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新・薄口コラム

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



2011年仏教大学一般A「鈴屋集」(本居宣長)現代語訳

赤本古文を訳してみた、

赤本に全訳が載っていないので、全訳を作ってみました。
内容の背景を捉えることを第一目標としているので、直訳とは若干異なるところがありますが、ご了承下さい。

(とくに敬語に関しては、話の筋を理解しやすくするためにあえて無視している箇所が多くあります)
順次赤本に全訳が載っていない古典の文章の訳をアップしていこうと思います。

(ところどころいい加減ですがご了承下さい・・・)

 

 

 ある人が、9月の9日に、今日は高いところに登る日だということで、奥まったところにある山里に住んでいて、そのついでに長く連絡をとっていなかった人の下を訪ねることにした。やや深く入っていったところであるので、その道は非常に困るものだった。そこら中に咲くとりどりの花はみな色あせて、今にも枯れようとしている中、一本の背高く残っている花すすきの穂がしっとりと濡れて見えるその姿を「素晴らしい、深い山道を行くと、このように美しいものに会うこともあるのだなあ。」と思いながらさらに道を奥へと進む。やがて、道のほとり近く澄んで清らかに流れる谷川が見えた。その谷川は普通のものと違い、非常にいい香りがする。興味を持って足を休めがてら少しの間そこで立ち止まることにした。「もしかしたら菊の花についた雫が落ちたものが集まって、この川に流れきているのだろう。」。そう思うと「桃花源記」ではないがこの川の上流に素晴らしい景色が広がっているのではないかと、上流を訪ねてみたくなって、長く連絡を取り合っていない友人の下を尋ねるという当初の目的を忘れ、この谷川の流れに沿って上流を目指すことにした。しっかりとした道もない崖づたいを辿っていったため、普通の道を進むのよりもいっそう大変で、足の裏は痛みつらいのをなんとか我慢しながら、なんとか登っていくうちに、思っていた通り、菊の花が生い茂っているところにたどり着いた。今が盛りとばかりに乱れ咲く花の色香は奥にいくほどいっそう深くなっているのだろうと思い、ひたむきに分け入っていくとそこは、少しの隙間もないほどに菊の花が咲いていて、袖にかかった露を打ち払うには千年もかかるだろうと程だった。そこはまるで仙宮にでもたどり着いた心地がする場所であった。
 目で見たものを言い表すこともできないほどの景色が広がり、またその香りは一面に充満していた。あちらに目を向けると、大岩の側に腰掛けて、目の前を流れる川の流れに視線を落とし、酒を飲む人がいた。その人の風貌はたいそう年老いて頭に黒髪も残っておらず、髭が非常に長いなど、全てが神々しく見えた。本当にあやしく、噂に聞く仙人というものではないかと興味を持って、その正体を聞きたくなったので、近くに寄って「このように世間から離れて深い山の中に一人で暮らしているのは、どういう理由からなのでしょうか。」と聞くと、ゆっくりと見上げて、「これはこれは。どこからやってきたのでしょうか。私はこうして岩に囲まれて何百年も暮らしてきました。まったくもって人が尋ねてくることもないので、せめてこの菊の花が咲く秋くらいはここを尋ねてくる人もいるのではないかと、たえず心待ちにしていたのです。」と、たいそう神々しいこえで語った。今日このように尋ねてきたことがうれしく思えたような様子で、
菊の花の咲くこの地で思いわずらうこともなく過ごして、長寿を保つことができました
と詠みながら、持っていた杯を差し出したのを、まるで夢のように思って、返事の言葉も思いつかず、ただ心に思うままに、
菊の露を辿ってきたら、他に類をみないほどに長く生きているであろうあなたの年齢を聞くことができました。私もあなたと千年の契りを交わしましょう。
といって、酒を酌み交わすのも、世間で普通にあることなのだろうか。いや、素晴らしい出会いであるはずだ。 

 

 

 

佛教大学 (2013年版 大学入試シリーズ)

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