顧客が塾に求めることは何かということを、常々考えています。
もちろんそれを表層で捉えれば、「成績が上がる」という一点に集約されるのでしょう。
しかしもっと細分化していけば、さまざまなニーズがあるように思うのです。
特に個別指導に関しては、ここを分析することで明確なポジショニングができるのではないかと考えています。
色々な塾のサイトを見ていると「指導力」という言葉を見かけます。
僕は個別指導における「指導力」という言葉には懐疑的です。
というのも、基本的に個別指導というビジネスモデルがアルバイトで雇う大学生ありきのものであるのに、どのように「指導力」なるものを担保するのか、その仕組みが分からないからです。
指導力には「知識」と「教え方」の2つがあります。
そして、これらが商品としての価値を帯びるのは、教える側に顧客が手に入らないだけの「経験」があるときです。
たしかに、マニュアルを使えば一定の「教え方」はノウハウとして身につけさせることはできるかもしれません。
仮に家で保護者の方が教えるとしたら、教えたことのある経験はせいぜい兄弟分だけ。
ここにおいて、マニュアルで一定の教え方を学んで、複数人に指導したことのある大学生は、保護者さんと比較すれば指導力に関して価値があるということができます。
知識面に関しても、受験を経験したばかりの学生の方が、基本的には覚えている知識量も最新の入試傾向も知っているため保護者と比べればそこら辺の学生の方が多く、こちらも価値が担保できます。
というわけで、家で教えるよりはアルバイトの学生に教わった方が効果的ということになります。
次に、個別指導をする塾同士の差別化について考えてみます。
僕はアルバイトを採用するタイプの塾において、「教える」というこのに関する差別化要因は、突き詰めると「人数」と大学ブランドしかないと考えています。
アルバイトを主体とする以上、その経験値をウリにすることはできません。
アルバイトという雇用形態が性質上代替可能な人材を採用するものだからです。
指導人材の経験値で差別化することができないとなると、人材そのもののもつブランド力と指導力する人数で差別化するくらいしかできません。
前者の場合、採用するときに東大医学部に通う人しか雇わないみたいな形で行う差別化。
「ウチはアルバイトですが東大生しかいません」とか「国立大の大学院生だけを採用しています」とかだったら、たしかに大きな差別化要因になるでしょう。
立地的にそれが可能で、かつコネクションを持っている塾はこういう売り出し方はアリだと思います。
(ただし、少なくとも多教室展開をしている大手塾にはできませんが...)
あらゆる塾でできる戦略が、一度に教える人数で差別化するという部分です。
基本的に個別指導は1対1〜1対3くらいになっています。
当然同じ値段で1対1か1対3ならどちらを選ぶかと言われたら前者でしょう。
人数による差別化は1番行いやすいものなので、個別指導の塾の(教務における)戦略で最もポピュラーな部分になってきます。
教える部分での差別化がこれくらいしかできないとなると、基本的にはその周辺サービスで差別化をすることになります。
例えば授業の振り替えや補習、自習室の完備etc...
あとは1番分かりやすいところは授業料。
仮に学歴ブランドをウリにするような人材ではないアルバイトで1対3の指導形態をとる塾があったとして、そこの売り出しポイントは、指導部分に関しては「丁寧な指導」「熱心な指導」「一人一人にあったプラン」みたいな抽象的な表現になり(もちろん1対複数というところはできるだけ小さく書きます)、振り替え可能であることや、自習室があること、周辺教材、そして授業料のような部分を売り出すことになります。
大手の場合はこれに全教室を合わせた合格実績などでしょうか。
アルバイトを採用しての個別指導の場合、システム上「指導力」をウリにすることはできないのです。
実際に、指導力をウリにするところはありますが、その説明を読んでみると、例外なく抽象的な表現しか書かれていません。
こういう風に見ていくと、少なくとも僕には基本的に個別指導はどこの塾を選んだとしても本質的には同じであるように見えてしまいます。
僕の塾は何故か社員(僕も含めると4人)さんがエライ量の個別授業を行っていますが(笑)、普通の塾ではそんなことしません、というかできません。
そもそも基本的に100〜150人規模の教室であれば、社員さんは2人くらいが限度なので、経営面を考えたら不可能なのです。
では、こうした中で個別指導ではどうやって差別化をしていけばいいのか。
僕はこれに関して、指導面以外のニーズをいかに多くすくい上げることができるかという部分になってくると考えています。
つまり、専任講師による情報提供の部分です。
指導に関しては物理的に時間をとられるため不可能ですが、それ以外の情報提供の部分に関しては、社員による差別化が可能です。
たとえば、コンサルタント的な学習方法の指導であったり、生徒・保護者に対する入試情報や入試分析といった各種情報の提示です。
ここで重要になってくることは、前者も後者も独自コンテンツとして内製しているということです。
今はスマホが普及しているため、単なる数値データに関しては、調べれば誰でもアクセスできてしまいます。
したがって、特定の学校の情報そのものは価値になりません。
しっかりと自社で数値を踏まえた分析をして付加価値を帯びる、若しくは複数の学校の情報をまとめるといった、一般の人にとって面倒な仕事をこちらで代わりに行うといったかたちで付加価値をつけなければなりません。
コンサルタント的な方法で勉強の指導をするというのも同じです。
単に「もっと頑張れ」みたいな声をかけることなら、誰でもできます。
誰でもできることならば、当然そこに価値はない。
アドバイザー/コンサルといった側面を強調する以上、しっかりと理論に基づいたアドバイスのツールを自社で開発することが不可欠です。
提供する情報と、学習のアドバイスをするためのノウハウを自社でいかに充実させるか。
そして、社員が子供と保護者にいかに積極的にこういった観点から関わっているか。
ここが、個別指導を運営する側における、差別化においてもっとも重視すべきことだと思います。
なんて勢いで書いてしまったけれど、これ、どの層に需要のある文章なんだろう?(笑)