新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



手品で論理的思考力を身につける②

マッキンゼーというコンサルティング会社では、よく「Fact is fact」という言葉が用いられるのだそうです。
経験則ではなく、全て事実に基づいて考えましょうといった意味の言葉です。
これ、マジックを作る(分析する)上でも非常に大切な考え方だと思います。
よくテレビでやっているマジックなんかを見ていると、「どうやってタネを見破っているの?」と聞かれたりするのですが、僕がテレビでマジックのネタを見破るときは、だいたいこの「Fact is fact」を無意識に考えて行っています。
一応僕はこれでもマジックをかじっている人間なので、ここで堂々とネタばらしをする訳にはいかないのですが、少しだけ有名なマジックを使って、タネの見抜き方(というかFact is factという考え方)を解説してみようと思います。


例で使おうと思うマジックは、一時期テレビに出る多くのマジシャンが行っていた、トランプの山の真ん中に入れたカードが指を鳴らすと一番上に上がってくるというマジックです。
巷でエレベーターカードとか言われているやつですね(正式名称は違います)。
一番上にあるカード、あるいは相手に選んでもらったカードをトランプの真ん中に入れたのに、指を鳴らすと一番上に上がってきている。
非常にシンプルですが、とてもインパクトの強い現象だと思います。

よく行われるのは、相手の選んだカードをトランプの山の真ん中にいれる。
この段階で一番上のカードを見ても、相手の選んだカードではない。
それを相手の掌にのせて、指を鳴らす。
そして一番上のカードをお客様にめくってもらうと、演者は手も触れていないのにカードが一番上に上がってくるといった手順です。
これについて、まずは事実だけを抽出しましょう。

①カードを選ぶ

②真ん中に入れる

③一番上のカードを見せ、選んだカードでない事を確認する

④相手に渡す

⑤指を鳴らす

⑥選んだカードが一番上にくる

行った動作だけを取り出すと以上の⑥つの動作になります。
そして起こる現象は「カードが一番上にくる」というものです。
このマジックの仕掛けを分析する上で一番重要なのは、「いつカードが上に登ってくるのか」っていう事。
言うまでもないですが、指を鳴らしたらそれに反応して上に上がってくるなどという、超常現象なトランプなど売っていません(笑)
あくまでトランプは物理的なもの。
勝手に上に上がるなんて事はあり得ないのです。
とすると、④の「相手に渡す」という動作をした後は演者がトランプに触れていない以上、その前の段階で既に選んだカードが一番上に来ている以外にこの現象は起き得ないという事になります。
これは紛れもない「事実」です。
しかし、その一つ前の段階で③「一番上のカードを見せ、選んだカードでない事を確認する」というように一番上のカードが相手の選んだものでない事を証明している。

という事は、可能性としては⑴一番上のカードを見せたあと、相手の掌におくまでの間に、相手の選んだカードを一番上に置いている、もしくは⑵一番上のカードを見せているようで、実はそれは一番上のカードではなかったという2パターンに絞る事ができるわけです。
⑴の場合は恐らく相手に上のカードを確認してもらった直後にコッソリ一番上に(予め手の中に隠していた)相手が選んだカードを戻すしか方法はないでしょう。
そして⑵の場合であれば恐らく一番上のカードをめくっているように見せかけて、実は2枚同時にめくっているという可能性が考えられます。

これ以上は完全なネタバラしになってしまうので、細かな技法については書きませんが、ここでポイントとなるのは、どちらの場合にしても、「既に一番上に相手の選んだカードがなければならない」という部分です。
カードを手の中に隠している場合にしろ二枚同時にめくっている場合にしろ、選んだカードが一番上になければなりません。
ってことは、②の「真ん中に入れる」という行為自体がフェイクという事になるのです。
こう考えると、次に考えるのは「どうやってカードを真ん中に入れたように見せるのか」という点になります。
事実として演者は一枚のカードを手にとって、トランプのヤマの真ん中にいれています。
ほとんどのマジシャンが、真ん中にカードを入れたあと、トランプのヤマを持って不自然な動作はしていません。
って事は考えられるのは「真ん中に入れたカードが選んで貰った物ではない」という可能性でしょう。
①の「選んで貰う」という動作は、相手に委ねられている以上、イカサマの使用がありません。

以上を踏まえて、エレベーターカードのタネに関する仮説を立ててみると先の6つの動作は、下のように書き換えられます。
①カードを選ぶ

②選んで貰ったカードに見せかけて別のカードをトランプのヤマの真ん中に入れる

③一番上に置いてある相手に選んで貰ったカードをコッソリ掌に隠すor二枚目をめくるなどして、一番上に選んで貰ったカードが内容に演出する

④相手に渡す

⑤指を鳴らす

⑥選んだカードが一番上にくる
こんな感じで仮説をたてたら、あとはそれに基づいて自分なりにマジックをやってみます。
そして、テレビなどでやっていた通りの動きになったら、それが正解という事です。

すごい現象のネタになればなるほど、手順が複雑にはなりますが、そのタネは基本的に事実にそって順序立てを行い、そして仮説を立てるという手順で見抜けます。

もちろんマジックはタネを見抜く事が目的ではなく、エンターテイメントとして現象を楽しむものです。
その点だけは強調させて下さい。
その上で、思考訓練として面白いという意味で紹介させていただきました。
ひとつ分かると、マジシャンの思考法が分かって面白いと思います。
興味のある方はお試し下さい!!