新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



嵐『Love so sweet』プチ考察〜「いとしのエリー」の引用から歌詞の意味を掘り下げる〜

数多くある嵐のヒット曲の中でも一段と人気が高い『Love so sweet』。
イントロが流れた瞬間にこの曲だとわかる人は少なくないのではないでしょうか。
そんな国民的人気を誇る『Love so sweet』ですが、歌詞を見ていくとある曲との共通点に気がつきます。
それはサザンオールスターズの『いとしのエリー』です。
いとしのエリーに出てくる〈これで最後のlady〉〈笑ってもっとbaby〉という歌詞はLove so sweetの〈笑ってもっと最後のlady〉に重なります。
また〈エリー My love so sweet〉と〈信じることが全てLove So Sweet〉というそれぞれのサビの終わりに出てくる「Love so sweet」という他にない言い回しからも、意図的に引用をしているのでしょう。
和歌の技法に昔の歌の一節を引用して広がりを持たせる本歌取りがあるのですが、Love so sweetはまさにそれが使われているように思います。
Love so sweetには、主題歌となったドラマに重なるように離れたところにいる二人の恋模様が描かれているわけですが、そんな二人が信じているのはいつか結ばれる姿です。
一方いとしのエリーに描かれるのは紆余曲折を経て結ばれた二人の姿。
まさにLove so sweetの中の二人が最終的に思い描いている終着点と言えるでしょう。
今は離れ離れだけどお互いを思い続けている。
この曲の中ではそんな二人の姿を描き、いとしのエリーのフレーズを引用することでそれとなく二人の恋が成就することをほのめかしている。
Love so sweetにはそんな遊び心があるように思います。
余計な掘り下げなんかしなくとも十分に名曲なのに、じっくり味わうことで違った楽しみ方ができる。
まさに国民的アイドルの嵐だからこその名曲と言えるでしょう。

 

アイキャッチはもちろんLove so sweet

Love so sweet (通常盤)

Love so sweet (通常盤)

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中学生を悩ます「扇の的」のあらすじを10分で理解する。

中学二年生の定期テストで登場する平家物語の「扇の的」。

テスト勉強が大変だということを毎年耳にします。

扇の的がの勉強が難しく感じる最大の理由の一つは、あらすじをつかめていないという点にあります。

そこで、今回は1000字程度にあらすじをまとめてみました。

また今回のあらすじは国語に苦手意識を持っている人の苦手意識の解消を目的の一つにしています。

そこで、つまずきそうな熟語に関してはできるだけ読み仮名をふるようにしました。

少しでもテスト勉強の役に立ったら幸いです。

 

時は二月十八日の午後六時(酉の刻(とりのこく))頃で、その時ちょうど北風が激しく吹き、磯(いそ)に打ち寄せる波も高かった。
船は大きく揺(ゆ)れ動き、扇も串に定まらず、ひらひらと揺れている。
沖合には平家が船をずらりと並べて見物し、岸には源氏が馬を並べてこれを見ている。
どちらもみな、心から晴れやかに見物していた。

那須与一(なすのよいち)は目を閉じて、心の中で祈った。
「南無八幡大菩薩(なむはちまんだいぼさつ)さま、我が国の神様、日光の権現(ごんげん)、宇都宮、那須の湯泉大明神(ゆぜんだいみょうじん)、どうかあの扇の真ん中を射させてください。
もしこれを射損じるようなことがあれば、弓を切り折り、自害して、二度と人に顔向けすることはできません。
どうか、もう一度故郷に帰ることを叶(かな)えようとお考えならば、この矢を外れさせないでください。」

祈りを終え目を開くと、風が少しおさまり、扇も狙(ねら)いやすい状態になっていた。
与一は、かぶら矢を取って弓にかけ、ぐっと引きしぼり、「ひゅうっ」と放った。
与一は小柄(こがら)だったが、その弓は十二束(約90センチ)三伏(みつぶせ)(指三本分を重ねて12回分の長さ)もの長さに強く引き絞られ、浦中(うらじゅう)が響くほどの音を立てて飛び、見事に扇の要の際にぴったりと命中した。
かぶら矢は海に入ると、扇は空へ舞い上がり、しばらくは空中でひらひらと揺れたが、やがて春風に揉(も)まれ、海へさっと散っていった。

夕日が輝く中、紅(くれない)の扇が波間(なみま)に漂い、浮いたり沈んだり揺れている様子を、沖の平家は船べりを叩いて感じ入り、岸の源氏は矢筒を叩いてどよめいた。
あまりの美しさと感動に堪(た)えきれなかったのか、平家の舟の中から五十歳ほどの男が黒い革の鎧(よろい)をまとい、白柄(しらえ)の長刀(ながなた)を持ち、扇を掲(かか)げた場所に立って舞い始めた。

伊勢三郎義盛(いせのさぶろうよしもり)が与一の後ろに歩み寄り、
「お命じである、射よ」
と言ったので、与一は今度は中差(なかざし)(脇差の短い刀)を取り、矢を引き絞り、その男の首の骨を「ひゅうっ」と射抜いて、逆さまに船底へと突き倒した。
平家の方は静まり返り、源氏の方はまた矢筒を叩いてどよめいた。
「見事、射た!」という者もあれば、「情けない(容赦ない)」と言う者もいた。

 

 

平家物語「扇の的」試験10分前でも得点が上がるポイント7つを解説してみた!

中学2年生で国語が苦手という子が悩むのがこの扇の的。

そもそも慣れない古文である上に言い回しが難しく、それだけで苦手意識を覚える人もいるのではないでしょうか。

もちろん長くて大変な所ではあるのですが、一方でよく聞かれるポイントも存在します。

今回はそうした知識や直前に確認すれば解けるような重要箇所を7つにまとめてみました。

また、単なる暗記では対応できない問題にして出題されることも想定して、覚え方や応用が効くような解説を載せてあります。

よかったら直前のテスト勉強に役立てて下さい。

 

ポイント①「酉の刻」が何時かを覚えておく

 

干支を用いた刻限の数え方では子(ねずみ)を0時として以下2時間ごとに時間が割り当てられています。

ちなみに、12時を正午と呼ぶのはここからです。

そのため10番目にくる酉の刻は18時(午後6時)ごろということになります。

ちなみに丸暗記を嫌う先生が応用した違う時間を聞いてくる可能性もあるので、上で述べた出し方に加えて干支の順番も覚えておくと良いでしょう。

 

〈干支の順番〉

子(ね)、丑(うし)、寅(とら)、卯(う)、辰(たつ)、巳(み)、午(うま)、未(ひつじ)、申(さる)、酉(とり)、戌(いぬ)、亥(い)

※ちなみに今年(2024年)は辰年です。

 

ポイント②助詞を補う問題

 

古文では主語や助詞(「を」とか「ば」とか)が省略されがちです。

扇の的では冒頭がその知識を問うのに適していて、「 北風激しくて、磯(いそ)打つ波も高かりけり。」の部分でそれを答えさせる問題をよく見かけます。

そのため、この問題がでてきたら「北風【が】激しくて、磯【を】打つ波も高かりけり」と補えるようにしておきましょう。

 

ポイント③対句になっている3箇所を押さえておく

 

テンポよく書かれた扇の的には対句表現が多く出てきます。

この場面では次の3箇所に出ていて、問いやすい内容となるのでこの3箇所が対句であることをおさえておきましょう。

 

沖には平家、舟を一面に並べて見物す。
陸には源氏、くつばみを並べてこれを見る。

 

かぶらは海に入りければ、扇は空へぞ上がりける。

 

沖には平家、ふなばたを叩いて感じたり。陸には源氏、えびらを叩いてどよめきけり。

 

ちなみに対句とは、「春は花、秋は月」「強い者はよく耐え、弱い者はすぐにくじける」のように文章や詩の中で、意味や形式が対照的な言葉や表現を並べて使う修辞技法のことを指します。

 

ポイント④二重否定をしっかり現代語訳で理解する

 

いづれいづれも晴れならずといふ事ぞなき。」というところで、「晴れならず(晴れがましくない)」と「事ぞなき(事がない)」と否定を被せる表現が出てきます。

ここは「晴れがましくないことはない=みなが晴れがましい様子である」という意味であることを押さえておきましょう。

 

ポイント⑤係り結びになっている5箇所を押さえる

 

古文では文中に「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」がある場合文末の形が変化する係り結びの法則というものがあります。

扇の的ではこれが多用され、よくテストで聞かれるので次の5箇所が係り結びになっていることを押さえておきましょう。

 

  • いづれいづれも晴れならずといふ事【ぞ】【なき】。
  • 扇も射よげに【ぞ】なつたり【ける】。
  • ひいふつと【ぞ】射切つ【たる】。
  • 扇は空へ【ぞ】上がり【ける】。
  • 海へさつと【ぞ】散つたり【ける】。

 

ポイント⑥文章に出てくる効果音の描写4つを把握する

 

この作品では臨場感を出すために弓の音など効果音が何ヶ所かに出てきます。

毎年定期テストではその効果音を問う問題を見かけるので以下の4箇所を押さえておきましょう。

 

  • かぶらを取つてつがひ、よつぴいて【ひやうど】放つ。
  • 扇の要際一寸ばかり置いて、【ひいふつ】とぞ射切つたる。
  • 海へ【さつ】とぞ散つたりける。
  • しや頸(くび)の骨を【ひやうふつ】と射て、舟底へ逆さまに射倒す。

 

また、ここは過不足なく抜き出すことを求められることもよくあります。

「と」を含めてしまったり、「よつぴいて」を入れてしまわないように注意しましょう。

 

ポイント⑦敵方の男が踊った理由を押さえよう

 

最終場面で敵方(平家側)の人間が船の上に出てきて踊るのですが、国語が苦手な子だとここが敵方であることと、踊った理由が把握できていないことがあります。

この場所では与一が風も強く距離もあるなか、鏑矢(打ちづらい矢)で扇を射るという非常に難易度が高いことをしたことに対して褒める意味で敵方の人間が舞を披露したという事を確認しておきましょう。

 

アイキャッチはこの時代をテーマにしたマンガ、遮那王義経

 

 

龍谷大学公募推薦対策!10年分の文学史を解説してみた①

古文の文学史が苦手という人をよく見かけますが、文学史は①コアになる知識と、②その知識の使い方を覚える事で対応できます。11月は公募推薦が近いということで、何回かに分けて龍谷大学文学史のポイント解説をしていきたいと思います。なお、この解説は龍谷大学の問題を解くのにあたって必要な知識に絞ってまとめております。学術的な厳密性や細かな知識よりも、問題を解くための情報を優先しているので、細かなツッコミはご容赦ください。

 


23年一般入試

落窪物語』とは成立した時代が異なるものを一つ選びなさい。
①『浜松中納言物語』 ②『曽我物語』 ③『宇津保物語』 ④『狭衣物語

 
〈難易度〉
1/5

〈解説〉
落窪物語」と聞いたら、a源氏物語以前に成立したb三大作り物語という情報を思い出したいところ。
三大作り物語は「竹取物語」「宇津保物語」「落窪物語」なので、正解は③

〈ここだけチェック!〉
落窪物語」が出てきたということで、源氏物語以前に成立した、三大作り物語と三大歌物語は抑えておきましょう。
①三大作り物語
竹取物語』現存する日本最古の物語。かぐや姫のお話。
『宇津保物語』琴の秘伝に関する物語。
落窪物語』継母いじめの物語。
②三大歌物語
伊勢物語在原業平をモデルにしたとされる。
『大和物語』伊勢物語と違い話ごとに主人公は異なる。
『平中物語』主人公の平中は平貞文を指す。

 

22年一般入試

 

狭衣物語』を説明したものとして最も適当なものを一つ選びなさい。
①『狭衣物語』は平安時代前期に成立した歌物語の一つで、『伊勢物語』に強い影響を及ぼした作品である。
②『狭衣物語』は平安後期に成立した作り物語の一つで、『源氏物語』の多大な影響が認められる作品である。
③『狭衣物語』は鎌倉時代前期に成立した歌物語の一つで、『大和物語』と同じく和歌に関わる物語を収めた作品である。
④『狭衣物語』は鎌倉後期に成立した作り物語の一つで、『竹取物語』と同じく非現実性の高い伝奇的な作品である。


〈難易度〉
2/5

〈解説〉
狭衣物語』は平安時代に成立した物語で、『源氏物語』の影響を強く受けた作品と言われる。したがって解答は②
源氏物語』以前の物語として覚えておきたいのは三大作り物語と三大歌物語の6作品。
したがって①は選んではいけない。

〈ここだけチェック〉
狭衣物語』主人公の狭衣が従妹源氏の宮に恋をする。源氏物語から影響を受けた。

 


21年一般入試

『みやぢのわかれ』は京都から鎌倉へ下る旅を描く紀行文学ですが、反対に地方を出発して京都を目指す旅を描いた紀行文学を一つ選びなさい。
①『土佐日記』 ②『海道記』 ③『十六夜日記』 ④『野ざらし紀行


〈難易度〉
3/5

〈解説〉
紀行文は旅日記のこと。選択肢のいずれもが旅日記。今回は「地方を出発して京都を目指す」がポイント。『土佐日記』がa紀貫之の作品で、b女性に扮して描かれた、c土佐から京都へ帰る55日間を描いた日記という情報から正解の①を導く。「鎌倉」というキーワードから『十六夜日記』を選ばないように注意。(『十六夜日記』は鎌倉へ向かう日記)

〈ここだけチェック〉
土佐日記』がa紀貫之の作品で、b女性に扮して描かれた、c土佐から京都へ帰る55日間を描いた日記
『海道記』鎌倉時代の紀行文。『十六夜日記』『海道記』『東関紀行』の3作品で三大紀行文と呼ばれる。
十六夜日記』鎌倉時代に記された阿仏尼の日記。裁判(所領紛争の解決)のために鎌倉へ向かう日記。鎌倉までの道中と、鎌倉での出来事が描かれる。
野ざらし紀行』江戸時代中期に松尾芭蕉によって描かれた紀行文。龍谷大学を目指すに当たって、芭蕉の作品としては『おくのほそ道』と『笈の小文』(おいのこぶみ)も覚えておきたい。

需要がありそうならできるだけ高頻度で更新していこうと思いますので、もし興味のある方は気長にお待ちください(笑)

 

 

 

中学生を悩ます魯迅の『故郷』のあらすじを1000字でわかりやすくまとめてみた

中学三年生の国語の定期テストで関門となる内容の一つは間違いなくこの魯迅の『故郷』でしょう。

テスト勉強が大変な理由の一つは文章量が膨大である点にあります。

これまでなら授業を聞いているだけで「何となくあらすじを覚えている」状態に仕上がっているため、直前の対策で十分に間に合ったのですが、これだけ長い文章になると、授業を聞いただけではあらすじを押さえられないケースが出てきます。

その結果、いつも通り勉強しているはずなのになんかしっくりこないという状況になるわけです。

こうした状況の場合、テスト勉強に入る前に、まずざっくりとあらすじを把握しておくことが大事になります。

なんとなくわかっている状態ができているから、その後の細かな把握ができるというわけです。

そこで今回は場面ごとに分かりやすくあらすじをまとめてみました。

これを読んだうえで学校のプリントなり問題集なりに取り組むと、テスト勉強が少しだけ楽になるのではないでしょうか。

 

【使い方】

・まったく文章が入っていないという人は、まずは太字の小見出しだけ追いかけて流れを確認してみてください。

・何となくわかっているけど自信がないくらいの人であれば、そのまま読み込んでいきましょう。

 

故郷への帰省


主人公は寒い冬の中、20年以上ぶりに故郷へ帰ります。荒涼とした村の様子を目にし、昔の活気を失った故郷に対して切ない気持ちを抱きます。幼少期の記憶にある故郷とは大きく異なっていることに、彼は寂しさを感じます。

 

家族との再会


二日目の朝に実家に到着すると、母と甥の宏児が出迎えます。母は主人公の帰省を喜び、昔のことを懐かしむ一方、故郷を離れなければならないことを語り合います。母はまた、かつての友人・閏土が主人公に会いたがっていることを伝え、再会の可能性を示唆します。

 

 

幼少時の記憶


閏土の名前を聞いて、主人公は彼と過ごした幼少期の思い出を振り返ります。当時、閏土は故郷の祭りで主人公の家を手伝いに来ており、二人はすぐに仲良くなりました。閏土が話してくれた田舎の自然や日常の話が、都会育ちの主人公には新鮮で、彼は閏土に強い憧れを抱くようになります。

 

楊おばさんとの再会


成長した主人公は、かつて豆腐屋で働いていた楊おばさんと再会します。しかし、彼女は以前とは異なり、貧しく年老いていました。彼女は主人公の成功を皮肉り、彼が自分たちを忘れたかのように振る舞います。そんな彼女の変化に、主人公は故郷の現実を改めて感じます。

 

閏土との再会


その後、主人公は成長した閏土と再会しますが、彼もまた貧しさと厳しい労働のために疲れた姿に変わっていました。閏土の手にはかつての若々しい面影はなく、荒れた手と疲れた表情が彼の苦しい生活を物語っています。二人は久しぶりに再会を喜び合うものの、かつてのような純粋な友情とは異なり、時間の流れや生活環境の違いが彼らの間に距離感を生じさせています。

 

故郷を離れる決意


最終的に、主人公は故郷を去ることを決意します。彼にとって故郷はもはや懐かしい場所ではなく、時の流れとともに変わり果てた現実を突きつける場所となってしまいました。

 

 

アイキャッチはもちろん「故郷」

 

 

 

KinKi Kids「むくのはね」プチ考察〜「羽根」に込められた思いの変化を探る〜

玉置浩二さんがKinKi Kidsのために書き下ろした「むくのはね」。
KinKi Kidsが司会を務める番組「堂本兄弟」に玉置浩二さんがゲストとして出演した際、即興でメロディが作られた瞬間の衝撃を覚えている人も少なくないのではないでしょうか?
「マイナー(コード)もいいけどあえてメジャー(コード)でいってみようか」
『硝子の少年』に始まり、『ボクの背中には羽がある』『スワンソング』など、マイナーコードの儚さ漂う名曲をたくさん持つKinKi Kidsにあえてメジャーコードで始まるという玉木さんの粋な計らい。
その後2ヶ月ほどかけて書いたというこの曲の歌詞は玉置浩二さんがKinKi Kidsの足跡を思いながら書いたのだそうです。
その曲のタイトルが『むくのはね』。
KinKi Kidsで「はね」と聞いてまず思い浮かぶのは『ボクの背中には羽根がある』だと思いますが、二つの中の歌詞を比較するとそこには大きな変化が伺えます。
-ずっと君と生きてくんだね ボクの背中には羽根がある どんな辛い未来が来ても 君を抱いて空も飛べる-
ボクの背中には羽根がある」では君のことを守ってみせると歌っていたのに対し、『むくのはね』では次のように言っています。
-何年も何十年も 優しい気持ちのまま見つめているよ-
守って上げる存在からずっとそばにいることを違う存在へと変化した羽を持つ主人公の価値観。
これは大人になったKinKi Kidsの二人だからこそ歌える歌詞のように感じます。
もう一つ、「となりにずっといる」というメッセージはどこかKinKi Kidsの二人の関係性に重なります。
若い頃はなんとか頑張ろうと二人で必死に羽ばたいてきた二人が、時を経てずっと隣にいることが一番といえる関係性になった。
そんな二人は昔からずっと変わらず無垢なままである。
この曲からは玉木さんの目から見た二人の関係性が伝わってくるような気がします。
守ることからただ側にいることが愛だと歌う『むくのはね』は二人が歳を重ねるごとにさらに味わいが深まる名曲だと思います。

 

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UNISON SQUARE GARDEN『傍若のカリスマ』考察〜歌詞が伝えたい「勝つため」に最も必要な要素は何?〜

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アニメ『ブルーロック』のテーマソングとなったUNISON SQUARE GARDENの『傍若のカリスマ』。
タイトルは人前をはばからず勝手に振る舞うさまを表した傍若無人と、人を惹きつける才能を持ったカリスマを結びつけたもので、サッカーというスポーツを通して才能を突き詰める様が描かれるアニメブルーロックを彷彿とさせます。

この曲の作曲者でもある田淵さんが思う勝負における最も大切なものは何なのか?
それは「残ったやつを希望と呼べ」という言葉に表れているように思います。
「残ったもの」「希望」と聞いて頭に浮かぶのはギリシャ神話に出てくるパンドラの箱のエピソードです。
パンドラが好奇心からゼウスに渡された箱を開けた結果、人間界に様々な災いや悪が飛び出したが、その最後に箱の底に残ったものが「希望」だったというギリシャ神話のエピソードを踏まえるならば、傍若無人に見える振る舞いの先につかみ取れるものが希望というところでしょう。
第一線で戦い続ける人間にとって時に周囲に誤解されるような向き合い方も必要になってきます。
そうしたあらゆる泥臭い努力の先につかみ取れるのが勝利という希望というわけです。
こうした思いを象徴するのが次の二つの引用です。
「君子危うくて接近中」
「孫氏崩れ去る現代戦」
前者は賢い者は危ない出来事には初めから近づかないという意味を持つ「君子危うくに近づかず」を、後者は最古にして最高と言われる兵法書を書いた孫氏を表している訳ですが、この歌ではそのいずれも通用しないという使われ方をしています。
最後の最後に信頼できるのは昔の教訓や王道の戦略でなく、自分の培ってきた感だけである。
そんな決意が伝わってきます。
では最後に必要になる力は何なのか?
田淵さんは「and going!」という言葉に隠れた「エゴ」という響きに託したのではないかと思います。
全力で戦った最後に勝ちを掴み取るために必要な者は自分の強い思い=エゴである。
だからここ『傍若のカリスマ』というタイトルなのかなと。
難解なメロディに乗せて僕たちに届けるメッセージにはUNISON SQUARE GARDENならではのかっこよさと熱くなるものがあるように思います。