新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



最近のJ-POPが僕らに刺さらない理由を冷静に考えた

個人的に今興味のあるものの一つに、「LINE以後の恋愛の歌」があります。
ここ最近のJ-POPのヒットチャートを見るとジャニーズにEXILE系グループ、AKBグループ等々、アイドル系のグループばかりが目立ちます。
そんな現状から、よく最近のJ-POPにはいい曲がなくなったなんてことを耳にします。
これは自分が最新の曲に疎くなったということが最大の原因であると思うのですが、僕自身、今の曲よりも昔の曲のほうがいいなあと感じるものが多いのは事実です。
ただ、その原因をアイドルばかりになったからとは考えて折らず、もうちょっと社会環境の変化的な観点に原因を見ています。

ここ数年、LINEが急速に普及したことで、僕達の恋愛関係のコミュニケーションは急速に変化しました。
LINE以前であれば、ケータイの電話とメールでのやりとりでした。
ケータイ電話は時間と場所が限られて、メールではタイムラグが生じます。
もう少し前になると、固定電話への連絡、手紙でのやりとりということになるでしょう。
いずれにせよ時間や場所の制約、或いはやり取りにおけるタイムラグが存在しました。
固定電話のときであれば家に電話を掛けるとお父さんが出てドッキリということだったり、待ち合わせ場所に行ってもなかなか見つけられずすれ違いということだったりが起こったでしょう。
ケータイ世代であれば最近なかなか電話に出てくれないとか、メールの返事をもどかしい気持ちでということがありました。
現在のコミュニケーションにおける最大の特徴は、こうした恋愛におけるもどかしさやハプニングを生み出す、時間・場所の制約とタイムラグがほぼゼロに近づいていることです。

だから恋愛の曲が淡白になったと言いたいわけではありません。
今までの連絡手段動揺に、LINEでのやりとにだって、LINEならではの新たな問題が出てくるはずです。
僕が注目しているのは、LINEでのやり取りが一般的になって日が浅いため、歌詞を書くのに必要な十分な塾生がまだできていないのではないかということです。
LINEがこれだけ普及して、まだ数年しか立っていません。
そのためそのツールを使って何十、何百というやり取りをして、その中で歌詞にするのに十分なストックを蓄えたアーティストというのが、まだ環境的に出ない状況だと思うのです。
たとえばケータイが連絡手段として当然のものとして触れてきた世代のアーティストが、10年くらい様々なやりとりの経験をしているからこそ、誰もが共感するような歌詞が書けるのだと思います。
LINEは生まれてまだ数年。
そもそもLINEネイティブのアーティストなんて、まだほとんどいないのが現状です。
でも、実際に僕たちの生活には驚くべきスピードでLINEを通じたコミュニケーションが浸透してしまった。
そうした社会状況の変化に合わせてなんとかLINE的なやり取りを歌にしようとしても、まだ作り手側の経験のストックが足りてないため、どうしても薄味な楽曲に仕上がってしまう。
典型例としてLINEで説明しましたが、他の新たなコミュニケーション方法に関しても、総じて経験のストックが溜まる速さよりも社会に普及する早さが圧倒的に速い状況だと思います。
だからといって昔のコミュニケーション手段に基づいた恋愛経験の歌を書いたところで、実際のコミュニケーションのあり方は完全に変貌しているために、刺さらない。
自分達が積み重ねた経験を元にして書いた曲は現実とのギャップがあり、社会変化に合わせた楽曲を書こうとするには経験のストックが少なすぎる。
現在のJ-POPに、(少なくとも僕にとって)刺さるものがないと感じてしまう最大の原因はここにあるように思います。

僕が楽しみにしているのは、これからの数年後のJ-POPの歌詞の世界観です。
2020年手前くらいになると、LINEでのコミュニケーションが当たり前になった世代がアーティストとして活躍するくらいの年代になります。
そのときに出てくる曲には、LINEならではの感情の機微が、リアルに表出していると思うのです。
今はそうしたコミュニケーションのあり方の過渡期。
成熟した後の楽曲でどんなものが登場するか、非常に楽しみだったりします。