新・薄口コラム(@Nuts_aki)

こっちが本物(笑)アメブロでやっている薄口コラムから本格移行します。



中学生を悩ます「扇の的」のあらすじを10分で理解する。

中学二年生の定期テストで登場する平家物語の「扇の的」。

テスト勉強が大変だということを毎年耳にします。

扇の的がの勉強が難しく感じる最大の理由の一つは、あらすじをつかめていないという点にあります。

そこで、今回は1000字程度にあらすじをまとめてみました。

また今回のあらすじは国語に苦手意識を持っている人の苦手意識の解消を目的の一つにしています。

そこで、つまずきそうな熟語に関してはできるだけ読み仮名をふるようにしました。

少しでもテスト勉強の役に立ったら幸いです。

 

時は二月十八日の午後六時(酉の刻(とりのこく))頃で、その時ちょうど北風が激しく吹き、磯(いそ)に打ち寄せる波も高かった。
船は大きく揺(ゆ)れ動き、扇も串に定まらず、ひらひらと揺れている。
沖合には平家が船をずらりと並べて見物し、岸には源氏が馬を並べてこれを見ている。
どちらもみな、心から晴れやかに見物していた。

那須与一(なすのよいち)は目を閉じて、心の中で祈った。
「南無八幡大菩薩(なむはちまんだいぼさつ)さま、我が国の神様、日光の権現(ごんげん)、宇都宮、那須の湯泉大明神(ゆぜんだいみょうじん)、どうかあの扇の真ん中を射させてください。
もしこれを射損じるようなことがあれば、弓を切り折り、自害して、二度と人に顔向けすることはできません。
どうか、もう一度故郷に帰ることを叶(かな)えようとお考えならば、この矢を外れさせないでください。」

祈りを終え目を開くと、風が少しおさまり、扇も狙(ねら)いやすい状態になっていた。
与一は、かぶら矢を取って弓にかけ、ぐっと引きしぼり、「ひゅうっ」と放った。
与一は小柄(こがら)だったが、その弓は十二束(約90センチ)三伏(みつぶせ)(指三本分を重ねて12回分の長さ)もの長さに強く引き絞られ、浦中(うらじゅう)が響くほどの音を立てて飛び、見事に扇の要の際にぴったりと命中した。
かぶら矢は海に入ると、扇は空へ舞い上がり、しばらくは空中でひらひらと揺れたが、やがて春風に揉(も)まれ、海へさっと散っていった。

夕日が輝く中、紅(くれない)の扇が波間(なみま)に漂い、浮いたり沈んだり揺れている様子を、沖の平家は船べりを叩いて感じ入り、岸の源氏は矢筒を叩いてどよめいた。
あまりの美しさと感動に堪(た)えきれなかったのか、平家の舟の中から五十歳ほどの男が黒い革の鎧(よろい)をまとい、白柄(しらえ)の長刀(ながなた)を持ち、扇を掲(かか)げた場所に立って舞い始めた。

伊勢三郎義盛(いせのさぶろうよしもり)が与一の後ろに歩み寄り、
「お命じである、射よ」
と言ったので、与一は今度は中差(なかざし)(脇差の短い刀)を取り、矢を引き絞り、その男の首の骨を「ひゅうっ」と射抜いて、逆さまに船底へと突き倒した。
平家の方は静まり返り、源氏の方はまた矢筒を叩いてどよめいた。
「見事、射た!」という者もあれば、「情けない(容赦ない)」と言う者もいた。