
わざわざ「オレンジ」をメンバーカラーにしていることは「緋色の目」のメタファーではないのかなと思うのです。
そしてクルタ族虐殺の場に残されていた「我々は何も拒まない。だから我々から何も奪うな」というメッセージからは「拒まずに受け入れたのになぜそれを奪っていったんだ」というニュアンスが含まれるように感じます。
これはクルタ族の誰かがサラサを捨てた、もしくは里抜けしたクルタ族の子がサラサみたいなことの伏線なのかなと思ったり。
どこまでも妄想の域を出ないのですが、そんな風な設定があるのではないかと思っています。
これらを踏まえた僕の仮説は次のような感じ。
サラサは残虐な殺され方をしていて、木に張り付けられていた方の張り紙には殺した時の実況中継的な内容(その後のクロロの「犯人は自分の作品を投稿したがる」という旨の発言から)に加えて、サラサを惨殺する中で緋色の目になったことが記してあったorクルタ族の報復であった胸が書かれていた。
そしてそれをシーラは読めた(ディノハンターの夢もあり自分は単独で緋色の目を追う決意orサラサの緋色の目について知っていてそれを第三者に漏らしてしまっていたのでサラサの死に罪悪感から別行動)
袋の中のサラサの顔に貼られたメッセージには、ウボォー始め仲間に伝えたら激情して後先考えずに突き進むような内容orそれを見たら自分たちを責めるようなつらい内容が書かれていた。
(「拷問中にサラサが助けを求めていた」「最後まで泣かなければほかのやつには手を出さないと言ったら必死に頑張っていた」etc…)
旅団が宝を盗むのは自分たちが作る犯人捜しのダークウェブで流通させて、サラサ殺しの犯人が現れるチャンスを増やすため。(ヒソカが言った「団長は盗んだものを一通り愛でたら売り払うというのはこのウェブに流しているのでは?」
クルタ族を虐殺したのはサラサの惨殺の根本原因(両親が里抜け的な「外界に触れる」以上のタブーを侵したことへの罰的な理由でサラサの殺害を依頼など)があった、かつ緋の目のダークウェブ流出は人体収集家を集めやすいから。(もしくはサラサの目を取り戻すことが目的?)
ウボォーのクラピカとの戦闘時の反応的にクルタ族への恨みはなさそうなので、クルタ族の罰という線は薄いorクロロがそこを誰にも伝えていなかった。(目的はあくまで「実行犯」であって、クルタ族はそれを追うためには手段)
さて、他にもメモしておきたいことはたくさんあったのですが、すでに3000字を超えてしまったので今回は一旦ここで区切りにしたいと思います。
複雑故に多様な解釈のできるこの作品。
みなさんはどのような展開を予想していますか?
アイキャッチはもちろんHUNTER×HUNTER