天才無免許医師であるブラックジャックは、法外な医療費の代わりに多くの難病患者を救っていった。
「ブラックジャック」は医療漫画のパイオニア的な存在であった。
原作者である手塚治虫は1996年に光文社文庫から出版された「ガラスの地球を救え」の中で、同作品について「ブラック・ジャックは医療技術の紹介のために描いたのではなく、医師は患者の延命を行なうことが使命なのか、患者を延命させることでその患者を幸福にできるのか、などという医師のジレンマを描いた。」と語っている。
6月29日の読売新聞朝刊の特集記事で、「植物状態」の娘を世話する母親の話が掲載されていた。
母親は、「もし呼吸器が必要でも、意識があれば悩まなかった。でも、意識のない娘には、苦痛しかないのではないか。」と感じると語った。
こうした思いから医師に娘の管を抜いてあげたいと相談を持ちかけたが、現状で安楽死が認められる4条件に当てはまらないので管は抜けないと説明されたそうだ。
「命の終わりに向き合う人や家族、医療者のこころに焦点を当てる。」
特集記事の第一回目の文章はこう閉じられていた。
「延命」か「安らぎ」か、手塚治虫が社会に投げかけた問題にかさなる部分がある。
延命技術が発達した今、新たに「脳死」や「安楽死」といった、新たな問題点が生まれてきた。
日本の法制度を見てみると(特に幼児の)安楽死をめぐる制度が十分に敷かれていないように感じる。
医療技術の発展に合わせて、周辺の制度も確立させなければならない。
また、延命を続けるか止めるかの議論の際には、本人はその議論の参加者には含まれない。
あすはわが身ととらえ、日ごろから身近な人間と話しておくことが必要なのかもしれない。
※少し改訂致しました。