新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



Kissの2大結婚マンガ「タラレバ」「逃げ恥」に学ぶ結婚できない人の比較

シミルボンさんに寄稿するために書いた記事でしたが、大幅に書き換えてしまったので、原案は僕のブログのエントリとしてアップすることにしました。

シミルボンさんにアップした(シミルボン)のは現代の若者の結婚観に関して書いたもので、こちらはマンガの考察中心です。

 

ガッキーこと新垣結衣さんがエンディングで踊る「恋ダンス」が話題となっているドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」。
海野つなみ先生のドラマの原作となったマンガが、講談社の少女マンガ誌「Kiss」で連載されています。
この講談社の「Kiss」という雑誌、結婚できない30代女性のリアルすぎる日常を描いて話題になった(そしてドラマ化も決定しました!)東村アキコ先生の「東京タラレバ娘」も連載されており、とても攻めている印象です。
「逃げ恥」と「タラレバ」という2作品。
単体でも充分に面白いのですが、それぞれを比較しながら読むことで、一層面白さが増して感じられます。
というのもこの2作品、結婚というテーマに関するアプローチの仕方は真逆であるにも関わらず、着眼点が非常に似通っているのです。
真逆のアプローチであるも関わらず、どこか共通項を見出してしまうのは、両作の作者がプロデューサー的なポジションのキャラクターを登場させているからなのだと思います(そして恐らく作者の視点はそこに乗っかっています)。
「タラレバ」には、「あのときこうしていたら、、」「もう少しこうであれば、、」と、「~たら」や「~れば」とグチをこぼしているアラサーOLの主人公たちの前に、イケメン美男子の若いモデルKEYが現れ、ひょんなことから関わるようになってきます。
KEYは主人公たちの言い草や振る舞いを見て、いつもキツい言葉で現実を突きつける。
「タラレバ」でKEYは、主人公たちを観察し、冷たくて、それも横柄な言い方ではあるけれど、時に主人公たちにアドバイスを受け与えるキャラクターとして登場するのです。
結婚したいけどできない女性たちを観察するのがKEYであるとしたら、結婚しようとしない男性を観察しているのが、「逃げ恥」の主人公みくりです。
みくりは就活で上手くいかず、それまで派遣で勤めていた会社にもクビになった仕事を探している女の子。
とあるきっかけから、次の仕事が見つかるまでのバイトとして家事代行業に行っていた男性と結婚することになります。
結婚といっても、みくりはお金を貰って家事などをする契約結婚
初めはビジネスだと割り切っていたのだけれど、生活するうちに徐々に2人は惹かれあって、と同時に契約結婚であることが少しずつ周囲にばれて問題が起こりつつ、、
あまりあらすじを書いたらネタバレになってしまうので、内容についてはこの辺に。
みくりの面白いところは、大学で心理学を専攻していて、しかも院を出ているため、夫の津崎を中心に、出会う男性の心情を分析しようとしてしまう性格です。
タラレバ娘のKEYとは違うタイプではありますが、みくりも人を観察するタイプのキャラクター。
それによって男キャラの心情が引き立つように思います。

2作品に関して、読んでいて感じる共通点は他にもあります。
その一つが、作中で度々妄想の世界に飛ぶこと。
東京タラレバ娘」も「逃げるは恥だが役に立つ」も、物語が進んでいるところでいきなり登場人物の脳内会議の様子などが入ります。
しかもそれは空想のキャラクターと相談する形であったり何らかのパロディであったりと非常にコミカルです。
僕は勝手にこの手の描き方は「ちびまる子ちゃん」あたりがルーツだと思っているのですが、東村アキコ先生も海野つなみ先生も、こうした描写を所々に取り入れます。
きっと両先生のルーツが近いところにあって、それもこの2作にどこか共通する部分を感じる理由なのだと思います。

「タラレバ」と「逃げ恥」を読んでいると、結婚して幸せになるために必要な事を教えてくれているように感じます。
「タラレバ」で結婚したいと言っている女の人たちは、みんな「自分の欲求」を叶えようとして、そのせいで幸せにならないでいる。
それに対して「逃げ恥」のみくりと津崎は、「ビジネス」ということを言い訳に相手との距離ばかりを考えすぎて、結局幸せなるのとのできない2人。
自分の欲求ばかりで幸せになることのできない人たちと、相手との距離を気にしてばかりで幸せになれない2人。
ちょうど20代後半~30代前半くらいまでの人で幸せを求めているのに上手くいかないというモヤモヤを抱えている場合、このいずれかのパターンである場合が多いのではないでしょうか?(だからこそこの2作が、注目されているようにも見えます)
この2作品に出てくる登場人物たちは、そのまま現代の結婚できない、あるいは結婚の意思がない人たちの象徴です。
今はどちらの作品の登場人物も、まさにその問題に振り回されている真っ最中ですが、恐らく最終回にはどちらも何らかの「幸せな形」を手に入れるはずです。
そしてその結末は、現代の20~30代で幸せになりたいと思っている人たちに何らかの答えを提示してくれるものになるのではないかと思うのです。
単なる作品としての面白さがだけでなく、「タラレバ」「逃げ恥」の作者が出す、現代の結婚できない・結婚しない若者に対するアンサーも非常に気になりなります。
あるマンガ家が昔、「人気のマンガは何かしら社会の空気を描いている」と言っていました。
東京タラレバ娘」と「逃げるは恥だが役に立つ」の2作品は、まさに「結婚」という現代の若者の直面する悩みがテーマです。

結婚とはなにか?
結婚に過度な期待を抱いてしまっている人には「東京タラレバ娘」が、結婚をコストパフォーマンスで考えてしまう人には「逃げるは恥だが役に立つ」が、それぞれ答えを出す。
僕自身が結婚ということを考えなければならない年齢であることもあり、この2作品が真逆のアプローチからどういう結末にたどり着くのかが非常に気になります。

 

アイキャッチはガッキーのCD

虹(通常盤)

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