新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



死刑を廃止することで超凶悪な犯罪者は「捕まえられなく」なる

今年の1月に起きたシャルリーエブド襲撃事件について、面白い角度から切り込んでいる対談に出会いました。
なぜフランスは犯人を捕まえずに射殺したかという内容。
未知の敵であるISISの情報を多く持っているであろう犯人です。
本来ならば捕まえて尋問にかけ、少しでも敵さんの情報を引き出すのが合理的な戦略のはず。
フランス側が犯人を捕まえようとはせず射殺したのは、一度捕まえてしまえば「殺せない」からということがこの対談で指摘されていました。

フランスは1981年に死刑を廃止しています。
さらに2004年には悪質なテロ行為に関しては死刑を復活させるという法案が提出されてはいるものの、否決となっています。
つまりフランスでは、一度捕まえてしまえば、どんなに残虐な行為をした人でも死刑にすることはできないのです。
シャルリーエブド襲撃事件のように、フランス人に強い恐怖を与える事件が起こった時のことを考えてみます。
制度上はどんなに凶悪な犯罪者も死刑にできない。
しかし自分たちの生活を脅かされた国民感情としては極めて凶悪なテロリストで同じ国民を殺されたのに死刑にできないというのはなかなか納得がいかないものです。
制度上死刑は不可能である一方で、死刑に相当する措置を取らなければ国民を納得させられない。
そうなったとき、捕まえるのではなく、強行突入で犯人を射殺してしまうというのが、一番有効な手段だったりします。

シャルリーエブド襲撃事件をもって、佐藤優さんはイスラム国の脅威と共にヨーロッパの国々の冷酷性が見えたと言っています。
捕まえたら死刑にできないからこそ、貴重な情報を得られるチャンスを逃してでもその場で射殺してしまう。
フランスは法に則って「死刑」を執行したと見ることもできるのです。
これから死刑以外に国民を納得させられないような凶悪な事件が起きた場合、死刑が認められていない国では、フランスがシャルリーエブド襲撃事件で行ったように、捕まえるのではなくその場で殺すという選択が増えるように思います。
死刑がないために、度を超えた凶悪犯罪者は「捕まえられない」。
今まで想定され得るどんな罪よりも死刑の方が思い罰だと考えられていました。
しかしISISのような集団が出てきて、死刑を超える凶悪な犯罪というものが生まれつつあるように思います。
今までは「死刑>あらゆる犯罪」という不等式であったのが「死刑<あらゆる犯罪」という可能性も出てきた。
そうなったときに、国として死刑にできないから射殺するという選択肢が示された。
フランスにそういう意図があったかどうかではなく、方法として可能であるということが示されたことが重要です。

シャルリーエブド襲撃事件はそうした可能性を見せたという意味でも、かなり重要な今後の分岐点になるような事件だったように思います。

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