新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



音楽が売れないのは無料だからではなく、視聴回数が減ったから

恋愛結婚が増えると離婚が増えるとか、縁故採用から就活が一般的になるとミスマッチングが起きやすくなるなんてことをよく聞きます。

僕はこれらの例に限らず、選択肢が多くなると受け手はわがままになるという関係があると考えています。

たとえば、縁故採用やお見合い結婚/許嫁結婚の場合、そもそも選択肢が一つ、或いは数種類しか用意されていません。

そのため、選ぶ側は必然的に「ここでもいいかな」という思考が働きます。

つまり、消極的であれ納得した上で選ぶことができるわけです。

それに対して、選択肢が完全に自由(であるように一見して見える)場合、僕らは自分の(本当は存在しない)欲求を完璧に満たす選択肢を探そうとします。

そのため、いざ選んだ後は「あれも違う」「これも違う」と、減点法的に粗探しをするようになる。

結果として同じ質のものであっても、限られた選択の中で選んだ場合と膨大な選択肢から好きに選んだ場合では、後者の方が満足度が低下するのです。

 

同じものであっても選択肢の広さがあると満足度が低下するというのは、コンテンツの世界でも言えることだと思います。

YouTubeなどの動画サイトが普及して以来、音楽産業の売り上げが激減したと言われています。

で、その理由は無料で音楽が手に入るからと言われていますが、僕は必ずしもそうではないんじゃないかと思うんです。

たとえば、YouTubeが流行る前だって、お金を払ってまで聞きたくない人は、テレビやラジオで録音して聞いていました。

或いは、興味があるにしても、TSUTAYAのレンタルでオッケーというのがほとんどだったように思います。

CDを買うという行為まで結びついているのは、「その曲自体がいいと思ったから」ではなく、アーティストのファン(もしくはその曲自体のファン)になったからです。

アーティストを応援している気持ちがあるから、レンタルでコピーするのではなく、正規のものを手元に置いておく、その曲のファンになったから、音源だけでなくパッケージも置いておく。

曲が好きだからCDを買うのではなく、まずはファンになることありきなのがCDを購入するという行為であるように思うのです。

 

僕が考えるYouTubeが出てきてCDが売れなくなった根本原因は、「無料で手に入る」からではなく、選択肢が膨大になってしまい、そもそもひと作品あたりにかけるリスナーの熱量が減ったことにあるというものです。

録画したテレビで何度も音楽を再生するうちにその作品が好きになって、CDを買いに行っていたという経験をした人は多いのではないでしょうか。

僕たちには、何度もそれと接しているうちに好きになるという感情の動きがあります。

仮に僕たちは1週間の音楽を聴く回数が500回、そして一曲(或いは一つのアーティストの曲を)100回聴いたらそのCDを買いたくなるとしましょう。

YouTubeのようなプラットフォームがなかった時代は、せいぜいテレビの音楽番組で曲を聴くくらいでした。

どの番組でも基本的にリリースされたばかりの曲が流されるので、毎週多くても10曲くらいしか情報として僕らの元には入ってきません。

先に設定したように、1週間で500回くらいが音楽を聴ける限度であるとすると、平均して一曲あたり50回、好きな曲があれば、100回くらい聴くのはそう珍しいことではありません。

 

YouTubeのようなプラットフォームが広がった現在では、僕たちはあらゆる音楽にアクセスできます。

それに対して音楽を聴くのに割ける時間は以前のまま。

1週間で100回しか音楽を聴く時間はない状態で、仮に聴ける音楽の種類は50種類になったと考えれば、一曲あたりに割ける回数は2回です。

そもそもある曲を好きになるまでに要する聴いた回数が全然足りないのです。

 

上に書いたような理由から、僕は音楽業界の売り上げが減ったのは、それまでは常套手段であった、新曲を聴くことによってファンになるという間口がなくなってしまったことにあると考えています。

無料で聴けることが問題なのではなく、無料だからこそ一曲あたりの視聴回数が減ったことが問題であり、何らかの方法で視聴回数をとにかく増やすことが大切。

視聴回数を増やしてファンを作る。

それが、今後の音楽業界が生き残るために考える戦略じゃないのかなあと思ったりします。

 

アイキャッチドレスコーズの新曲「人間ビデオ」

 

人間ビデオ【溺れる盤】

人間ビデオ【溺れる盤】