新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



23.救命と解雇

先日、フロリダ州のビーチでライフセーバーの男性が溺れていた男を助けたために仕事を解雇されるという出来事があったそうだ。

ライフセーバーが命を救って解雇されるとは珍妙な事であるが、そのカラクリは以下の通りであった。

フロリダのビーチで働いていた男性の元に、人が溺れているとの連絡があった。
男性はすかさず助けに行こうとしたが、そこは市から請け負う監視エリアの外だった。

市の雇用契約書では、監視エリア外で起こった水難事故に関しては、速やかに消防に連絡することが「正解」であった。

そうは言っても目の前で溺れている人を助けないわけにはいかない。
男性は違反を承知で溺れている人を助けたそうだ。

その結果、後日上司から大変心苦しいことではあるがと言われつつ解雇を言い渡された。


さて、会社と男性のどちらが正しかったのだろうか。

ライフセーバーの行動が素晴らしいことは言うまでもないが、会社側の対応が全面的に間違えであったとは言い難い。

あくまでも男性は市と契約を結んでいた。
つまり市は監視エリア内に関していつ何時も安全性を確保する義務を負っているわけだ。
仮にライフセーバーの男性が監視エリア外に出向いた時に、もっと大きな事故が対象エリアで起きていたらどうだろう。

そんな事を考えると、解雇を告げた側を一概に責めることができない気もしてくる。


とはいえ、役所の判断がいささか厳しすぎたという気持ちは拭えない。

人が溺れていた地点は監視エリアからほんの50m程の場所だったそうだ。

「その位なら目をつむってあげても」というのが正直な心情だ。

戦後検閲をしかれていた時代、その作業はとりわけ機械的に行われていたそうだ。

検閲の時代の映画のシーンで
「奥さん、どうか一度だけ、接吻させて下さい。」
というセリフがあった。
「接吻」という言葉が不適切として、役所から帰ってきた検閲後の台本からは接吻の二文字が消えていた。
その結果できたセリフは
「奥さん、一度だけ、させて下さい。」
だったという。(竹内政明「名文どろぼう」文春新書)


杓子定規も考えものだ。