この記事では、2025年関西大学2月1日入試で出題された『浜松中納言物語』(第2巻)の本文現代語訳と内容解説を掲載しています。
関西大学の古文対策として本文の流れがつかみやすいよう、受験生向けに読みやすい現代語に訳しています。
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全体の要約
唐から帰国した中納言が、光り輝くような姿で参内しました。帝はその美しさに涙し、夜を徹しての合奏で再会を祝いますが、中納言の心には唐で惜別した女性への思慕が去来します。その後参上した中宮の御前でも、中納言は唐での記憶と目の前の情景を重ねて物思いに耽る。女房から安否を問う歌を贈られますが、高貴な中宮への思慕と異国での未練の狭間で揺れ動きながら、名残惜しさを残して退出するのでした。
本文の現代語訳
華麗な参内と周囲の熱狂
宮中からしきりに召し出しがあるので、中納言が参内なさるそのご様子は並大抵ではありません。素晴らしい装束の着こなしを整えて、久しぶりに表舞台へお出ましになる姿は、目がまぶしいほどです。この世のものとは思えない香りが、百歩先まで漂うほどで、数日間降り積もった雪が今もちらつくなか、いっそう光り輝くようなお姿に、道を行き交う人々も、反映して拝見しています。内裏の門を歩み入りなさるときから、特に深い考えもなさそうな身分の低い者たちや、女官の長官までもが、あまりの素晴らしさに涙を流して驚き見守っています。ましてや各お局の女性たちが、細殿からこぼれんばかりに身を乗り出して、苦しいほどに見送るのを、中納言が横目でちらりと見ながら通り過ぎていく様子は、見送る側にとっては残念で、妬ましく思えるほどでした。
帝との再会と心に去来する唐の記憶
帝の御前に召されて参上したところ、数年ぶりに対面なさる帝は、あまりにこの世のものとは思えぬ美しさに驚き、しばらくの間は言葉もかけられず、涙をこぼされるご様子です。そのお姿に中納言も恐縮し、平然とはしていられません。唐の国での出来事などを詳しくお尋ねになるので、すぐにお暇(いとま)することもできません。日が暮れると、雪はいっそう激しく降り続けますが、月もたいそう趣深く澄み渡って昇ってきました。帝が「音楽の遊びなども興ざめに思えて、楽器の音も聞かずに過ごしてきたが」とおっしゃって、合奏が始まります。中納言は、日本でのすべてが懐かしく感じられる一方で、唐で過ごした日々のことなどが事あるごとに思い出され、心を研ぎ澄ましてかき鳴らす箏(そう)の琴の音は、趣深くしみじみとした情趣がこの上ありません。いつものことながら、その音色に涙を止められる人は誰もいませんでした。
月下の和歌贈答と庭の舞
帝からは、 「別れていた間は、空の月も曇りがちで、今宵のように澄み渡った光を見ることはなかった」 とお言葉があり、並々ならぬご寵愛に、中納言はかたじけなく思います。中納言は、 「(この月を)日本にいる私への形見だと思って、遠く唐の空で見上げていた時は、本当に悲しいものでした」 とお答えして、庭に下りて拝領した御衣(おんぞ)への謝意を表す舞を舞われました。
中宮への参上と募る哀惜
夜も更けたので、中納言は中宮(藤壺)の御方へ参上しました。きっと参上するだろうと準備していた心憎いほど配慮の行き届いた人々が大勢おり、どこからともなく漂う薫物の香りが部屋中に満ちています。中納言が待ちわびていた甲斐のある素晴らしい香りをまとって参上されると、その珍しくも雅なお姿を、中宮もひそかにお出ましになってご覧になっているのでしょうか。中納言は、胸の高鳴りを感じるにつけ、唐の河陽県で見た御簾の前の光景がふと思い出され、日本がどこか遠い場所のように感じられます。それでいて、やはりあちらとは違う日本へ帰ろうとした際、唐の后が懐かしく温かい言葉をかけてくださったご様子などは、身にしみて切なく思い出され、中宮とお話ししていても心はうつろで、うっかり言い間違いをしてしまいそうなほどでした。中納言は御簾の内に向けて、 「(私が中宮様に)お慕い申し上げるなど、恐れ多いことでした。もしあなたが、紫の雲(皇族の血筋)に繋がる高貴な方でなかったならば(これほど苦しまずに済んだのに)」 と心の中で思うのも、我ながら身の程知らずで恐ろしいことです。
女房の詠みかけと夜明けの退出
念入りに準備された御簾の内から、とりとめもない会話が聞こえてくるなかで、 「西へ沈んでいく(唐へ向かう)月の光を見て、真っ先にあなたのことを思いやった私の気持ちを、ご存知なかったのでしょうか」 と詠みかける女房(少将内侍)がいました。中納言は、 「どなたでしょうか。西に傾く夜空の月を見て、私の安否を思い出してくれた方は」 と答え、正体を探りながら思い出そうとする様子は、その場にいた身にしみて彼を想う多くの女性たちの中でも、一部の者には珍しく映ったのでしょうか。紫の雲に縁のある中宮のいらっしゃる場所で、しんみりとした情趣を漂わせる中納言のお姿を拝見して、ついつい話し込んでしまいそうでしたが、中納言は名残惜しいくらいで退出なさいました。
出典紹介『浜松中納言物語』
平安時代後期に成立した全五巻の物語で、作者は『更級日記』の著者である菅原孝標女とする説が有力です。最大の特徴は、主人公の中納言が亡き父の転生者に会うために唐へ渡るという「渡唐説話」を軸に、前世の因縁が次世へと引き継がれる「夢と転生(輪回)」の思想が色濃く反映されている点にあります。
中納言は渡航先の唐で父の生まれ変わりである第三皇子と対面し、さらにその母である唐の后と恋に落ちます。帰国後も、日本に残した愛執と異国への未練、そして複雑な宿命に翻弄されながら、亡き面影を追い求める中納言の苦悩が描かれます。文学史的には『源氏物語』の強い影響下にありながら、舞台を異国に広げるスケールの大きさと、仏教的な因果応報に基づいた緻密な構成を持つ、物語文学の発展を示す重要な一作です。
関西大学2025年古文攻略のポイント
関西大学の問題の特徴の一つとして、記述の現代語訳をのぞき傍線が存在しないという点が挙げられます。傍線がない上に比較的長文であるため、関西大学の古文を解くには意味段落を意識した読解が不可欠となります。
今回の浜松中納言物語に関しては、意味段落がはっきりしているので、こうした読解の練習にはちょうどよかったのではないでしょうか。各設問と意味段落を照らし合わせつつ、効率的に読み進める訓練をしましょう。
2025年古文の記述現代語訳についての解説
この年の現代語訳の記述の解答手順位ついて、下記の記事で詳しく解説をしています。
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