新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



仕組みを見抜く力ための「帰納的スキル習得」のススメ

小さい頃からやっていてよかったと思うことを1つ挙げてくれと言われたら、僕は迷わず「手品」と答えると思います。

もちろん今の生活を楽しむのに役に立っているスキルは他にはいくらでもあるのですが、手品は具体的な恩恵以上に、僕の思考力そのものを引き上げるのに大きく影響を与えてくれたように思うのです。

今でこそら気になる手品があればすぐにネタを買えるわけですが、手品を始めたての中学生の僕には、タネの解説は高すぎる商品でした。

だから、凄いなと思う手品は録画やyoutubeで一コマずつ止めて分析し、自分なりの仮説に基づいて元ネタを超えるみたいなことをしていました。

(当時は動画の発信がこれほど普及しておらず、タネの解説はほぼありませんでした)

そんなわけで中学〜高校にかけての学生時代の僕は、四六時中手品のタネについて仮説を考え、実際にやってみるみたいなことをしていました。

 

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ありがたいことに、ときどき僕の論理的思考力や抽象化能力を褒めていただくことがあります。

で、そのルーツを聞かれたりすることがあるのですが、僕の場合、それは元々あった才能でないのはもちろん、受験勉強で身につけたものでも、社会人になって意識的に身につけた物でもなく、恐らく手品で身につけたものだったりします。

あり得ない現象を起こすにはどうすればいいのか?という思考を手品で繰り返すうちに、①目の前の現象を理由付けて説明する力と②現象を系統立てて整理する力が身についたような気がするのです。

 

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僕が好きな評論家の岡田斗司夫さんが、物事を見極めるための例で、「肉じゃがとカレー問題」というお話をよくします。

岡田さん曰く、「女性が『得意料理はカレーと肉じゃがです』っていうと料理が得意なように聞こえるけど、あれ、実は材料も調理法も殆ど同じで、味付けだけがちょっとちがうんだよね。」だそう。

確かに(細かな工程にケチをつければ別ですが)味付けがみりんとしょう油なのかスパイスなのかという違いを除けば、殆ど工程は同じです。

 

岡田さんのこの、肉じゃがとカレーを同じものとする見方は、俗に抽象化なんて言われたりしますが、これをやる根っこにあるのは、先ほど述べた①目の前の現象を理由付けて説明する力と②現象を系統立てて整理する力であるように思います。

僕にとっては、いずれも(半ば偶然」手品から生まれてきたものでした。

 

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黒子のバスケの赤司くんが、初動の一歩目をずらすことで敵のスーパーシュートを止めるという神業を披露するシーンがあります。

僕はこのシーンを見たとき、極めて手品のタネ明かし的だなと思いました。

みんなが圧倒されるスーパーシュートを要素に分けて構造を分類することで、仕掛けを知り、それをハックしたわけです。

この思考は、あらゆる物事に転用可能な便利なスキルであるように思います。

 

ここからは実際の例で現象を要素と仕組みに分解してみたいと思います。

1つ目は少し前に爆発的な伸びを見せた、オリラジの中田敦彦さんのYouTube大学というチャンネルについて。

このチャンネルは一見すると、中田さんが自分の知っている知識を楽しく分かりやすくまとめて抗議する番組に見えますが、1つ1つの動画を見ると、ほとんどの分野の説明が、いわゆるそのジャンルにおける有名どころの本の中田さんの要約であることに気がつきます。

(たまに本流でない本の知識を取り上げて炎上するイメージ)

これを持って抽象化するならば、中田さんの番組は、「毎回勉強になる知識を教えてくれる番組」ではなくて、「中田さんの読者感想文をただただ楽しむ番組」になるわけです。

 

前田祐二さんの『メモの魔力』や見城徹さんの『たったひとりの熱狂』を編集した天才編集者の箕輪厚介さんという編集者がいるのですが、彼の編集した作品群を見たとき、彼の凄いのはビジネス書というカテゴリで心情に訴えるコンテンツを生み出したという部分であることが分かります。

僕はそれをもって、箕輪さんの凄いところは、①本来意識の高いビジネスマンは自己啓発と相性が良い、②意識の高い人は自己啓発が嫌いという特徴を見抜き、いち早く「自己啓発の棚にある内容を表面的にはビジネス書のように調えて、市場に広めるのが得意な人」という印象です。

彼の功績を僕が手品のように分解するとしたら、「自己啓発の棚に並ぶ本をビジネスの棚に並べた人」となるわけです。

 

◆◆◆

こんな風に、僕は何かしら事象に出くわした際、なんでもかんでも抽象化して理解するくせがあり、結果としてその習慣が社会に出てから物凄く役に立っていたりします。

先ほど述べた通り、それをどう身につけたかと言われれば、100%手品のおかげだと思います。

物事をラクに運ぶためには仕組みを正確に見抜くことが効果的なわけですが、その能力を身につける訓練として、手品は非常に相性が良い。

ロジカルシンキングの本を読み漁って、頑張ってこうした力を身につけようとする人もいますが、どうしても抽象化や構造化には到達できない気がするのです。

だからといって、その場で「だから手品を学ぼう」なんて突飛なアイデアにはたどり着かないはず。

そうではなくて本当に身につく学びというのは、何かしら知識を得たときに、自分の経験と瞬時に結びつく時に得られるもののような気がします。

僕の場合はそれが手品でしたが、人によってはもしかしたらピアノかもしれないし、パチンコかもしれない(笑)

どんなものでも一定の追究を始めれば、意識無意識は別に、こうした抽象化にたどり着くような気がします。

そして、そこで得られる理解は、いわゆるスキル本にある情報の何倍も買い物になる。

現代はとにかくスキルを紹介する情報に溢れるので、ついつい「スキルは商品である」と錯覚しがちですが、どこまでいってもスキルは「経験を帰納的に解釈したもの」という事実は揺らがない気がします。

だからこそ、自分の好きなことに没頭し、それを抽象化するみたいな方が、長期的にクリアな論理的思考力が得られる気がするのです。

高度に分かりやすく解説したロジカルシンキング本が悪いとは思いませんが、そういった演繹的な技術習得は無駄がないが故に身につかない気がします。

とにかく演繹的なコンテンツが好まれる現代だからこそ、帰納的な習得を意識すれば長期的な価値になる。

なんとなく僕はそんな気がするのです。

学生時代の手品に没入した僕のことを思い出しながら、そんなことを考えました。

 

アイキャッチは僕の人生を変えたこの一冊(笑)

「あらゆる現象は説明できる」という今の僕のスタンスを作ってくれた本である様な気がします。

カードマジック事典

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