古文の文学史が苦手という人をよく見かけますが、文学史は①コアになる知識と、②その知識の使い方を覚える事で対応できます。11月は公募推薦が近いということで、何回かに分けて龍谷大学の文学史のポイント解説をしていきたいと思います。なお、この解説は龍谷大学の問題を解くのにあたって必要な知識に絞ってまとめております。学術的な厳密性や細かな知識よりも、問題を解くための情報を優先しているので、細かなツッコミはご容赦ください。
23年一般入試
『落窪物語』とは成立した時代が異なるものを一つ選びなさい。
①『浜松中納言物語』 ②『曽我物語』 ③『宇津保物語』 ④『狭衣物語』
〈難易度〉
1/5
〈解説〉
「落窪物語」と聞いたら、a源氏物語以前に成立したb三大作り物語という情報を思い出したいところ。
三大作り物語は「竹取物語」「宇津保物語」「落窪物語」なので、正解は③
〈ここだけチェック!〉
「落窪物語」が出てきたということで、源氏物語以前に成立した、三大作り物語と三大歌物語は抑えておきましょう。
①三大作り物語
『竹取物語』現存する日本最古の物語。かぐや姫のお話。
『宇津保物語』琴の秘伝に関する物語。
『落窪物語』継母いじめの物語。
②三大歌物語
『伊勢物語』在原業平をモデルにしたとされる。
『大和物語』伊勢物語と違い話ごとに主人公は異なる。
『平中物語』主人公の平中は平貞文を指す。
22年一般入試
『狭衣物語』を説明したものとして最も適当なものを一つ選びなさい。
①『狭衣物語』は平安時代前期に成立した歌物語の一つで、『伊勢物語』に強い影響を及ぼした作品である。
②『狭衣物語』は平安後期に成立した作り物語の一つで、『源氏物語』の多大な影響が認められる作品である。
③『狭衣物語』は鎌倉時代前期に成立した歌物語の一つで、『大和物語』と同じく和歌に関わる物語を収めた作品である。
④『狭衣物語』は鎌倉後期に成立した作り物語の一つで、『竹取物語』と同じく非現実性の高い伝奇的な作品である。
〈難易度〉
2/5
〈解説〉
『狭衣物語』は平安時代に成立した物語で、『源氏物語』の影響を強く受けた作品と言われる。したがって解答は②
『源氏物語』以前の物語として覚えておきたいのは三大作り物語と三大歌物語の6作品。
したがって①は選んではいけない。
〈ここだけチェック〉
『狭衣物語』主人公の狭衣が従妹源氏の宮に恋をする。源氏物語から影響を受けた。
21年一般入試
『みやぢのわかれ』は京都から鎌倉へ下る旅を描く紀行文学ですが、反対に地方を出発して京都を目指す旅を描いた紀行文学を一つ選びなさい。
①『土佐日記』 ②『海道記』 ③『十六夜日記』 ④『野ざらし紀行』
〈難易度〉
3/5
〈解説〉
紀行文は旅日記のこと。選択肢のいずれもが旅日記。今回は「地方を出発して京都を目指す」がポイント。『土佐日記』がa紀貫之の作品で、b女性に扮して描かれた、c土佐から京都へ帰る55日間を描いた日記という情報から正解の①を導く。「鎌倉」というキーワードから『十六夜日記』を選ばないように注意。(『十六夜日記』は鎌倉へ向かう日記)
〈ここだけチェック〉
『土佐日記』がa紀貫之の作品で、b女性に扮して描かれた、c土佐から京都へ帰る55日間を描いた日記
『海道記』鎌倉時代の紀行文。『十六夜日記』『海道記』『東関紀行』の3作品で三大紀行文と呼ばれる。
『十六夜日記』鎌倉時代に記された阿仏尼の日記。裁判(所領紛争の解決)のために鎌倉へ向かう日記。鎌倉までの道中と、鎌倉での出来事が描かれる。
『野ざらし紀行』江戸時代中期に松尾芭蕉によって描かれた紀行文。龍谷大学を目指すに当たって、芭蕉の作品としては『おくのほそ道』と『笈の小文』(おいのこぶみ)も覚えておきたい。
需要がありそうならできるだけ高頻度で更新していこうと思いますので、もし興味のある方は気長にお待ちください(笑)