毎年書いている京都公立高校前期入試の分析です。総評の後、各問題の簡単な解説を載せておりますので、中期選抜に向けた対策に活用していただけたら幸いです。
また、こちらの記事で過去三年分の京都府前期選抜・中期選抜の解説と文法・知識分野の対策を書いています。よかったら勉強にご活用ください。
【保存版】京都府公立高校入試「国語」対策まとめ|3年分の過去問解説と頻出知識の攻略ドリル
●総評:令和8年度 京都府公立高校中期選抜の傾向と難易度
令和8年度の公立高校中期選抜は例年通り、古文1題、現代文1題の出題で、それぞれ『排蘆小船』(本居宣長)、2017年に出版された『まなざしのデザイン』(ハナムラチカヒロ)出題となりました。古文に関しては本居宣長の独自の視点を書いた歌論ということで、苦手意識があった人がいたかもしれませんが、内容自体は比較的とりやすかったのではないでしょうか。現代文に関して、文章量が約2400字と昨年の約2000字と比べてやや増加した(例年にもどった)ものの、文章内容自体は難しくなく、例年と比べればやや易しい文章であったという印象です。私たちの視点を窓に例えて、視点を変えることの重要性について論じた文章でしたが、比喩にとらわれず主張をつかめたかどうかが読解のポイントになったように思います。
設問別に見ていくと、問題数や出題内容はおおむね変化がないものの、文法問題で「該当するものを全て選べ」という解答形式が二問登場していることが気になりました。文法分野でのこの形式の出題に対応するには、これまで以上に文法内容の正確な理解が求められます。次年度以降の受験生に関しては、このことを頭に入れておくことが必要でしょう。また、古文の仮名遣いを問う問題ですが、ここ数年、現代仮名遣いをたずねたうえで、歴史的仮名遣いと現代仮名遣いが変わらないものを選ばせる問題が出題されています。固定されつつある出題形式なので、確実に対策を練るようにしましょう(ここも該当する選択肢を全て選ばせる形式に変わる可能性は十分に考えられます)。
漢字の問題に関しては読み書き共に小学生で習う漢字からの出題でした。難しい熟語や同音異義語と間違えるような問題でもないので、この二問は必答です。
全体の難易度としては、昨年度と同程度という印象でした。
●設問ごとの分析【第一問】古文(歌論)
排蘆小船
(1)指示語【普通】
きちんと読めていれば正答できる問題です。「それを本末を断ち」の「本」が「根」のこと、「末」が「梢(先端)」のこととわかれば正解できたでしょう。余談ですが「梢(こずえ)」は木の幹や枝の先端を表す言葉です現代文の文章でもたびたび見かけるので、知らなかった人は覚えておきましょう。直前をみて機械的に解答するとウを選ぶことになります。この選択肢を選んだ人は、古文・現代文に限らず、きちんと意味を考えながら文章に向き合う練習をしましょう。
(2)空欄補充【標準】
前の文との対比関係が取れていたかがポイントになる問題です。対比関係は次の通りです。
・なほなほ巧を精しうするときは、いく度も削り、節を避り、瑕のなきところの正味を得んとするときは、小ばかりになるなり
・粗相なることに用ひるには、曲節本末を構わず用ゆれば、大いなれども[ ]なり。
このうちそれぞれa使い方、bサイズ、c作り方、d木材の状態と考えると
aなほなほ巧を精しうするときは⇔粗相なることに用ひる
b小ばかりになる⇔大いなれども
cいく度も削り、節を避り⇔曲節本末を構わず用ゆれ
d、瑕のなきところの正味を得んとする⇔[ ]
というような対比関係が成立しているので、粗さを表すエが正解となります。
(3)仮名遣い【やや易】
単語の頭以外の「はひふへほ」は「わいうえお」に直すというのは基本知識なので確実に正解したいところです。仮名遣いが変わるものと変わらないものの判別は品詞分解をすることで対応可能です。このパターンが苦手な人は日頃から品詞分解をする習慣をつけておきましょう。
(4)内容説明【標準】
直前に「和歌は狭くして世上のこと広く詠みえがたしと思ふは誤りなり(和歌は言葉の制限が厳しくて、世の中の出来事を広く詠みきれない」と思うのは誤りである)」とあり、傍線部「おのづから狭く事少なくなる理なり(自然と狭く「事が少なくなる」のは当然だ)」に続きます。ここから、「世の中の出来事が広く読めない」という内容が「事少なくなる」の意味であることが分かり、正解はエとなります。
(5)①空欄補充【やや易】
古文の内容をふまえた会話文にある空欄を補充する問題です。空欄をみると「[ A ]である『正味』を得ようとする」とあるので、本文4行目、「いく度も削り、節を避り、瑕のなきところの正味を得んとするとき(何度も削り、節を避け、傷のない「正味良質な部分」だけを得ようとする)」の内容に合うアが正解となります。
(5)②空欄補充【標準】
本文全体の主張を問う問題でした。最終文に「拙き詞をも除かずにいはば、歌は歌ながらよき歌とはいはれぬ(下手な言葉も取り除かずに詠んだなら、それは歌の形式は備えていても、決して「良い歌」とは言われない)」とあることから、よい歌を詠むには「拙き詞をも除く」作業が必要であることが分かります。これは、冒頭の「詞を選びて狭くすること」をさすので、これが正解となります。
【現代語訳】排蘆小船
さて、和歌において禁止事項が多く、言葉を厳選して表現を狭くしていくことは、例えるなら木を切り倒して材木として用いるようなものである。木全体の姿は、歌の本来あるべき自然な姿に例えられる。根から梢まで、木であることに違いはないけれど、その木の根元や先を切り落とし、皮を削り取れば、元の木よりは少し小さくなるものだ。さらに入念に細工を凝らそうとすれば、何度も削り、節を避け、傷のない「正味良質な部分」だけを得ようとするので、結局はごく小さな材木になるのである。
逆に大ざっぱな用途に用いる場合は、曲がった節や根・先の区別も気にせず使うので、大きさこそ保てるが、粗末なものになる。これと同じように、良い歌を詠もうと思うならば、狭い範囲の言葉の中からさらにより分けて選び捨て、整えて詠むべきである。もし悪い歌であることを厭わないのであれば、どのようにでも広く言葉を用いて詠めばよい。
この道理を理解せずに、むやみに「和歌は言葉の制限が厳しくて、世の中の出来事を広く詠みきれない」と思うのは誤りである。風雅なものの中からさらに究極の風雅を求めようとすることなのだから、自然と言葉の範囲が狭まり、詠む内容が少なくなるのは当然の理屈である。世間の卑俗な出来事をありのままに詠み、下手な言葉も取り除かずに詠んだなら、それは歌の形式は備えていても、決して「良い歌」とは言われないのである。
●設問ごとの分析【第二問】現代文(文化論)
まなざしのデザイン
(1)語句の意味【やや難】
語句の意味を問う問題は毎年頻出のジャンルです。今回は「まんざらでもない」「モード」の意味が問われました。「モード」がやや難しい外来語で、かつ文脈からたどり着くのは難しくやや迷ったかもしれませんが、対応したいところです。
(2)理由説明【やや易】
傍線を含む一文に「b[村人たちにはその価値が見えなかった]のは、同じ場所に対する都会の人と村人とのそれぞれの意識の距離感が異なるから」とあります。それをふまえて2段落を読み進めると、村人にとって距離感が近く、都会の人にとっては距離感が遠いとかかれているので、ウが正解となります。この問題は選択肢の内容の複雑さというよりも論理力が必要な問題であったため間違えた人は主語述語や助詞に注目した丁寧な文の把握の練習をしましょう。
(3)空欄補充【標準】
空欄の直前の文との対比、直後に並列で並べられた内容との照らし合わせができたかが正誤を分けた問題と言えるでしょう。直前では「旅先で初めて目にするものが新鮮であるというだけではない」とあるため、空欄に入る内容は「見慣れたもの」であることが分かります。また後ろから、それらは「夜空の星や月」のようなものであることが分かります。これらに合致するアが正解となります。
イ「地元のものとは異なる」とエ「旅先の地に昔から生える」は選びたくないところです。ウで間違えた人は、おそらく「夜空の星や月」ということばのイメージから連想した可能性があるので、きちんと前の内容との対比を意識するようにしましょう。きちんとした内容理解を問う良問と言えるでしょう。
(4)漢字の読み【易】
ここは必答です。答え「[そ]って」
(5)漢字の成り立ち【やや易】
漢字の成り立ちは前期・中期を合わせれば三年連続で出題されている頻出分野です。確実に答えられるようにしましょう。今回は「二つ以上の字を組み合わせて新しい意味を表す」という会意文字の特徴が明確に書かれています。また、選択肢にも会意文字の例としてよく出てくる(中学1年生で習ったときも、教科書に例として登場していましたね!)「林」という選択肢があるので、正解したいところです。(ウ、キ)
(6)品詞【やや難】
問題自体が難しいというわけではありませんが、「すべて選べ」という出題形式に苦戦したかもしれません。それぞれ「ある(連体詞)」「方向(名詞)」「に(助詞)」ということでア、イ、エが正解となります。出題形式は変わっているものの、文節や品詞を問う問題は京都府の前期選抜・中期選抜の文法の最頻出分野であるので、確実に対策をして臨みたいところです。
(7)空欄補充【標準】
傍線部を含む一文をみると「こういう状態がg[まなざしの固定化]」とあるため、まずは「こういう状態」を明らかにします。10段落を読むと「窓の外だけにまなざしが向き、窓を動かすことを忘れてしまう」とあるので、ここをまずは押えましょう。その上で、設問を読むと、「例えばどの方向に窓があるかなどの[ ]ではなく」となっているので、空欄に入る言葉は「窓を動かすこと」に相当するものであることが分かります。
「まなざしの固定化」に関しては次段落(11段落)に説明があるので、その内容を読んでいき、「窓を動かすこと」に相当する「窓そのもののあり方」が正解となります。
(8)漢字の書き【易】
「性」と言う字は接尾辞として見慣れている上に、今回の使われ方も三字熟語として出ているものなので、ここは必答したいところです。答え「性」
(9)助動詞【やや難】
助動詞「れる」「られる」の識別です。識別問題自体は頻出ですし、「れる」「られる」の識別も難しくはないのですが、「該当するものを全て選べ」という質問に戸惑ったかもしれません。また、3つ正解があるというのも選択することに心理的ハードルがあるかもしれないので、次年度以降の受験生はこうした出題パターンがあることを頭に入れておくことが大切です。
(10)段落の関係【標準】
前期・中期問わずに頻出の内容です。この設問にたどり着いたときに選択肢を見て考えるのではなく、日ごろから段落同士の関係を意識した読解、意味段落を意識した読解をしておくことでこの問題には対応できるようになります。今回は具体例で始まり、次段落(2段落)で筆者の主張が来ているため、アが正解になります。それぞれイは「具体例」がNG(7段落は反対の内容が述べられています)、ウは「新たな話題」がNG(イと同じ)、エは「否定する立場」がNG(他の意見が出ているだけ)となります。
エを選んだ人は「反対」という単語に反応したと予想されますが、この文脈では否定する立場の意見が挙げられているわけではありません。ここを選択肢に入れているあたりに、きちんと内容理解をしてほしいという出題者の意図が感じられる良問と言えるでしょう。
(11)①空欄補充【標準】
「日常生活の中で旅人のまなざしを感じる」という内容の意味段落は5~7段落です。会話文にある「何かの目的に集中している時は旅人のように眺めることは難しい」というのは6段落の内容で、一方と続くのは7段落の内容であり、この段落に会話文にある「外からの風景として」という言葉を探しにいくと「目的と一体化していた自分自身が外から風景として眺められる」という部分にたどり着けます。正解(目的と~分自身)
(11)②空欄補充【標準】
会話文に「また、8段落に」とあるので、8段落を含む意味段落に注目します。8段落をまとめた内容が9段落に当たるので、その内容に適したウが正解となります。
(11)③空欄補充【やや難】
メガネの具体例が出てくるのは13段落なので、その段落に着目する。13段落のメガネの例は自分の意識が窓枠と同化していてその存在に気づかないことの具体例として挙げられています。したがって「同化している」という内容が正解ということにはたどり着けるのですが、その内容は2段落にあります。もちろん今回の文章が「景色を見る際の我々の視点である」ということに注意をして、意味段落ごとの繋がりを考えていけば、「旅行者のまなざし」と「日常のまなざし」の共通点の話であったことからここにたどり着くことも可能ですが、制限時間内でここにたどり着くのは難しかったように感じます。実際には「同化」というキーワードに注目して、冒頭からこうした言葉を探すという解き方になったのではないでしょうか。正解(自分と同化している)
(11)④要約のポイント【標準】
最終問題の発表や要約のポイントの問題も毎年出題されるもので、難しくないので確実に正解したいところです。また、「適当でないものを選択」というところに注意が必要なので気を付けなければなりません。(正解はエ)