「パッと頭に浮かぶ絵画を5個あげてください。」
そんな風に言われると、多分頭に浮かぶ絵画の大半は西洋画になるの人がほとんとではないでしょうか?
僕の場合はこんな感じです。
そこに浮世絵や墨絵、大和絵に錦絵なんかが浮かぶ人って、日本人でもほとんどいないような気がします。
でも、僕たちは意識している以上に自分自身の生活に日本画的な構造が染み付いているのです。
ふとそんな事を思ったのでまとめてみようと思います。
日本画と西洋画の最大の違いは、視点の所在にあると言えるでしょう。
下の二枚の絵を見比べて下さい。
上の日本画と下の西洋画を比べたとき、最も異なる点は視点の是非です。
西洋画では、絵の中心から奥に向かって一本の軸が設けられ、そこを起点に遠近法によって、遠くのものは小さく、近くのものは大きくなるように描かれています。
一方で日本の絵は、やや上の角度から風景を俯瞰したかのような配置で描かれ、そこには中心となる縦軸が存在していません。
日本画には、縦の遠近感が存在せず、どちらかといえば、雲に区切られた並列配置で構成が作られているのです。
現在をいきる僕たちにとって、遠近法が自然に身についているため、どこか日本画的な絵の構図は違和感を感じます。
そのため、先に述べたように「思いついた絵を5つ挙げろ」などと言われると、日本画よりも西洋画が先に頭に浮かびやすいのだと思います。
では、日本画的な構図は、現代を生きる日本人にとって、馴染みの薄いものなのでしょうか。
僕はそんなことはないと思っています。
単に「絵」と言われた時に頭に浮かびやすいのが西洋画的な遠近法に基づいた構図であるというだけで、むしろ別の分野においては、伝統的な日本の構図が色濃く根付いているようにさえ感じます。
その代表的なものがゲームです。
下の写真を見てください。
ポケモンの世界はまさに遠近感を排した、俯瞰的な画像で描かれています。
これはまさに日本的な物の描き方が反映された例であると言えます。
比較してみると、視点を定めないということや、俯瞰的であるということなど、いくつか共通項が見いだせます。
こうした特徴は、テレビゲームに限りません。
人生ゲームなどのロールプレイングゲームにも言えることでしょう。
もう一つ、例を挙げてみます。
明確に背景がレイヤーに分かれた屏風絵と、スーパーマリオに見られる横方向的な動きは、どこか共通するところがあります。
比較のために西洋のゲームと絵画を挙げておきます。
奥に向かって伸びる中心線を基準にした遠近法で構成されています。
おそらく、どっちがなじみやすいかと言われたとき、多くの日本人が、ポケモンやマリオの構図を選択すると思うのです。
このように僕たちの中には、日頃意識している以上に日本的な空間認識が根付いています。
そうした伝統的な空間感覚を利用することで、様々な革新的ツールが生み出せるのではないかと思うのです。
※猪子寿之さんがTEDxで話した内容を元に書いたエントリです。